四話消失の輝き
久々に更新です!!
おまたせしました!!
今回は分割配置Cブロック、Dブロックの戦闘を中心にした物語となっております。新能力も登場です!
東京二十三区の内、三区をその領地としている聖騎士団には、騎士団が普段生活している騎士領と、それ以外の戦闘に参加しない人間(主に老人など)が生活する、城下と呼ばれる、云わば普通の街が存在している。その城下内では、外界で起きている絶望的な現状を忘れる程活気に溢れた光景が広がっている。何がどう活気に溢れているかと言うと、簡単に言えば、今この小説を読んでいるあなたの世界の東京と同じくらいの活気だ。ただし、人は圧倒的に少ないが。
騎士団員の中にも、寮生活を選択していない者は、城下から学校や部隊に通っていたりする。瞬は、プロローグの通り寮生活だが、副隊長の静里は、普段城下から聖騎士団騎士領へと通っている。しかし最近は不死体の増加に伴い、聖騎士団内での時間が増えた為、城下にある実家にはあまり帰宅できていない。
~分割配置Cブロック~
この場所では、特攻部隊副隊長の藍河静理と、狙撃部隊副隊長如月弥生を軸に戦闘が繰り広げられていた。
「如月!私の攻撃範囲外の不死体を狙え!」
静理は左手に装備した銃で、自分付近の不死体を撃ち抜き、さらに右手の刀で切り裂く。
「はいはーい!!まっかせてくださーーい!」
そして、その静理の言葉に勢いよく反応したのは、最初の通り、静理とともにCブロックの前線で闘っていた、狙撃部隊副隊長の如月弥生。身長152cm体重43㎏、5月5日生まれ14歳。幼さの残る外見とは裏腹なほどの実力を持って副隊長に上り詰めた、緒代と神崎に並ぶ天才少女。性格はとてつもなく活発で、隊長の緒代とは全く正反対である。彼女の武器は、彼女の異能力なので、基本武器は特に指定されていない。そんな彼女の異能力は、射抜いた者を確実に殺す無限の雨の如き矢。つまり、
確殺雨天。そう呼ばれている。この能力は、発動と同時に虚空から長弓を出現させ、使用者の今現在の実力と比例した力の最大限を限界として、光の矢を生成し、それを放つ。体に刺さった場合もしくは体を貫いた場合、その光の矢の源となっている使用者の力が体中を巡り、光は一瞬にして爆発を起こす。その結果、体が内部爆発を起こし、確実に死ぬのだ。
「いっきますよー!!!確殺雨天!!」
そして、確殺雨天は放たれ、静理の攻撃範囲から少し離れた位置にいる不死体を射抜く。説明の通り、射抜かれた不死体は光の力で爆発し、大量の腐った血液を吹き出して跡形もなく消えた。ちなみに、一体の不死体の爆発による風圧で、そのすぐ近くにいた他の不死体も吹き飛ばされている。
「よし。流石だな。だが、これだけではまだ奴らを抑えきれないぞ!」
「わかってまーす!!次はもっと凄いのやっちゃいますよー!!」
静理の言葉を聞き、再び確殺雨天を構える如月。しかし、今度は直接対象に矢を向けるのではなく、上空へと矢を構える。そして、弦を思いっきり張ると上空へと矢を放った。その矢は、見えなくなるほど高くまで上がっていった。
「降りしきれ!確殺雨天・豪雨!!」
如月の言葉と同時、上空から大量の光の矢が降り注いできた。その矢は広範囲に降り注ぎ、先程よりもより多くの不死体を射抜き、爆発させた。
「これは……」
みるみるうちに静理の周りの不死体は全滅した。その光景に、静理は呆然としているだけである。
「一瞬で……あの量をやったのか……」
高台で狙撃を行っていた如月は周囲を確認して、不死体がいないのを確認すると、静理の下へと勢い良く降りようとする。
「どんなもんですかー!私にかかればこんなのちょちょいのちょってわ~~!?」
だが、勢いよすぎて高台から降りる前に躓く。高台の高さは10m程あるので、落ちたら確実に怪我をするであろう。
「如月!?」
静理も、反応が遅れた。そのため、如月の落下を防ぐのには無理がある。
「わわわわわわー!?」
如月が地面に落ちる直前に、影が走った。その影は如月をしっかりと抱きかかえると、そのまま立たせる。
「……全く。気を抜きすぎだ」
