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Knights VS Undead  作者: 神崎
第一章 東京隔離
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七話闇の力

こんにちは。

いつも通りまったりとした更新でございまする。

今回は、前の話であまり説明されていなかった孤影の能力を明らかにさせますよ。

加えて、どれくらい強いのかもわかります。

さらに加えて、静理さんは出番がほとんどありません。

神崎瞬の隔離能力には、その力の強大さ故に欠点がいくつかある。まずもって、使用者の実力がこの能力の力を扱う上で、伴っているのかどうかだ。確かにこの能力は、聖騎士団(ガンナイツ)を代表しても問題はないくらいの、上位能力であるが、それはあくまで瞬の実力もあってからの、という意味なのだ。仮に、この能力をその辺にいる一般人が使うとして、果たして何かできるのであろうか。いや、出来ないであろう。そもそも、自分の頭の中でイメージした底面を引き伸ばしてから立方体にするなど、簡単にできることではない。それには相当な集中力、計算能力などが伴う必要がある。力の使い方をろくに知り得ていない人間が隔離能力を習得したところで、発動することは不可能なのだ。つまり、このこの事を簡潔にまとめるのであれば、ただの人間では、隔離するどころか、発動できない。という欠点となる。


もう一つ、この力を使いこなす上で、絶対に忘れてはいけない欠点がある。それは、使用者の精神と能力が直結しているということだ。これだけでは意味が分からないと思うので、説明しておく。前回の話を覚えているだろうか。影との戦闘が始まる前に、瞬が風が吹くことに対して隔離壁を建て、風、もとい影の動きを止めた。その際、影が壁に激突すると同時に、瞬が、痛ぁ!と声をあげていた事を。これは、影の衝突による隔離壁へのダメージが瞬にも伝わっている証拠である。この事から、瞬と隔離能力が直結している事が分かるのだ。


しかし、外界からの刺激も、内側からの刺激も一切受けない隔離壁にダメージが伝わる事は事象としておかしいと思わないだろうか。実は、これに関しては、聖騎士団(ガンナイツ)にいる天才科学者が一つの結論を述べている。

「神崎氏の隔離能力は、確かに内と外、どちらからの刺激も受けません。ですが、それはあくまで、隔離壁が知り得ている(・・・・・・・・・・)刺激の事を指しています。何が言いたいのかというと、ずばり隔離能力は、学習する能力(・・・・・・)と言い換えても過言ではないというわけです。」

つまり、どんな刺激も受けないのではなく、どんな刺激も「経験すれば」受けなくなるということだ。


「うぅぅぅぅぅあぁぁぁぁぁっ!!!!!」

瞬の絶叫が戦場に響く。背を向け、帰ろうとしていた孤影が、その声に驚き両耳を塞ぎ、不機嫌全開の表情になり、冷たい目で瞬に向き直る。

「……神崎、君?」

一言文句を言ってやろうとした。だが孤影の視線の先には、右腕から大量の血を流し、うずくまっている瞬の姿が映っていた。孤影は、少し焦った表情で、瞬の下へと駆け寄る。

「……どうしたの?」

孤影が側で顔を覗きこむ。すると瞬は、痛みに耐えながら、ある場所を左手で指差す。

「あ、あれ……隔離、壁……」

瞬にそう促され、孤影はゆっくりと立方体のあった場所を見やる。瞬が「圧縮」し、もとの大きさに戻したその立方体は、粉々に砕けて、消えて無くなっていた。しかし、驚くべきはそこではなかった。

「……これはどういうこと?」

孤影と瞬の視線の先、そこには、圧縮したはずの影が再び姿を現していた。しかも、先程と比べて姿が大きく変わっている。「圧縮」する前は、全体的に真っ黒な姿の人型だったが、今の姿は全く違う。まずもって、その全長が巨大になっている。四、五mほどの巨体となった影は、見下ろすようにして、二人の方向へと顔を向ける。そして、巨大化した右腕を、二人に向かって振り下ろす。

