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Knights VS Undead  作者: 神崎
第一章 東京隔離
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十二話作戦第一フェイズ・その2

西門付近の制圧が完了した。残る三つの作戦地域ももうじき制圧完了する予定だった。だが、西門同様に、北門、南門にもシャドウタイプが出現し、彼らの形勢が不利になる。そんな中、待機メンバーの御剣と孤影は秘密裏にある行動を起こそうとする。さらには瞬が先日とは違う違和感に気付き、疑問を浮かべ始める。

複線バリバリのお話ですなー

よろしくお願いします!!あ、ちなみに前書きは今度からこんな感じで書きますね。

聖騎士団(ガンナイツ)騎士領内教会。ここで、出撃予定の無い騎士団員は待機することになっている。また、監視部隊総動員での戦地の諜報活動もここで行われている。冴場のシャドウタイプとの戦闘は監視部隊の諜報用小型設置カメラで常に記録されていた。冴場がシャドウタイプを倒した後、細波からアリスを通じて戦線維持の連絡が伝わり、冴場は突出しないように範囲外から来る不死体(アンデッド)に対し防衛網を張っていた。他にも、東門のおやっさんの暴走や、南門の秋川と指原の気ままな戦闘、北門の瞬達の落ち着いた戦闘など、全部カメラに記録されていて、常にその場の状況は教会内に伝わる。加えて、アリスは一斉通信を行っている為、出撃メンバー同士での連絡も可能だ。

「東門付近と西門付近の制圧はほぼ完了、ですか。かなりいいペースで作戦は進んでいますね」

各地点の状況をアリスから窺う御剣は、ふとそんな事を言った。教会最奥部にある祭壇に据え置かれた椅子に座る彼は、満足そうに微笑んでいる。

「……でも、他の所は大丈夫?」

そんな彼に、出撃メンバーに入っていない待機メンバーの孤影が反応した。小さい体の彼女は、いつでも出撃する準備が整っているのか、身の丈に似合わぬ大きさの漆黒の鎌を手にしている。

「安心してください孤影さん。神崎君は二度も同じ相手には負けませんよ?」

孤影に優しい微笑みを向ける御剣だが、孤影はなんとも反応はせず、ただ無言で彼に背を向ける。

「ところで孤影さん。あなたに、是非やって欲しい事があるのですが」

「……なに」

そう言って振り返って御剣を見る。その顔は相変わらず優しい微笑みのままだ。だが、なにやら言い知れぬ違和感を、孤影は感じた。


~騎士領南門付近~

順調に作戦をこなしていた秋川と指原の前に、シャドウタイプが現れた。予測していたとはいえ、突如出現したシャドウタイプの不死体(アンデッド)に二人は防戦を強いられる。

「情報通り、速いな……!」

「油断できない感じー」

背中を合わせてどこからの攻撃にも反応出来るように構える二人だが、いかんせん速すぎて目が追いつかない。銃を黒い影に合わせて動かし、標準を合わせようとするが、不死体(アンデッド)はそれを分かっているかの如く高速で移動する。

「これじゃ照準が定まらんわ!なぁ指原、何かいい手はないか?」

「ん~能力を使うことを推奨するー」

やっぱりか、と秋川は至極残念そうな表情をする。秋川は構えていた銃を下ろしてから指原に向き直ると、どこか面倒そうな声で小さく呟く。

「俺の能力戦闘向きじゃねぇしなぁ」

「それでもそれでもとりあえず行こー!!」

指原が気の抜けた感じに声を張ると同時、不死体(アンデッド)は秋川の背後に現れ高速突進を繰り出す。二人は、それを左右に分かれて回避する。不死体(アンデッド)の左側に回避していた指原は、おむろに足下に転がっている石ころを拾い上げる。

「おりゃー!」

そして、それを不死体(アンデッド)に向かって軽く投げた。当然、ただの石ころを投げただけなので、|不死体にとってはなんの痛みにもなるはずはない。ただし、それは投げた石ころが本当にただの石ころ(・・・・・・)であった場合のみだ。

「はいどーん!!」

全く避ける素振りを見せない不死体(アンデッド)。石ころなんて…の程度で気にしていなかったのか、狙いを右側の秋川に定めて方向転換する。が、指原の一声で、石ころに変化が起きた。

ドーン!!

