悪夢の息遣い 01
虹色信仰編です。
少しシリアスが入り、説明文っぽくなっています。
その竜の名前は水晶竜。
特徴は頭部から尾にかけて生えている虹色の水晶とほんのりと光る虹色の光。
水晶竜の水晶を手にした者はどのような無茶な願いも叶えることが出来る、と言われている。
この手の話には逸話が多いが、残念なことに、この水晶竜に関しては真実なのだ。
森と共に住む竜族や獣人、精霊族は水晶竜に森の恵みや住みかを提供する代わりに、一欠けらの水晶を貰っていた。
持ちつ持たれつの関係であり、水晶竜から与えられる水晶が小さいことも相成って願い事といっても美味しい野菜が出来るようにだとか子供が幸せに暮らせるようになど、それらは些細なことに使われた。
この関係に難癖を付けたのが、森から離れて住んでいることもあり、水晶竜の恩恵を得ることが出来ない人族である。
そして80年前、人族は『虹色信仰』を立ち上げた。
虹色信仰とは結晶竜を人族の教主であるマリア・ルベ・エッセーラに捧げる事を誓った集団である。
***
マリア・ルベ・エッセーラとは当時この大陸を統べる人族の王の末娘であった。
その王――グランテ王には3人の娘がいた。
一番上の娘であるカテラは器量が良く、その喉から奏でられる歌声は天上の物であると国内までに留まらず国外にまで認められていた。
またそれだけでなく、周りの者を和ませる優しさをかね揃えた心優しい娘は、多くの若者を魅了した。
真ん中の娘の名はルベア。
彼女は一つ上の姉のよう女性としての才能に恵まれなかった、しかし武に秀でたその才能を活かし軍に所属しその才能を十分に発揮した。
また男児に恵まれない父親である王の手助けをし国を潤わし、多くの国民を生活を安定させ安心させた。
そんな中での第3子の懐妊発表。
そのビックニュースは国民のみならず、国外からも注目を集めた。
次はどのような御子が産まれるのか、と。
アリアが産まれた当時は、とても喜ばれた。
これからが楽しみだ、どの様な才能を持っているのか、と。
しかしアリアが5歳、10歳と歳を重ねど一向に力の欠片を見せない。
それだけでなく、彼女の容姿は両親と似ての似付かず、王家の中では平凡と言っても過言ではなった。
美しく聡明な姉たちは6歳でその才能を開花させたというのに、その妹は今年で12歳になる。
不穏な空気が王宮内に漂い始めた。
今となっては誰かは知れないが、その者が宴の席でポツリと零したのだ。
曰く、末姫は不義の子である、と。
王の知りえぬ所から噂の火が点いた、グランテ王が気づいた時にはもう遅く噂が真実であると皆を誤解させた。
その余波を真っ先に受けたのがアリアだった。
侍女からは嫌がらせをされ、騎士からは守る価値無しと見放された。
同じ立場であるはずの女王エルサは伴侶であるグランテ王の庇護下にいた為、被害は無い。
マリアは嘆いた。
何故自分がこのような酷い扱いを受けるのか。
子供は親を選べない、なのに自分の両親は救いの手を差し伸べないのか。
何故その救いは母親のみに向けられるのか。
姉たちは才能ないマリアを切り捨てた、もちろん噂も家臣たちの行いも放置した。
小さい時には優しくしてくれていた侍女たちが、今では軽蔑の眼差しを持ってマリアを見詰める。
騎士はマリアの存在を認めない。
これでは何の為に生きているのか分からなかった。
マリアは、才能溢れる姉たちを呪った。
マリアは、親の責任を果たさない両親を憎んだ。
マリアは、噂に踊らされる王宮内の者たちを蔑んだ。
マリアは、誰も助けてくれない、この救いの無い世界に絶望した。
そして、マリアはとうとう見つけた。
彼女の望みを叶えてくれる者を……その濁った瞳に移ったのは虹色に輝く美しい結晶竜の番。
「み~つけた」
にたり、と誰かが醜く笑った。
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