5時限目 試行
感想で、矛盾…というかおかしい点があったので今回で改善したいと思います。
”死神サン”が取っ手に手を掛けた。
掃除用具箱の中にいる桜田がマグナムの引き金に指を掛ける。
刹那
「うぉおおお!!!」
上本が、右真横からマシンガンを連射した。
“死神サン”の服がビリビリに破け、同時にWSに転がり出る。
ドアが開いていたのが幸いした様だ。
「ああ!」
上本は、吉永に首で合図する。
吉永は掃除用具箱に居た桜田を助け出し、上本のいるWSに向かった。
3人が”死神サン”を挟む形で対峙する。
”死神サン”は両手に持つ双剣をくるくると器用に振り回した。
身構える吉永と上本。
「…ちょっと待て」
吉永が口を開いた。
「何だ?」
今まさに銃を発砲しようと構えていた上本は、びくっと体を動かして止まる。
「あいつよ、何で血が出て無いんだ?上本が撃ったろ? 痛がりもせず、それにあれだけ喰らえば死んでてもおかしく無い筈だ」
確かに…。
上本は考えた。
俺はかなりの量の弾丸をあいつに射出した…それも近距離で。
だが、被弾した直後もその後も血を一滴も垂らしていない。
「もしかしたら、重装備で傷が付かないのかもしれない。吉永、そのTLであいつを撃て。そうすればほぼ確実に、死ぬか傷を負わせる事が出来る筈だ」
「分かった」
吉永は巨大な銃にグレネードを装填し、”死神サン”を狙った。
飛距離は短いので、近くで無ければ当たらない。
”死神サン”はゆっくりと着実に3人の元へ歩を進めている。
「まだ引き付けろ…まだだ………まだだ……今!」
”死神サン”は既に3人の5m手前の距離に来ていた。
吉永は引き金を一思いに引いた。
同時に大口径の発射口からグレネードがピンが抜かれた状態で出てきた。
「離れろ!」
上本は吉永と桜田を引っ張って”死神サン”から離れさせた。
途端に大音量の爆発音。
それは学校中に盛大に響いたことだろう。
◇◇◇◇◇
二○○五年 十月二十三日 午後八時
この頃、翔と杉山の2人は給食室に来ていた。
「はは、ご苦労なこった」
「………」
2人が呆れている理由。それは……。
この学校は弁当制では無い。
創立以来ずっと給食制で、しかもその給食費は学校側が全額負担している。
お母さんには有難い制度だ。
その肝心の給食は給食センターという所から車で運ばれて来る。
その受け取り口、給食配達車入り口が現在は分厚い鉄板(と表現するのが最も正しい)に覆われていた。
「はぁ、全く。俺達高校生相手にどれだけの大金をはたいたんだ。犯人達は何がしたい?」
翔が困惑した表情で言った。
杉山は壁へ歩み寄り、その細部に渡るまで調べた。
「翔、これはかなり濃密だ」
「? どういうことだ」
「つまり、キメが細かい。鉄と鉄の間の隙間が少ししか無いんだ」
流石は名門校の生徒というところだ。
「そうか…じゃあ、取り敢えずこの給食室を…」
「待ってくれ、翔。一回レールガンで撃ってみたい。もしかしたら破ることが出来るかも」
「……で、でも、音であいつらが来ない保証は無いし…っておい!」
杉山は翔の言葉など耳に入らず、ダイナモ(レールガンに電気を送電する為の機械)に充電を始めていた。
だったら初めから俺に聞くなよ…
翔は仕方なく、給食室をペンダントを見付ける為に捜索し始めた。
数分後
「よし! 受電完了!」
ダイナモのランプが満タンを示して点滅していた。
ダイナモをレールガンに装着し、分厚い鉄板へ銃口を向ける。
「いくぞ! 翔、少し離れて…」
「もう離れてるよ!」
翔は給食室の外から中の様子を伺っている。
「いくぞー!」
杉山はレールガンを勢いよく射出した。
いく線もの青い電磁波が束になって鉄板にぶち当たった。
それは爆発を巻き起こし、煙を上げた。
「いっててて、どうなった?」
杉山は鉄板の方を視るが、白い煙で前が全く見えない。
「杉山ー! 生きてるかー!」
翔が給食室の中に入ってきた。
「俺は無事だ! それより、”死神サン”が来てないかチェックしてくれ!」
そうだ、忘れていた。
翔は給食室の外を警戒した。
左右を何回も見回す。
数分間、左右を見ていたが、”死神サン”が来る気配は無く、特に異常は見当たらないので給食室内に戻った。
奴等は音には反応しないのだろうか…
そう考えながら給食室を観ると、翔は驚愕…いや、失望した。
心の何処かでその可能性に期待していたのかもしれない。
鉄板は無傷だった。
その代わり、鉄板以外の辺り一面が焼けただれて、ゴムを焼いた様な異臭を放っていた。
「…何でだ? 命中したんじゃ無いのか?」
「あ、あいつら…こんなもんまで…。」
「? 杉山、こんな物って?」
「此方に来て良く見てみろ」
翔は杉山の居る場所に寄る。
ははーん。成る程。
「電磁ネットか」
杉山が示す場所には青白い網が幾つも張られていた。
«電磁ネット»これは、ロシアの陸軍がレールガン等の電磁兵器への対抗策として、秘かに開発していた世間には出ることは無いだろう代物だ。
妨害電波を出し、あらゆる通信機器や電気信号に障害をもたらし、レールガン等の電磁波による攻撃をはね返す、もしくは消し去る事が出来る。
携帯電話が通じ無かったのはこれのせいだ。
「くそ、この調子だと学校をひとまとめに電磁ネットで覆ってるな。携帯電話もこいつのおかげで圏外だ」
翔達のクラスで流行っているのは云わば機密情報の取得だ。
政府の秘密や軍の内部、アメリカの予算等、見事にその頭の使い方を間違え、プロの情報屋をも凌ぐ情報網を持っている。
その為、外国の軍の情報にも詳しい。
「これじゃ、しょうがない。この部屋の捜索をするか…せめて、クレネードがあればなぁ」
◇◇◇◇◇
杉山がレールガンを放ったのと同時に吉永もTLを放った。
爆発により、”死神サン”は吹き飛ばされ、壁際まで転がった。
「おっ! やったね! あいつの腕だ……っておぇえええ!」
足元に赤い布に包まれた腕が落ちていた。
吉永はその場に激しく嘔吐する。
取り敢えず、片腕は壊した。
これならまだ有利になった筈だ。
ただでさえ死なないのだ(3人の判断)、片腕が無くなればどれだけ救いになることか。
”死神サン”は片腕を付いてのそりと起き上がると、その場に立ち尽くした。
「……あれ? 俺、眼が悪くなったのかな…」
「? 何を言ってる?」
吉永は上本を見た。
遠くを見るように目を細めている。
「吉永、あいつの腕…取れた腕の所を見てくれ」
上本が指を差した。
「お、おう」
吉永もそこを凝視した。
……んん?!
何か…
あれ?
ウネウネ…じゃないな…にゅるりにゅるりが正しい表現か……はは…何言ってんだ? 俺…
3人は声を揃えて叫んだ。
「んぎゃぁぁぁぁああああああああああああああああ!!!!」
前書きでのおかしな点とは、レールガンやグレネードで壁を壊せば逃げれるのでは?というものでした。
取り敢えず今回はレールガンの方を解消しました。
グレネードについては逐次書いて行きたいと思います。
感想、評価等していただければ有難いです。
是非よろしくお願いします。