「や、やばいな……」

「……大丈夫。さっきよりも遅いから」

振り下ろされる直前に、孤影は黒い波動を瞬と自分の周りに出現させ、その中へと瞬と飛び込む。そして、数十m離れた位置に瞬時に移動し、攻撃を回避する。

「隊長っ!」

回避した先に、静理がいて、すぐさま二人の下へと駆け寄る。孤影は無表情のまま、抱きかかえていた瞬を静理に預け、未だにこちらの動きについてこれず周囲を見渡す影をじっと見据える。

「……静理。ここで神崎君を援護して」

静理は孤影の言葉に静かに頷き、動けない瞬を抱きかかえると、後ろに後退した。

「気をつけて下さい。姿が変わった以上は何をするかわかりません」

「……だいじょうぶ。あれは、遅いから。それに」

僅かに、こちらに横顔を向けた彼女は、静かに一言告げる。

「……あたしは今、怒っている」

静理は、彼女の黒い波動が、先程よりも大きくなって姿を現していることに気付く。しかも、言葉の途中には既に孤影をすっぽりと波動が包み込みんで、高速移動を始める。

「は、速い……流石、最速の能力と称される力の使い手……!」

一瞬で影の下へと舞い降りた孤影は、闇鎖を再び出現させる。

「……教えてあげる。あたしの力……」


闇の力。緒代孤影の使う、聖騎士団(ガンナイツ)実質第二位の能力。名前からわかるとおり、闇の力をベースとしたこの能力には、具体的な名前がない。それというのも、この力自体が意思次第でどんなものにでもなるからである。たとえば、闇鎖は、波動…もとい闇を空間に出現させ、その闇を鎖として具現化して、武器にしているのだ。これは黒槍でも同じである。黒槍もまた、闇を具現化させた武器だ。


ここまでは、この能力を使う上での、基礎的な事項だ。問題なのは、孤影の場合(・・・・・)のこの能力である。

「……砕いて、黒渦(くろうず)

突如、影の四方に黒い渦を模した闇が出現する。

「……星は、自らの重力に耐え切れなくなったその時、自分自身を砕き、塵となって消える……」

黒渦は、段々とその面積を増し、影を覆う。影は、黒渦が迫ると同時に激しく暴れまわり、黒渦から逃れようとする。その様子を見た孤影は、闇鎖を、出現した黒渦の中からさらに出現させ、完全に拘束する。だが、影の咆哮とともに、その鎖は腕力で断ち切られる。しかし、そうであっても孤影の表情は無表情のまま揺るがない。

「……そして生まれるの。飲み込む物はなんであろうと完全圧縮破壊する……ブラックホールが」

バキィッ!!という鈍い音が辺りに響いた。その音は、確かに戦場全体と響き渡る。鈍い音(・・・)が、響くのである。各々戦闘を繰り広げていた隊長格たちは、一斉に音の方向へと視線を向ける。

「……その渦からは逃れられない。一度捕まれば、あとは、砕け散るだけなの」

孤影の場合、その基礎事項に+αの力を伝える。闇の波動を自分の意識した場所に出現させたり、その中からさらに鎖を出現させて標的を拘束したりするなど、これは、孤影だからこそ出来る事なのだ。しかも、彼女は器用なことに、一度で二つの力を扱えるのだ。たとえば、今発動している闇鎖と黒渦は、黒渦の闇の中から闇鎖を出現させて、圧縮攻撃から逃れられないように拘束する力の使い方である。

「……あがけばあがくほど、己の身を削るだけ」

影が、咆哮を上げる。最大限の力を使って、黒渦に抗おうとしているのだ。孤影はそれを見ても、やはり表情を崩さない。

「……貫いて、黒槍」

再び、漆黒の槍を投擲する。やはりその姿勢は、腕を下から上に振り上げるだけの力の無い助走行為だ。それでも、その槍はひたすらに加速する。この原理だけは、孤影本人も分かっていないという。黒槍は、先程同様に、影の頭に直撃する。だが、直撃しただけで、貫通はしなかった。それを見た孤影が、ついに表情を不機嫌なものに変えた。

「……不快ね。貫けないなんて」

不機嫌たっぷりの言葉と共に、孤影は自身の左右に現れた闇の波動の中へと両腕を入れる。そして、その影から、今度は二丁の拳銃(ハンドガン)を具現化させる。

「……撃ち抜いて、黒銃(こくじゅう)