豪快な音が、辺り一帯に響き渡った。何事かと、そこにいた他の団員は反応する。もしや巨体化した不死体(アンデッド)に指原達がやられたのかも知れない、と不安がよぎる。だが、音のした方向を見てみると、想像とは全く違う光景が広がっていた。シャドウタイプの上に、巨大な岩が出現し、その体を押し潰していた。巨大な岩の下で、不死体(アンデッド)はもがく。が、相当な重量なのだろうか、岩は一切動かない。

「避けといたが良かったろ。ただの石をこいつが投げるわけない」

「そうそう。俺の能力、自在形成(じざいけいせい)がある前で、石をただの石だと思わないでねー」

指原秋人の異能力、自在形成。


製造部隊副隊長の彼が持つ能力である。触れた物の形を思うがままに変える事が出来るという比較的簡単に理解納得できる能力だが、この能力、単純故に強力な部分がある。

「今のは石を大きくさせて岩に変えてみた感じだけど、普通に考えると、見た目を大きくするだけじゃ、もろいよねー」

指原の自在形成は、物の見た目だけでなく、中身の大きさも自在に変えることができ、今目の前にある岩は、彼の意思により、同じ大きさの岩のさらに何倍もの質量になっており、人間ならばすぐに骨ごと砕け散る重さだ。激しい動きでもがく不死体(アンデッド)に近寄り、見下したように笑いながら、指原は岩にもう一度触れる。すると、岩はさらに重さを増し、一気に地面にめり込んだ。

グガァァァッ!!!

不死体(アンデッド)の悲痛な断末魔を挙げる。そして、体全体からいきなりスライムのような肉塊を噴き出し、新たに体に融合していく。これは恐らく形態変化の前兆だ。

「あー……これは噂に聞いた形態変化だねー」

余裕の表情の指原は平坦な声でそう言った。秋川は形態変化をしようとしている不死体(アンデッド)にゆっくりと歩み寄る。そして、体の一部であろう肉塊に指先を触れると、同じく平坦な声で呟く。

「形態変化?そんなの知らねぇよ」

一言告げた瞬間に、不死体(アンデッド)の体が、消え失せたのだ。音も無く、一瞬で瞬間的に。まるで最初から何もなかったかのように、肉塊は大気の中に消えたのだ。

物質改竄(ぶっしつかいざん)能力って名前の俺の異能力だ。残念ながら、シャドウタイプさんとやらは、俺の能力で気体になったぞ」


物質改竄。

製造部隊隊長の秋川が使う異能力で、使用者の意思により、自分に触れている物質そのものを、全く違う物質に変化させる。また、形としては存在しないものの、自分自身が触れる事の出来ているのであれば気体目に見えないものにも変化させる事が出来る能力。彼は、この能力で聖騎士団(ガンナイツ)の製造全てを担っているのだ。どうしても生成する事の出来ない物質は、彼に頼めば生成出来る。

「ちなみに言うと、酸素になったから、俺達にとってはありがたい気体だぜ」

「んー?でもさー不死体(アンデッド)から生み出した酸素って、危なくないー?」

誇らしげに胸を張る秋川に対し、指原が疑問をぶつけた。秋川は、これに対して自身に溢れる表情で答えた。

「説明をちゃんと聞いていたか?俺は、触れている物質そのものを他の物に変化させられるんだぜ?不死体(アンデッド)の体の中にどんな感染ウィルスがあったところで、それもまとめて変化させてしまえばいいのさ」

いわゆるT-ウィルス的なものが、不死体(アンデッド)体内には無限に存在する。それが普通の人間の体内に入る事で、感染症を起こして不死体(アンデッド)化するのだが、物質改竄は、それすらも酸素に変化させたのだ。

「てことは、秋川は過去に一回でも不死体(アンデッド)のウィルスに触れた事があるのかー?」

「イエスだ。自身の手で触れている」

秋川は、過去に一度だけウィルスに触れた事がある。その時は、彼自身本気で死にかけたらしいのだが、これについてはまた別の機会にでも話をしよう。

「ま、何はともあれ制圧完了だ。指原、例のヤツ準備しておいてくれ」

「了解ー」

なにやら気の抜けた感じで、南門の制圧は終了した。


~騎士領北門付近~

「隔離……圧縮ッ!!!」

銃をしまい、目の前を高速移動するシャドウタイプの不死体(アンデッド)に対して、お決まりの技を決めにかかった瞬だが、隔離するよりも速く、不死体(アンデッド)は高速移動する。瞬は、空中に飛び上がってから、もう一度狙いを定めて隔離能力を発動するのだが、それに気付いたらしい不死体(アンデッド)は、宙に浮く瞬へと、高速で突進をしにいく。

