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狂室  作者: みづ きづみ
ハジマリノ編
7/37

6時限目 あはははははははははははははははははははははは!!

 吉永は眼を凝らして、”死神サン”のちぎれた方の腕を見た。

…血ではない…

……体液か?

緑色だ…

そこから何か、触手の様な……何だ?


WS(ワークスペース)にぬめりのある音が……

めきっ…ぶしゅっ……ぐちょちょちょ……にちゃ…ばきごきごき!!

「う、うぎゃぁぁぁぁぁああああああああああ!!」

3人は声を揃えて叫んだ。

めきめき

”死神サン”と(えぐ)れた腕から、緑色の触手がにゅるりと生えてきた。

「おいおいおい!! 何だよ! これ…ありか?! つかあの緑色の触手みたいなの何だ?!」

「くっそ! 意味が分からない! 何が起きてる?!」

「2人共! 今は逃げなきゃ!」

「ぅああ! そうだ! 走るぞ!」

3人は後ろへ回れ右して駆け出した。

うごめいている左腕を引きずりながら、”死神サン”も追い掛けて来た。

「やばい! あいつも追ってくるぞ!」

吉永が振り向く。

「落ち着け! あいつより、俺達の方が走りは速い筈だ!」

「…上本君……」

「何だ!?」

「そんなことない!! あいつ速い!!」

上本は振り向いた。

「げっ!」

”死神サン”はもうすぐ後ろにまで迫っていた。

「畜生!」

3人は階段を降りる。

その時、”死神サン”がジャンプして目の前に降ってきた。

「うわ!」

どくんどくんと脈を打っている様にも見える緑色の触手。

上本は、マシンガンを取り出して言う。

「ここは俺が時間を稼ぐ! 逃げろ!吉永! 桜田を護れ!」

「……くそ! 俺も残る!」

「来るな! ……俺一人で充分だ。」

「上本君!」

「桜田! 俺は……お前のことが…お前のことが……!!!」

その言葉に桜田は涙を流す。

「泣くな! 皆辛いんだ! 安心しろ……俺は生きて戻る…」

「嘘つけ!! 残された方の気持ちも考えろ!」

ふっ…相変わらず……自己中な……いや…今、自己中なのは俺の方か…

「早く行け」

上本は2人を安心させようと笑顔を見せた。

これから死にに逝くような笑顔じゃない……まるで本当に幸せそうな……

「でも……吉永君……私は!」

「知ってる!! お前が稲川のことを好きなのはな! でもな…これは恋愛ゲームじゃない! 生き死にを掛けた、最悪のゲームだ! 桜田……稲川に会っても惑わされるな…あいつは非常だ。お前も殺しに来るぞ。それから……最後に頼みがある……」

「最後って何!? 生きて戻るんじゃないの!?」

「いいから聴け! ……桜田、吉永、稲川と杉山のチームに勝って…このゲームを作ったやつをぶっ殺せ!! それが、俺の一生に一度の願いだ…じゃあな…」

上本は銃をリロードする。

「上本君!!」

吉永が涙を流す桜田を引っ張って行く。

2人の姿が見えなくなり、桜田の声だけが聴こえた。

おいおい、泣くなよ。こいつらに見付かるぜ…

「よぉ、腐れ神! 随分と気を利かせてくれたじゃねーか」

上本はマシンガンを”死神サン”に向けた。

「…?」

だが、”死神サン”に動く気配は無い。

「ちっ! めんどくせぇやつだ!」

上本はマシンガン撃ち放った。

体に銃弾が次々と被弾し服を破っていく。

くそ、やっぱり銃は腕がしびれる…

それにしても、”死神サン”は動かない。

立ち尽くすのみだ。

「おい! 何とか言いやがれ!」

上本は死神の腰に蹴りを入れる。

だが、その足は腰に到達せず、緑色の腕に掴まれた。

今頃か?

「うっ! 離せ!」

”死神サン”が強力な力で上本の足を握った。

折れそうだ。

「うらああ!」

上本は再びマシンガンの引き金を引いた。…と同時に”死神サン”の体がまっ二つに割れ、大量の体液が上本に掛かる。

「ぶぇ! 臭い!」

体が緑色の液体で覆われた。

「このやろ!」

マシンガンを撃とうとする…が、弾が出ない。

「くっ! どうなってる!」

遂に上本は銃を放り投げ、”死神サン”の襟首を掴んだ。

「いい加減に…しろ!」

割れた頭に更に割れる様な頭突きを浴びせた。

それが、決め手となったのか、”死神サン”は上本を手離した。

「うわ!」

地面に尻餅を付いた上本は、”死神サン”と少し距離をとる為、一段階段を登った。

途端に、

「ヴォオオオオオオオ!!」

耳が裂ける様な咆口。

”死神サン”が初めて声を出した。

いや、これは人間の声だろうか…頭が割れてるから、もう人では無い。

なら何だ?

「くっ! っるせぇ…」

思わず耳を塞いだ。

ドサッと何か音がした。

「な…何だこりゃ…」

”死神サン”は既に”死神サン”ではなくなっていた。

最早、人では無い。

サソリ、の様だ。

いや、どう見ても巨大な(サソリ)だ。

所々に紅い装束が着いているが、もう原型を留めていない。

腕、いや脚は6本、前肢の2本は輝くハサミになっている。さらには尻尾も…。

まるで、剣を思わせる針が付いていた。

そして何より驚くのは、その背中だ。

そこには無数の顔…若い学生の顔…それが殆どだ。

そしてその中には…

「ふ、藤田?!」

顔を歪ませた藤田の顔がそこにはあった。

青白く、白眼を剥いている。

「…ま、まさか、こいつは?! そうかわかったぞ! お前達は………っっっ!!?!?!?!?!」

言おうとして、下半身に激痛が走った。

「ぐぁあああ!」

同時にバランスが取れなくなり、階段の段差に転けた。

恐る恐る下半身を見ると…

「ひぃ!」

片足が無い。

そこにあるはずの肉と骨が、炭素の塊が……。

その傷口からはシャワーの様に血が吹き出ていた。

白い骨が露になっている。

「い、いいんだ! 俺は…俺は死ぬんだ!」

足を探すと、あいつの(サソリ)のハサミの下に落ちていた。

さらに蠍は上本に近付く。

そしてもう片方を…

ぶしっ!バッツン!

ぶしゅぁぁああー。

「ぎいいいい!!!」

痛みに身悶える上本。

両足を無くした。

もう逃げられない…

いや、逃げない…俺は…俺は…俺は…

「おれはこのげえむのしんじゃになるんだ、あはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!!!」

そう言って、上本の生涯は幕を閉じた。



現在時刻 八時

ゲーム開始から、約二時間

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