黒い銃から、放たれたのは、やはり黒い衝撃波である。ちなみに、なぜ銃弾ではないのかというと、それは、銃自体が具現化させてできたものであるからだ。実弾まで具現化させるのには、相当なコストがかかるし、加えて、実弾だとそこまでの威力がない。だから敢えて、彼女は闇の衝撃波を放っているのだ。


未だに黒渦から逃れられずに足掻く影はもろに闇の衝撃波を受け、大きく仰け反る。巨体になってから、明らかに影の動きは遅くなっている。その事に気付いた孤影は、休ませる暇もなく攻撃を加えるのだ。こうすることで、体勢を立て直させずに、こちらが一方的に攻撃するという戦法である。

「……最後。刈り取れ、黒鎌(くろかま)

彼女が一言告げると、両手に構えていた黒銃は闇へと消える。そして、孤影の頭上に闇が出現したかと思うと、すぐに漆黒の鎌が具現化する。孤影はそれを右手にゆっくりと握ると、消えた(・・・)

いや、消えてはいない。だが、彼女は、今までと比にならないくらいの想像を絶する速度で、影の真正面へと移動していたのだ。影は、一瞬遅れて孤影の姿を確認すると、ガパァ、と大きく口を開く。

「……なに?」

瞬間、その口からレーザーのような光線が放たれた。当然、孤影は目の前にいるので、光線を直接喰らうことになる。光線が消えると、そこに孤影の姿はない。まさか、あの光線を喰らったのではないだろうか。離れて見ていた静理が焦りの表情で、孤影を探す。

「孤影副隊長!?」

だが、孤影の姿は目に入らない。それどころか、今まで影の動きを封じていた黒渦が、音も無く消えうせたのである。静理は救援に行くために、立ち上がろうとするが、それを、瞬が制した。

「ま、待った。静理さん……!」

「止めないで下さい!隊長」

なお行こうとする静理を瞬はあまり力の入っていない状態ではあるが、静理を強引に引き戻す。

「落ち着いてよ……孤影が、あのくらいでやられるわけない」

「ですが……!このまま影を野放しにするわけには!」

瞬の手を振り払おうとする静理。どう見ても冷静ではない。

「大丈夫だって。ほら」

瞬もふらふらと立ち上がりながら、影のいる場所を促す。静理もゆっくりと視線を這わせるが、案の定、影は自分の体を大いに振るい、暴れまわっている。

「ほら、じゃありません。私が行きます」

「だから別に行かなくてもいいよ。よく見て、あの動き」

え、と一声漏らした静理。よくみると、影の動きは暴れているにしては、少しぎこちない。

「孤影の事だから、様子見したんだろうな」

瞬がそう言った。静理は言葉の真意を図りかねる感じの表情で、もう一度影をよく見る。その時であった。


ウォォォォォォォォォォッ!!!


何度目か分からない咆哮を影が発する。それは、今までのものと少し違う咆哮だ。先程までの、獲物を狙うハンターの如き咆哮ではなく、まるで、断末魔にも似た咆哮だ。

「……どうだった?闇に堕ちる前の、最後の時間。楽しかった?」

突如、聞き覚えのある声が静かに響いた。そしてその声の主はやはり静かに、影の真後ろに現れる。もちろん漆黒の鎌を所持した状態でだ。影は、ゆっくりと後ろを向き、そして、再び巨大な腕を振り下ろす。

「……さよなら」

孤影の言葉と同時に、影の体が綺麗に半分にぱっくりと分かれた。振り下ろされるはずの腕も、一筋の切れ込みが入ったかと思うと、その切れ込みを境に、ゆっくりと切り刻まれる。やがて、巨体はいくつもの肉塊と化し、崩れ落ちた。

「……虚ろなる狂乱は、戦地に一切の血も流さず幕を引く。それ即ち、幻想黙示録」

完全に、勝負がついた。この言葉は、恐らく、終わりを告げる言葉なのだ。現に、影は最早ただの肉塊であって、先程までの脅威そのものが、今は消え去っているのだ。その後、崩れ落ちた肉塊までも、塵となって消えていく。つまり、完全に、影が消えてしまったということである。

