三話隔離圧縮
こんにちこんばんおはようございます。
今回はー
御剣先生のバトルシーンや、瞬と緒代の共闘シーンがありますよー
乞うご期待!!
不死体には、大きく分けて三種類のタイプがある。
一つ目は、楽死剤を打ち込んだ事により不死体化した、元々が人間である不死体で、ヒューマタイプと呼ばれている。とはいえ、このタイプの不死体は、日本の壊滅から約何十年も経過している為、その数は少ない。
次に、楽死剤を打ち込んだ不死体により喰らわれ、その傷口から不死体細胞が入り込み、楽死剤をうっていないにも関わらず不死体化し、発生したクローンタイプ。このタイプは今なおその数を増やしており、聖騎士団の団員も、過去数年でかなりの量の犠牲者を出した。
そして最後に、楽死剤をうったわけでも、喰らわれたわけでもなく突如として発生した不死体。その呼称をオリジナルタイプという。このオリジナルタイプの不死体は、十年程前に突如発生し、クローンタイプの三倍近くのスピードでその数を増した、謎の不死体である。現在日本にいる目視確認できる総不死体の約八割を占める数で、聖騎士団が全力を尽くしても、その数は増え続ける一方である。
以上が、現在分類されている不死体タイプであるが、あくまでこれは、資料に書かれていた言葉を説明しただけであるので、実際にはもっとたくさんの種類の不死体がいるかもしれない。
聖騎士団は東京二十三区の内の約三区分をその領土としており、それ以外の地域は全て不死体の住処と化している。今回発令された不死体の殲滅指令はその広大な敷地を守るために、A~Eブロックに団員を分割配置して行われている。
細波誓歌。身長167cm体重49kg、4月29日生まれ21歳。聖騎士団の学校を卒業したのち、自分自身の異能力により監視部隊隊長に抜擢された女性。同い年の静里とは仲がよく、一緒にいることも多い。ただし、グラマーなわけではない。むしろ、胸は絶壁に近い感じである。あえて、誰もその話には触れないが。彼女が隊長として抜擢された理由である、自身の異能力。その名を、識別透視。
この力は、不死体のタイプを見極める力を所持している。一見すると、識別できるから何だ、という話になるのだが、実はこの識別がもの凄く希望を秘めたものであるのだ。それというのも、元々人間であったヒューマタイプとクローンタイプの不死体には、ある一定の条件を満たせば、再び普通の人間として蘇生させることが可能かも知れないという可能性が発見されているからだ。つまり、不死体だからと、むやみやたらと殺す(もう死んでいるから殺すわけではないが)という事は、純粋な殺人と変わらないのだ。
それを考えると、聖騎士団側としても、多少の抵抗がある。そこで、この識別透視は力を発揮する。
識別透視には、物体の性質やその作りを原子レベルまで透かして見ることができる力がある。例えば、ロシアンルーレットで用意されたシュークリーム十五個の内、十四個が激辛からし入りだったとして、一つしか普通の物が無い場合、識別透視すると、その十五個のシュークリームをそれぞれ原子レベルまで透視する。その事によって透視されたシュークリームの中身がからしかカスタードクリームかを見分ける事ができ、一つもからしに当たる事もなく、一回目で正解を引くことが出来るのだ。このやり方を、不死体にも活用すると、識別透視により原子レベルまで分解、透視された不死体の体の内部を確認する事が出来る。そうした時、オリジナルタイプの不死体の体内には、体を作るための細胞が確認されないのだ。だがしかし、ヒューマタイプとクローンタイプは識別透視した際、ほんのわずかだが、脳内に細胞が確認される事がある。例え、それが死滅して機能していない細胞だったとしても、それでも確かに、その不死体が元々人間であったということを示す証拠となる。この事から、聖騎士団では、識別透視され細胞の確認がされた不死体を殺さないでそのまま放置しておく、という発想が成された。それには、当然リスクもかかる。まず持って、その不死体を放置していれば襲われる危険性は上がる。
なので、その発想に反対する者もいる。次に、蘇生する可能性の低さだ。聖騎士団の科学者は確かに、可能性があると言ってはいたが、その可能性が高いのかと言われるとそうでもないのだ。
その話自身に確証が無い訳であるので、やはりこれにも反対者がでてくるのである。そのため、団員の中には、不死体のタイプを気にする事なく攻撃する者もいる。
~分割配置Aブロック~
聖騎士団の目の前を戦闘領域とした、総合部隊のみが配置されている地点では、御剣が総合部隊を率いて、不死体を駆逐していた。
「細波さん。この地点の不死体のタイプは全てオリジナルでしょうか?」
