表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Knights VS Undead  作者: 神崎
第二章 首都圏隔離
37/54

三十一話冷静沈着に。妄想・想像するように。

―二日目の海の調査部隊。しっかりと準備をしなおし、部隊は再び溝の底へと落ちていった―

二週間ぶりに更新!!今回もまた海の部隊の話です!!天条さんは、凄いです(ある意味)

―海の調査・二日目―

気を改めて、海の調査部隊は、海に向かう準備を海岸にて行っていた。さすがの昂大も、気の抜けた行動はしてこず、それどころか、かなり冷静に調査開始まで待機している。一方の遙香はと言うと……

「はぁぁぁ……」

それはそれは深く溜め息を吐いていた。

「どうした、天条」

「なんっでもありませんわよ!ええ、なんでもありませんわ!」

なにやらかなり不機嫌そうなので、昂大はそのまま何も言わないでおいた。


その遙香が不機嫌な理由というのが、以下の内容である。

それは昨日、細波に海での出来事を全て話し終わり、天条家へと帰宅した時のことであった。

「ふぅ……疲れましたわぁ」

ご自慢のブロンドツーテールを解き、自室の天蓋付きの大きなベッドに倒れこむなり、そのまま動きを停止させる。

「そう言えば、瑠華は別の作戦に行っていましたわね……」

瑠華が頑張っているところを想像すると、少しだけ微笑ましく思えるのは、恐らく主として当然の意識だろう。

「って、確か、わたくしの完全記憶が正しいと、瑠華と神崎様って同じ部隊だったような」

いや、間違いなく同じ前衛部隊で作戦を遂行している。

「あぁぁぁぁ!!なんっということでしょう!そんな二人が同じ部隊で夜も一緒に行動するなんてぇぇ」

そんなことは、瞬を大切に想う人間として、そして瑠華の主として看過していい問題ではない。というか、それ以前に、遙香には気にしなければいけない事がある。それは、その前衛部隊には、無表情で無愛想な総合部隊副隊長の、緒代孤影もいるということだ。

「いやぁぁぁ!!もうコレ絶対狙っていますぅぅぅ!!神崎様狙ってますぅぅ!!」

瑠華にしても孤影にしても、静かな性格だ。もしやとは思われるが、瞬はそういう性格(・・・・・・)がタイプなのだろうか。もしそうであれば、完全に辻褄が合う。ということはつまりそれは……

「普段静かな女子にあんなことをして滅多に出さない可愛い声をっわぁぁぁ」

何を想像したか知らないが、遙香は顔を真っ赤に染めてベッドの上を飛び跳ね始めた。

「そんなことは、瑠華の主として絶ッ対に認めるわけにはいきませんわ!!……あ、でも、瑠華もたまには神崎様とお近付きになるべきかと思いますし、わたくしばかりこうも神崎様神崎様と呻いていては瑠華も可哀想ですし、あぁでも、孤影さんまでそこに入れば……頭痛いですわね。とりあえず、孤影さんが神崎様に何かしたら即座に禁術発動して倒せばいいということですわ。あぁ、なんだか凄くイライラしてきましたわ」

というわけで、臨戦態勢を決して崩さない為にも、心を冷徹にして二日目の作戦の準備に向かう。心の中にどよめく真っ黒な憎悪は、今は抑えておくべきであろう。そのため、周りには不機嫌そうに見えてしまうのだ。


海は広くて大きい、などと最初に言ったのは一体誰であろうか。

「広いですわ……大きいですわ……」

「広いと大きいは、面積的な意味で言うとほとんど同じ意味に思えるな」

かれこれ数時間と、騎士領付近の海底を探索し続けている調査部隊。今日の作戦開始から今まで、時間だけが過ぎていく一方で、何も見当たらない。

「こんなの明らかに時間の無駄なんですのよ……いいから早く溝の底にいかせてくださればいいのに」

「細波からの指示によると、水棲型の不死体(アンデッド)と思われる存在を、天条からのデータを基に解析するそうだ。それまでは、出来るだけ深入りはせず、周辺の調査だけをしろとのこと」