「ほら、大丈夫だったでしょ?」

「な……こ、これが……」

一瞬で片付いた戦闘を垣間見て、静理は呆然とする。実は、静理が副隊長を務めてきたこの数年間、ろくに孤影の戦闘を見たことは無かったのだ。それが、まさかこれほどまでだとは、驚きを隠せないのが当然だろう。

「……神崎君。終わった」

孤影は無表情で静かにこちらに来ると、大きく溜め息を吐いた。そしてまた、不機嫌全開にこう言う。

「……少し、喋りすぎたかも」

瞬は、それを聞いて、呆れたように笑う。そして、そのまま地面に腰をつく。どうやらもう立つのが限界らしい。静理は、はっとなって瞬を再び抱きかかえる。無理しすぎです、と一言添えた静理は、苦笑する。どうやら、これでこの影との戦闘は完全に終わったという事だ。

(本当に……無理しすぎだ。この大馬鹿者が)

静理がこの時、とても慈愛に満ちた表情であった事は言うまでも無いだろう。


今回の作戦は、緊急事態に見舞われたとはいえ、犠牲者は一人も出さず、無事成功となった。緊急事態となったおおよその原因は、突如現われた未確認の敵の襲撃であった。細波の識別透視に感知されず、また、今までの不死体(アンデッド)とは何か違う戦闘力を持ち合わせていたこと。加えて、隔離圧縮を受けた後、新たな形態となって隔離圧縮を破ったこと。対象を的確に狙うという、知能を持っていたこと。いずれも、過去に発見された不死体(アンデッド)のデータに適合しない、未知のデータである。細波の識別透視に感知されなかったことと、瞬の隔離を破ったことから、この「影」は、新たなタイプの不死体(アンデッド)であると、断定する事が出来る。聖騎士団(ガンナイツ)に属する科学者は、この戦闘の終了後、全団員のアリスにその通知を行なった。その結果、聖騎士団(ガンナイツ)は今現在緊迫した状況に陥っている。しかし城下(アンダー)に住んでいる者にはその通知を一切せず、名目として、不死体(アンデッド)駆逐作戦成功として、そのまま終わりを告げる。果たして、これは正しいことなのか、騎士団員の中には、そういった疑問を持つ者も現れた。しかし、そんな事を気にかける暇もなく、作戦終了後すぐに、御剣から自宅への帰宅命令が出された。実際、最後の戦闘に加わっていたのは隊長格クラスの団員だけであったため、それぞれの隊長格の者達は、戦闘での疲れをいち早く治そうと、帰宅した。瞬は、救護部隊の施設にて、異能力による治療を受け、それが済むと、すぐに帰宅し床に入った。


翌日、六月十八日昼過ぎ、全部隊の隊長格にアリスのメール機能を通じて、御剣から連絡が入った。用件は、昨日の作戦に関する隊長格会議の実施についてである。昨日の新たな不死体(アンデッド)の事が、会議の中心になるらしい。開始時刻は午後七時。開始までは時間があるため、隊長格の人間達は各々自分の時間を過ごすだろう。もちろん、昨夜大怪我を負った神崎瞬も例外ではない。会議はいつも、シリアスな空気になる。だから、団員達はそれまでの間に少しだけ気休めを入れるのだ。たとえば、聖騎士団(ガンナイツ)内気休めクイズ大会を開いたりして。









虚ろなる狂乱は、一切の血も流さず幕を引く。それ即ち、幻想黙示録

中二くさい台詞を、孤影が言いました。あと、ちょっと意味深ですよね?

実はこの言葉、物語の途中で鍵を握るものになりますから、覚えておいてくださいね。

さて、謝辞を。

皆さん、今回も読了していただき本当にありがとうございます。僕の文章の書き方の問題で、皆さんにいろいろと疑問を持たせてしまったかもしれません。本当にすいません。出来る限りで質問に答えますので、何か疑問が生じた場合、直接僕のほうに言ってください。それでは失礼します。

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