胸元のポケットに入っているアリスを使い、細波へと確認作業を取る。するとすぐに、細波は応える。
『はい。問題ありません。Aブロックに確認されている不死体は全てオリジナルタイプです』
ありがとうございます、と一言言ってから、御剣は帯刀されている愛刀・白雪を抜刀する。
「行きます……」
その小さな一言を呟いた瞬間に、御剣は無数にいる不死体の中へと駆け出した。人智を超えたスピードで大地を駆け、そして縦横無尽に不死体の軍勢を斬り倒す。予測不能の動きで襲いかかって来る不死体の攻撃をひらり、とかわすと、側面から的確に急所を狙った斬撃を入れる。不死体がその場に倒れる頃には、次の不死体に標的を変え、斬撃。
「はぁっ!!」
さらに、その御剣に続くように総合部隊の団員は不死体へと攻撃を仕掛ける。流石にランクA以上の団員が集まって出来た部隊なので、個々の戦闘能力が高く、次々不死体を殲滅させていく。
が、それで不死体が減る様子はない。それどころか数を増し、無限に現れ襲い掛かる。
「減る様子は皆無、ですか……ならば、私の力を使うしかありませんね」
御剣は目の前にいる大量の不死体を一瞥し、白雪を構え直す。切っ先を天に掲げ、静かに。とても静かに、一言。
「消失の輝き……」
そう告げた。
~分割配置Bブロック~
Aブロックから少し離れた地点で、瞬と緒代を先頭に特攻部隊の一部と狙撃部隊の一部を少数人数構成して不死体を殲滅している。
「細波!この地点の奴らのタイプは?」
御剣同様、神崎は細波へと確認作業を取る。
『ここも同じ。オリジナルタイプしかいないわ。』
「了解!サンキュー細波!」
『べ、別に!礼を言われるほどじゃないわ!』
細波はそう言ってすぐに、通信を終了した。瞬はやれやれ、と息を吐きながらガンホルダーから銃を抜き放つ。
「特攻部隊!!ただいまから、不死体の殲滅を開始する!狙撃部隊と連携を取り、的確に対象を殲滅しろ!!」
瞬の一言で、攻撃が開始された。瞬は二挺拳銃を不死体に構え、銃口から、数発の弾丸を射出する。その弾は確実に不死体の頭を撃ち抜き、一撃死させる。だが、瞬は撃ち抜いた不死体に急接近し、さらに数発の弾丸を撃ち込む。こうする事で、確実に不死体を倒す事が出来るのだ。
最初の一体を確殺した瞬は次に、数体の不死体の中へ飛び込む。まるで、円陣を組んでいるかの如く佇む不死体達に、一切の恐怖も抱かず。
「確かに、この数を相手にするってのも、中々に体力を削りますなー」
平坦な声で、そう言った瞬。そして、その言葉の終わりと同時に、不死体が襲い掛かる。彼は、不死体が体に触れる直前に、跳躍し、翻りながら、同時に宙から銃弾を放つ。そこから、逆さになった状態で足元(足元と言っても頭と足が逆さになっているため足元と言っていいのかは分からない)に底面を作り出し、それを思い切り蹴り、再び地に足を着き、不死体数体の円陣の中心に入り、かなり重心を落とした状態から回転しながら、撃ち抜く。この間、わずかに二秒ほどである。そして、不死体達は音もなく一瞬でその場に崩れ落ちた。
「ふぅ」
一つ息を吐いてから、瞬は次の行動へ移行する。そんな瞬を流し見ながら、緒代は武器を構える。
「……浅はかだな。この程度、なんともないだろう」
緒代は、実践の時とは全く違う装いでいる。確かにスネイクショットを装備しているのだが、装備しているのは、一つではない。四つだ。しかも、その一つ一つにそれぞれ二つの銃口があり、合計八方向に射出出来るようになっている。さらに言うと、身に付けている聖騎士団の制服には所々シルバーのプレートが取り付けられていて、見る限り重装備である。
「……とは言え、数は減ったみたいだな」
緒代は、スネイクショットを不死体に構える。
「……撃ち抜く」
確定射撃が発動され、緒代の右目が紅く輝く。射撃された銃弾は不死体に向かって一直線に飛んで行き、被弾する。と、それと同時に、拡散した。突然の拡散に不意を突かれた不死体は後方に吹き飛ばされる。
「……ふん」
実は、緒代が撃った弾は拡散弾で、被弾と共に弾が炸裂する作りになっていて、その拡散方向は四方向である。つまり、スネイクショットの元々の八方向への射出に加え、被弾後の四方向の拡散が追加されるので、総合計三十二発の弾を一回で射出来るのだ。通常ならば、それぞれの弾の飛距離威力反動弾道強度その他全ての計算を考えなければいけないので、かなりの負荷がかかるが、緒代の異能力である確定射撃であれば、その程度、容易く調整できるのだ。
「……意思も無く動く云わば機械人形のような貴様ら不死体が、僕の確定射撃の前に立ち塞がるなど、実に浅はかだな」
緒代は銃を構え直すと、再びその銃口を不死体の軍勢へと向けるのであった……