昨日発見された不死体(アンデッド)らしきものの情報を口頭で述べられただけでまとめようとするなど、まるで不可能にしか思えないが、細波なら簡単にこなしてみせそうである。

「……この様子ですと、今日は一日なんの進展もなさそうですわね」

「そうかもしれないな」

一同げんなりとした様子で海底探索を再開する。昨日溝に落ちたときに分かった事は、騎士領付近は巨大な岩盤の上にあるということ。加えて言うならば、岩盤の周りには深い溝があり、その溝の奥底に不死体(アンデッド)がいるということ。

「一つ、気になっていることがありますわ」

「なんだ?」

「これはあくまでわたくしの妄想から生まれてくる想像なのですけれど、海には、サカナという生物はいませんの?」

ここで一つ、遙香が昂大に疑問を投げかけた。

「サカナ……魚か。……よく分からんな。普段騎士領で食している時、それはすでに完成品であって、元が何かを知る機会は少ない」

昂大もまた、この世界に存在する魚、と言うものをよく知らない。ただ、食堂や料理店では魚料理というのは頼めばすぐに出てくる。その魚料理の魚は、果たしてどこから来ているのだろうか。

「もしかして、秋川さんが能力で作っていらっしゃるとか……?」

「ひょっとすると、一般人には機密で、そう言った生物が養殖されていたりするのかもしれんな」

二人して想像を膨らませていく。このような疑問を浮かべたら、追求したくなるのが二人のようだ。

「だとしたら天条、神崎のよく食しているカツカレーのカツはどうなる?アレは確か、豚という生物の肉を使っているらしいが」

「これは……まさか!聖騎士団(ガンナイツ)にはわたくし達の知らない生物事情があるんですのね!」

「騎士領七不思議として記録するべきだ」

こうして、二人の勝手な想像と判断で、騎士領七不思議と呼ばれるものが作られた。残りの六つに関してはこれはまた後々触れていく事になるであろう。それにしても、今まで生きてきた中で、何故一度もそのような事情に触れてこなかったのかが、逆に疑問ではある。


―数時間後―

何度か海岸に上がって、細波へと連絡を入れてみたものの、水棲型の不死体(アンデッド)に関しては、まだ情報を完全にまとめることは難しいそうだ。そのついでに、他の部隊の状況を聞いた天条は、細波から返ってきた返答に、困惑していた。

「ど、どういう事ですの?空の部隊がほぼ壊滅状態で撤退なんて……」

『言った通りの意味よ。秋川君達は、征伐者と名乗った敵に襲撃され、部隊を壊滅させられた。生き残りは秋川君と指原君だけ』

「あ、有り得ませんわっ!性格はちょっと頭に来ますけど、あのお二方が揃って敗北するなんて……」

普段の適当さ、口の悪さはともかく、秋川と指原は聖騎士団(ガンナイツ)でも屈指の実力を持つ隊長格だ。いくら襲撃されたとは言え、そんなに簡単に敗北を喫することはないはず。

『でも、考えてみなさい?秋川君達よりも強い、瞬が勝てない存在だっているのよ?それはあなたが一番知っているはずなのだけれど』

「ま、まさか……秋川さん達を襲撃したのは、神崎様の時と同じ……」

『そういう事よ。……今日はもう日が暮れてきているわ。海の部隊も引き上げて、ゆっくり休む事ね』

そこで、細波と通信は切れた。相手が誰なのかわかっていても、やはり作戦失敗というのは腑に落ちない。しかも、まだ二日目なのに。

「幸先悪いですわ……神崎様の初指揮の調査だというのに、こうもあっさり……」

これでは、他の調査部隊にも悪影響を及ぼす可能性がある。そう考えると、遙香は頭を痛めてしまう。だが、一人いつまでも作戦失敗の事を考えていても、何も変わる事はない。今は自分の作戦に集中しなければ、と自分の頬を両手でビシビシと軽く叩く。