「しまっ!?」

「隊長!」

下で援護を行っていた静理は、気を引くために、腰に備え付けられたガンホルダーから拳銃(ハンドガン)を取り、数発放つ。見事にそれは不死体(アンデッド)に被弾するのだが、不死体(アンデッド)は気にも留めずに瞬へと攻撃を仕掛ける。

「神崎様!!私にお任せを!!」

いよいよ激突される直前まで不死体(アンデッド)迫った時、下方から瑠華の声が響いた。

「貫けっ!!!」

声が響いた後、地面から宙に向けて、真紅の光が走った。それは、不死体(アンデッド)に直撃し、不死体(アンデッド)を大きく仰け反らせる。瞬が光のやってきた下方へと視線を向けると、そこには、先程までの黒と白を基調としたメイド服とは大きく違う、体全体を真紅のプレートに包み込んだ瑠華が、身の丈に合わぬ真紅の槍と、真紅の盾を手に真っ直ぐと不死体(アンデッド)を見据えていた。

「今の内に態勢を立て直してください!」

彼女を包むプレートは、それこそまさしく騎士に相応しい甲冑であった。その真紅の甲冑は、彼女の赤みがかった髪とぴったり合っていて、戦場の誰よりも人の目を惹きつける。

「瑠華!相手は速いから、気をつけてくれ!」

宙で態勢を立て直した瞬が、瑠華に注意を呼びかけた。瑠華は、それに小さく頷くと、左手の真紅の盾を構える。すると、それを見越してか、不死体(アンデッド)が瑠華に向かって高速で移動してきた。恐らく、突進して瑠華ごと吹き飛ばすつもりなのだろう。だが、瑠華のほうは身じろぎ一つせず、ただじっと構えるのみだ。

「三條!それは危険すぎる!」

静理は危険を察し、瑠華を止めようとするが、横から別の不死体(アンデッド)が攻撃を加えて来たため、声が最後まで届かない。結局、瑠華に向かって、不死体(アンデッド)の高速突進が繰り出された。

ドォォンッ!!

と、豪快な音が響く。察せられる通り、この音の正体は不死体(アンデッド)と瑠華の真紅の盾が衝突した音だ。衝突した瞬間、辺りを砂埃が舞う。瑠華付近の視界は断たれ、周りから様子を窺う事が出来なくなる。次第に、視界が晴れてくると、驚きの光景が目に映った。不死体(アンデッド)が突進した瑠華の真紅の盾なのだが、普通なら盾ごと吹き飛ばされてしまいそうだったというのに、瑠華は最初に構えていた位置から動いてはおらず、それどころか、盾には一切の傷すらも入っていない。

「うわ……あれを喰らって無傷とか……」

しかも、突進してきた不死体(アンデッド)のほうは、あれだけの勢いで突進したのにも関わらず盾が微動だにもしなかったものだから、勢いのせいで体が変形してしまっている。

「我が盾を貫ける物は存在致しません」

瑠華は静かにそう告げると、右手に持った真紅の槍をゆっくりと持ち上げる。そして、逆の手の盾を不死体(アンデッド)から引き剥がし、そこから、倒れそうになった不死体(アンデッド)の腹部に深々と、真紅の槍を突き刺した。

「真紅の槍よ、貫けっ!」

先端部分が突き刺さっていた槍をさらに深く不死体(アンデッド)の体に突き刺す。不死体(アンデッド)は悲痛な呻き声を挙げて、もがくのだが、瑠華はそんな不死体(アンデッド)には興味を抱かず、片手で槍を天に掲げた。

「はい?なんであんなの片手で持ち上げられるんだ?」

瞬が疑問符を頭の上に出現させる。その間にも、瑠華の攻撃は続いている。左手に持っていた真紅の盾が、左手から消え、今度は両手に槍を持ち替えた彼女は、突如跳躍した。それも、何メートルとかそんなレベルではなく、数十メートル単位でだ。すぐに彼女は見上げる高さに飛び上がり、そこから、宙で身を翻す。これは、地面に舞い降りるための前兆だ。もちろん地面に向けられているのは不死体(アンデッド)の突き刺さったままの真紅の槍。