「ふえー……ありがとうございまって、隊長!!」
そう。影の正体は、Bブロックでの戦闘を終えてCブロックへと援護に来た緒代であった。如月は彼の姿を確認するやいなや、勢い良くその胸へと飛びついた。
「会いたかったでぇぇぇすぅぅぅ!!!!」
「……何っ!?」
大きく後ろへと倒された緒代の上にまたがる形となった如月は問答無用に緒代の服に体を擦り付ける。
「う~んこの感じさいこーですぅ」
「……離れろ!この大馬鹿女!!」
「きゃっ♪」
容赦のない如月の攻撃をなんとか払い除けた緒代は怒りに満ちた表情で如月を睨みつける。一方如月はなんとも思ってないかのように、てへっ、と笑顔を向ける。と、そこで、2人のやりとりを黙って見ていた
静理が緒代に話しかけた。
「緒代隊長。Bブロックは終わったのですか?」
緒代は、ああ、と言いながら服の汚れ払い落とし、静理に向き直る。
「……神崎が周辺の不死体を全滅させた。そのため、僕達は他のブロックへと救援に向かう事となった」
「それで、神崎隊長はどこに?」
近くを見渡すが、瞬の姿はどこにもない。きっと、ここではないどこかの救援に向かっているのだろう。
「……奴は、Dブロックの救援に向かった」
「そうですか……」
そう言って暗い空を見上げる静理。その顔は、どこか寂しそうで、それに加えとても悲しそうであった。
(また……共に闘えないのか……)
~分割配置Dブロック~
ここでは、爆撃部隊のみが展開しており、他の部隊は出撃していない。ここを仕切っているのは、郷田甚助。
「おうおうおう!こんの程度で俺等を止められると思ってたんかぁ!!」
郷田甚助、身長192cm体重100kg、8月29日生まれ41歳。巨漢の大男。そのごつすぎる体格とコワモテすぎる顔は、初対面の人が見たらビビッて逃げ出しちゃうかもしれないぜって感じの爆撃部隊隊長。だが実は優しい心を持った優しいおじさんである。極度の酒好きで、自分の仕事が無い日は必ずと言っていいほど酒を飲んでいる。しかも、唐突に親父ギャグを言ったりして、場の雰囲気を悪くさせたりする。そんな彼の姿は、まるで皆の親父的な存在なので、団員からはおやっさんと呼ばれている。
周囲で大爆発が起き、不死体の群れはどんどんと吹き飛ばされる。そんな中、一人の爆撃部隊の団員がおやっさんの下へと、風で吹き飛ばされないように気を付けながら近寄ってきた。
「隊長!!!大変な事が起きましたーー!!」
大声で叫びながら、おやっさんを呼ぶ。おやっさんはその大声に、同じく大声で反応する。
「なんだなんだ!!俺は今忙しいんじゃぞ!!」
「そ、それが!!次々と団員がやられています!!!」
ピタっと、おやっさんは静止した。そして、それと同時に爆発は収まり、急に辺りは静かになる。
「なん……じゃって?」
おやっさんは、ゆっくりと辺りを見回す。すると、団員の言った通り、爆撃部隊の団員が体を引きずりながら後方へと退却している様が窺える。
「なぜ……なんじゃ?」
「そ、それが……団員は不死体にやられているのではなく、その……隊長の力にやられているんです……」
………………
しばらくの沈黙。しっかりと目を合わせた二人には、微妙な空気が流れる。
「…………のわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」
不意に、おやっさんが叫び声を上げた。その声に、その場にいた団員は腰を抜かし、驚く。
「しまったぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
爆撃地帯。
おやっさんの使う異能力で、聖騎士団上位能力に分類される程の力のある能力。能力の概要は、爆発を中心とした間接的だが物理的なものであって、その発動は使用者の意識による。その意識のイメージの方法は、瞬の隔離能力と似たもので、爆発を起こす爆破地点を決定し、その後爆発の威力を設定する。この時、爆発時の爆風は設定した爆発の威力と比例し、威力を強大にすればするほど、その爆風は強力になる。