―午後九時過ぎ―

監視部隊の隊長格室にて昨日通り作業を行っていた細波は、遙香からの連絡が終わるなり、作業机に展開された薄い液晶に目を見やった。そこに映るのは夜の外界で野営している陸の前衛部隊。

「ふぅ……」

特に、見ているのは、紛れも無く瞬だ。細波は、他の団員を優先して休ませている瞬を見て、重い溜め息を吐いた。

「折角の特別な作戦だというのに、こうもあっさり失敗を告げられるなんて、あなたにとってはとても残念なものよね」

しかし、瞬を見て言ったとはいえ、細波の言葉はどうにも、彼に対して言っているような言葉には思えない。言葉の後、ふと時計を見て時間を確認した彼女は、一旦液晶を閉じ、入浴のために専門施設の浴場へと移動した。その間、監視は他の団員がやる事になっているので、問題はない。

小鳥遊(たかなし)君、少しの間監視を頼むわ」

『了解しました』

しっかりと、別の場所で仕事を行っていた凛が、返答をした。


そして、細波がいない間の監視を任された凛の下に映った液晶には、先程までと同じ陸の前衛部隊の様子が映し出されていた。相変わらず、瞬は自分を休めようとはしていない。それを見た凛が、苦笑いを浮かべた。

「まったく、無理は禁物だっていうのに。相変わらずですね、神崎隊長」

と、その直後、画面の中に異常が起きた。特異電子操作によって液晶映写効果を与えた浮遊電子が砂嵐で見えなくなったのだ。

「わわっこれはいけませんね。すぐに他の電子に効果を与えないと……」

言葉の通り、凛は他の電子に画面を切り替えた。すると、画面に映し出されたのは、周囲に飛び散る真っ黒な血。間違いなく、戦闘が行われている模様だ。すぐに通信回線を瞬達のアリスに繋げ、連絡を図る。が、液晶から飛んで来るのは、戦闘音ではなく、ノイズのようなものだ。

「神崎隊長、聴こえますか!?こちら小鳥遊(たかなし)です!応答を!!」

ザ、ザザ―

しかし、向こうからの応答はノイズだけでまったく聴こえない。恐らく、向こうには凛の声すら届いてはいないだろう。

「ど、どうしましょう。これではどうにもできません!」

一人であたふたしていると、自分のアリスから声が響いてきた。

『なにをやっているのよあなたは。もう少し落ち着いて行動しなさい』

細波の声だ。凛は彼女の声を聞くなり、安心したように溜め息を吐いた。

『電子を他のものに移し変えて。それから、しばらく安定するまでは映像出力しないように。ノイズが発生してしまうのは、能力が安定していないからよ』

「わ、わかりました!……おぉ、出来ましたよ!」

細波の助言通りにやると、不思議と簡単に出来てしまった。映像も安定している。通信しようとしても、ノイズは起きない。

『そのまま通信を私に切り替えて頂戴』

「はい!どうぞ!」

細波が瞬へと通信回線を飛ばし、冷静に応答を待つ。

『はい。こちら神崎瞬、今交戦中!』

『そのまま周りを片付けなさい。とりあえず、今あなた達が戦っているだけの数だから』

『了解。……皆、そのまま全部倒してくれ!!』

細波は瞬との通信を切ると、同時に凛との通信も切った。予測ではあるが、彼女はまだ入浴中だったか、入る直前だったのであろう。

「流石です。細波隊長!!」

凛はそんなことも考えようとはせずに、感嘆の声を漏らしていただけであった。


「これは、ゆっくり入浴も出来ないのかしらね」

細波は、入浴直前、服をすべて脱いだままであった。






どんな時も、意外に冷静な細波さん。裸で瞬と通信するなんて、あとから思い出すと、大変そうですね(笑)

―三日目。海の部隊はいよいよ溝の底での調査を開始する。そこで見たものとは―

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