緋鋭(ひえい)の槍」

瑠華が言葉を告げ、一気に地面に向かって急降下する。その速度は目にも留まらぬ速さで、まさに一瞬で不死体(アンデッド)ごと地面に槍を貫通させた。槍の穂先は半分以上地面に埋まり、中途半端に体が地面から出てきている不死体(アンデッド)は遅れて肉塊を辺りに飛び散らせた。そして、そのまま動かなくなる。

「我が槍に貫けぬ物は存在致しません」

(つか)を宙から逆さになった状態で握っていた瑠華は再び身を翻し、先の文の通り地面に舞い降りると、いつものように落ち着いた様子で淡々と言葉を告げる。

「私の能力の名は、聖装騎士(せいそうきし)。その名、見た目の如く、最も騎士として相応しい能力です」


聖装騎士。

交易部隊副隊長の三條瑠華が扱う異能力で、彼女の言葉通り、聖騎士団(ガンナイツ)で最も騎士として相応しい能力である。使用者の意思次第で力を増幅させる事の出来る物なのだが、一度の能力発動による反動が大きすぎるため、扱いが難しい能力の中でも上位に存する。発動時に、体全体を真紅の鎧で包み、騎士甲冑を装備。加えて、絶対防御の真紅の盾と、絶対貫通の真紅の槍を使用者の意思の赴くままに出現させ、攻防共に最強とする。彼女の持つ騎士道精神が、聖装騎士と直結しているため、彼女にとってこの能力は最適。よって、この能力は彼女に絶大な力を与える。

「気をつけるんだ瑠華!形態変化が起きる!!」

瞬は、能力使用を停止して、真紅の鎧と真紅の槍を消した瑠華に注意を呼びかける。しかし当の本人は柔らかな笑みを向けたまま能力を再発動しない。瞬の下へと歩み寄って来た瑠華は、またいつものように落ち着いた雰囲気で言葉を告げる。

「それでしたら、私が空中にいる間に行っていた様子です」

「え?それって……」

瞬が疑問の意を表すと、瑠華は優しい口調で飛び上がった時、即ち緋鋭の槍を発動しようと宙に舞い上がった時の事を話し出す。

「形態変化の際の不死体(アンデッド)の動きについては、あまり存じませんでしたが、宙にいる間に、槍に貫かれた体の一部から肉塊のような物が噴き出していたので、形態変化とはそれなのではないかと」

瑠華の言うそれは、冴場の時の形態変化、秋川達の時の形態変化と、同じものであった。皆が一様に目にしたのは、不死体(アンデッド)の体内から噴き出したスライムのような肉塊。そしてそれが不死体(アンデッド)の体に融合していく様子。その後、完全に融合してしまう前に追撃を加えると、不死体(アンデッド)は動かなくなる(秋川の場合は例外であるが)。つまりそれが、シャドウタイプの形態変化を封じたという何よりの事実になるのだ。

「じゃあ……あれはなんだったんだ?」

だが、瞬が未だに疑問を感じているのは、肉塊の融合だとかそういう事ではない。

(俺が隔離圧縮した時、シャドウタイプの体は完全に圧縮されて、形態変化どころじゃなかったはず。じゃあなんでだ?なんであの時、俺の隔離圧縮を打ち破る程の力で再び姿を現した?)

先日の駆逐作戦で姿を現したのは、今日のシャドウタイプとは大きく違う。自意識過剰で自己主張をするわけではないが、少なくとも自分は今回の出撃メンバーの中でも一番の戦闘力を持つはず。ならば、なぜ最初の戦闘の時、自分はあそこまでやられたのか。いや、それ以前に、なぜこんなに(・・・・・・)周りが静か(・・・・・)になっている(・・・・・・)のだろうか(・・・・・)

「瑠華!!伏せろっ!!!!!」

瞬の言葉と共に、突風が瑠華の体を吹き飛ばした。

三人分の能力を公開しましたー!

そして、ふと思いました。あれ、秋川最強じゃね?ww

はい、気にしたら負けですよー!!

複線張りすぎかな?と自重しつつも、次話を書き書きしています。さて、前書きの書き方を変えたという事然り、当然ながらあとがきも変えさせていただきますね。あ、つまり次回予告をするという事です。禁書風に。

―圧倒的優勢に進んでいた作戦であったが、シャドウタイプの大量出現により、一気に形勢不利になる。そんな中、ピンチの状態にも関わらず神崎瞬が笑みを見せつけた―

次回もよろしくお願いしますー!

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