で、おやっさんはこの爆撃地帯を発動する時常に、その威力を最大値にしているため、周囲への爆風の強さは半端ではない。これによって、爆撃地帯の発動する地点の付近にいる団員は、その爆風によって吹き飛ばされ、大怪我を負っている訳だ。
「もういい!!!!お前等全員退けぇっ!!」
おやっさんは大声を上げ、団員への撤退を命令した。それを聞いた団員は戦況を改めて確認し、このままではどうなるか伝える。
「隊長。このままでは不死体による攻撃が増し、防戦一方となってしまうかもしれません!」
「わかっとる。兵を退かせた理由は別じゃ……そうじゃろ!青二才!!」
おやっさんが声をあげて後方を振り返る。その視線の先にいたのは……
「さっすがおやっさん。俺がここに来るのを分かってて撤退させたわけかー」
Bブロックでの戦闘を足早に済ませ、Dブロックへ救援にやってきた、神崎瞬であった。瞬はおやっさんの下へと駆けて来ると、不死体を一瞥し、呆れ顔でおやっさんに向き直る。おやっさんは瞬のその顔を見て不機嫌そうになる。
「なんじゃ……?」
「なんじゃ、じゃないよ!おやっさんまた加減無しで爆撃地帯を発動しただろ!?」
瞬はもの凄い剣幕でおやっさんに詰め寄る。おやっさんは巨漢を一歩退かせ、驚いた顔をする。だが、すぐに対抗する。
「仕方ないじゃろ!!計算が面倒くさいんじゃから!」
対抗にもならない言葉であった。
「とにかく。おやっさん、俺と連携して不死体の殲滅をするよ。で、他の団員は全部救護部隊のいるEブロックに移動して、怪我の治療を迅速に行うように!」
はい!と、前線から帰ってきた爆撃部隊員は返事をする。そしてすぐに救護部隊の展開しているEブロックへと移動を開始した。このブロックは、やけに怪我人が多い気がする。
「ふう……それじゃおやっさん、これで好き放題爆発させる事が出来るけど、久々にやっちゃう?」
瞬がいたずらっぽく笑みを浮かべると、同じくおやっさんも少年のような笑みを見せ、当たり前じゃ、と反応した。
「それじゃ、始めるよ!!」
そこからの二人の行動は迅速である。まずは瞬が地を駆け出し、不死体勢力の数を目視する。なんだかんだ言って、おやっさんの爆撃地帯は不死体の数を的確に減らしており、その数は少ない。
「目視だけでざっと二十体程度か……うし!おやっさん!!」
瞬の呼びかけにおやっさんは勢い良く反応する。
「おおう!!」
瞬は不死体の群れを隔離壁をイメージしているその中心に追いやる。ここまでは、Bブロックでも行った隔離圧縮と同じだ。違うのはその次のステップからである。瞬はできるだけ範囲を小さくした隔離壁を「蓋」で閉じるが、圧縮はしない。なぜなら、そこからはおやっさんの出番であるからだ。
「次、いいよ!!」
「よおおしいくぞぉ!!」
おやっさんは爆撃地帯を発動し、その爆破地点を隔離壁のある位置に設定する。もちろん、威力は最大にしてある。隔離能力で造られた「箱」は、外界からの刺激を一切受け付けない。それは承知の話であるかもしれないが、今回は外界からの刺激ではないため、「箱」が内部爆発に耐えられるのかと言われると……
『隔離爆発っ!!!!』
息の合った、二人の声が発せられた。そしてその瞬間、鈍い音が辺りに弱く響いた。その音の源は、どうやら、瞬の隔離壁の中からのようだ。だが、隔離壁には変わった様子が無い。
「外界からの刺激を一切受け付けない隔離壁が内部からの刺激を受け付けないわけ無いよ。もしもそれでこの隔離壁が崩されるんだったら、何の為に隔離してるか分からなくなるよな」
つまり、隔離壁と言うのは、外界からも内部からも一切の刺激を受けず、一度発動されれば使用者が能力の中止もしくは破壊を意思しない限り消えたりしない、そう言う事だ。
「これで終わりじゃな。良く付いてこれたのう青二才!」
おやっさんは大きい手のひらで瞬の背中を叩く。
「痛い!あと、青二才、って呼ぶの止めてよ」
瞬はおやっさんの手を払いながら、自分の呼ばれ方の不満を言った。だが、おやっさんはそんな事を気にも留めずに大股でずかずかと歩いていく。なにやらご機嫌だ。
「はっはっは!!まぁ気にするな若人。さっさと帰って酒飲むぞ~」