一方瞬は、先程から止まる事の無い銃撃の矢を不死体に浴びせ、次々に不死体の数を減らしていた。
「きりがないよなーこれ。もうまとめて殲滅してもいいよな」
増え続ける不死体に、瞬は苛立ちを覚えてきたので、そろそろ本気を出す事にした。
「その前に……こいつらを集めないとな」
瞬は、胸元のアリスを取り出し、細波へと連絡を入れる。
『もしもしこちら細波だけど、何かしら?瞬』
通話に応じた細波はこんな状況であるというのに至って冷静に通話に出た。
「今からBブロックの特攻部隊に指示を出して欲しいんだ。時間がないから要点だけ言うけど。不死体の軍勢を指定位置に集めるように指示してくれないか?」
本当に要点だけを述べた瞬に、細波は若干呆れるものの、すぐに承諾し、Bブロックで戦闘を繰り広げている特攻部隊に指示を入れた。ほんの数秒で指示を終えた細波は、瞬に確認を取る。
『終わったわ』
「そうか。ごめんな、忙しいかも知れないのに」
『べ、別にいいわ。気にしないで』
「うん。ありがと」
そう言って通話を終える。ふと周りを見渡すと、周りの特攻部隊員が不死体を指定した位置に追いやっている様子が窺えた。計画通り、と心の中で思った瞬は、同じく指定位置へと不死体を誘導する。それを見た緒代は、すぐに瞬の意図を察し、一度狙撃部隊の銃撃を停止した。
「……まさか、神崎はあの数を一掃するつもりか」
瞬を見続け、その様子を窺う。
「……狙撃部隊、BブロックからCブロックへ移動を開始する」
淡々と指示する緒代だったが、その指示に、狙撃部隊の団員は戸惑いを見せる。それもそのはずだ。何故特攻部隊を置いてここから離脱するのか、理屈が分からないのだから。
「……ならば、ここにいて気持ちの悪い光景を見るか?今から始まるのは、刺激の強すぎる光景だ。それでも残るか?」
緒代の言葉の意味を、理解できる者はいない。だから、緒代はあくまで簡潔に告げる。
「……つまり、このブロックの不死体は全滅が確定されているんだ」
計画通りに指定位置へと不死体の集団を集めた瞬は、残る特攻部隊全てをその場から離脱させ、他のブロックへと移動させた。
「よし……後は……」
現在Bブロックに残っているのは、瞬だけだ。いや、正確には瞬と、数十体の不死体だけだ。瞬は、指定位置でうようよと動く不死体を見て、僅かに笑みを浮かべる。
「悪いけど、お前ら相手にしてるほど暇じゃないんだ」
ー瞬間ー
その不死体の集団の足元に、巨大な四角形の底面が現れた。さらに、その頂点からは真っ直ぐに直線が引かれ、柱のようになる。そこから、その柱同士を結び合わせて出来る隔離壁ができ、巨大な箱が出来る。当然一体もその箱からは出てきておらず、すっかり箱の中に閉じ込められている。瞬は、高く伸びた柱から箱を塞ぐための「蓋」を作り出す。そして出来上がったのは、巨大な立方体。その大きさは瞬の何十倍もの底面積を持つ物だ。これだけでは全く伝わらないだろうから簡単に言うと、とにかくデカイ。
「よし……じゃ、やるか」
瞬は銃をホルダーにしまい。右手をその立方体に向けて伸ばし、手のひらを広げる。
「隔離圧縮」
そして、不意に拳を握ったかと思うと、そんな事を言った。
それから数秒経ってから、巨大立方体に変化が訪れ始めた。どんな変化かというと、それはずばり、言葉通りの「圧縮」だ。巨大立方体はどんどんその大きさを縮めていき、小さくなって行く。
「砕けろ……!」
そしてそのまま、見えなくなるほどまでに「圧縮」された。だが、肉眼では見えないだけで、実際は形として空気中に存在はしているのだ。圧縮動作が終わってから、その立方体は瞬の手のひら程の大きさになり、姿を現す。瞬は、それを確認すると、自分の前方にある程度の高さのある隔離壁を作り出す。その後、手のひらサイズの立方体の、隔離を解いた。そしてその瞬間…………
ブシャァァァァァァァァァッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!
と、大量の血液が立方体のあった所から、しぶき出した。真紅の血液は辺り一帯を同じく真紅に染め、さらに血の雨を降らせる。瞬は自分自身を隔離し、外界から断ち切る。
「はい終わり」
瞬は、血の雨を受けないように、頭の上に底面を出現させ、移動する。アリスを取り出し、連絡を入れる。
「もしもし細波?Bブロック片付いたし、緒代がCブロック行ってるだろうから、とりあえずDブロックの支援に行く。あーうん分かってる分かってる。了解した」
隔離圧縮!!
鮮血がブシャァァァァァッッ!!!
想像したらかなりグロテスクなりけり!!!
次回はその他の部隊の隊長格がとうじょーです!!
乞うご期待!!