「ちょっ……待ってよ!おやっさん!!」
瞬は慌てておやっさんの背中を追う。その姿は、まるで親子のようであった。
~分割配置Aブロック~
御剣の発動した能力、消失の輝きは、現時点での聖騎士団の異能力中最強と称されるほどの力を持っている。なぜなら、それはこの消失の輝きの能力が圧倒的すぎるからだ。その概要は、使用者の意思による光の力の発動を主としている。指先に意識を集中させる事で、光を放つ。光は、不死体を一瞬で滅するものである。どう言う原理でその光が不死体を滅するのかは明白になっていないが、発動すれば、必ず不死体を倒す事の出来る能力である。だが、これには大きな負荷が伴うため、普通の人間ではいとも簡単に体が崩壊すると言われている。しかし、御剣ほどの力を持つ人間は体に特に異常が無い状態であれば、消失の輝きを好きなタイミングで好きなだけ使う事が出来る。先程御剣が発動した消失の輝きは広範囲に光を及ぼす力の大きさで、いくら総隊長の御剣と言えどかなりの負荷が体にかかっている。
「はぁはぁ……流石に影響範囲を大きくしすぎましたかね……ですが、これでAブロックは大方片付いたはずです。後は他のブロックの皆さんですが……」
『総隊長。他のブロックの戦闘は終わりました。各自、騎士領へと帰還しています』
突如、胸元のポケットに入っているアリスから細波の連絡が来た。どうやらこちらの動きは監視部隊によって見られているらしく、戦闘が終わったのも既に確認されているようだった。
「そうでしたか……それでは総合部隊も帰還します」
『了解しました。それでは、怪我人がいた場合の処置を行うので、一度Eブロックに寄ってから騎士領へと……え?あれ……』
御剣の帰還を確認しようとした細波が言葉に詰まる。
「どうかしたのですか?」
『総隊長!その付近にはもう不死体の姿は確認されませんよね!?』
御剣が細波に様子を窺うと、細波が慌てた様子で質問してきた。言われた通り、周囲を見渡す。だが、今御剣の周りにいるのは、戦闘を終えて帰還準備をしている総合部隊員だけだ。
「はい。周囲には不死体らしき影はありませんが……」
『おかしいわね……私の識別透視が狂ってるだけかしら……あ!失礼しました。実はその付近に黒い影が見えて、それで確認してもらったのですが、問題が無いようなら構いません。ただし、帰還時は注意してください』
「わかりました。それでは、帰還次第再度連絡を入れるので、騎士領正門で待機していて下さい」
通話を終えた御剣は団員に帰還指示を出し、それを承諾した団員達は各々騎士領に向けて歩を進め始めた。
「黒い影、ですか……」
何か胸騒ぎがする。団員達を早めに安全地帯に移動させた方がいいかもしれない。帰還後は隊長格会議を開いて次なる作戦への話し合いが必要になる。だったらこれ以上時間を費やすのは得策ではない。
「妙ですね……やけに静か過ぎる……」
御剣が暗闇に包まれた空を見上げ、そう言った。
やけに、血の臭いがする。
「隊長少しいいでしょうか?」
御剣が空を見上げたまま立っていると、団員が話しかけてきた。
「ええ、構いませんよ。どうしました?」
「はい。どうやら体調の悪い団員がいるようでして……様子を見て貰いたいのです」
「分かりました。その人はどこに?」
「はい。あちらに座らせています」
団員の言った通り、少し離れた所に座り込んでいる人物がいた。頭を抱えるようにたいそう座りをしている。少し足早に駆け寄った御剣は屈みこみ、様子を見る。
「大丈夫ですか?」
「うぅ……」
呻き声を上げる団員に、御剣は優しく肩を貸し、立たせる。
「今から帰還しますよ。もう少しなので頑張って」「うぅぅあぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!!!」
団員が奇声を上げて御剣に襲い掛かった。
『隔離爆発!!』
サブタイトルにはなれませんでしたー
何せ御剣先生の能力の方が優先順位が上だから(笑)
さて、今回も読んでいただきありがとうございました!
戦闘シーンが中二病すぎて・・・・・・
うわわわ
じ、次回もお楽しみにーー!!