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狂室  作者: みづ きづみ
ハジマリノ編
4/37

3時限目 会話

 「と、取り合えず今までの事を整理しようぜ」

「ああ」

翔と杉山の2人は今、1階にあるPTAルームに来ていた。

 ここは、多目的ホールの隅にある部屋で、普通の教室の1/2ぐらいの大きさしか無い。

とにかく目に付きにくいので、話し合う場としてここを選んだ。

「俺達は、4つのキーワード、つまりペンダントをもう1つのチームより先に手に入れる。そして、それがこれだ。さっき生徒玄関で見付けた」

杉山はポケットからひし形の青いペンダントを取り出した。

その中心部には『西』と書かれている。

「うーん、西ねぇ……」

翔は西というワードについて当てはまる物が無いか考えたが、特に何も思い付かなかった。

「何も思い付かないか?」

杉山が聞いてくる。

「ああ。これだ! っていうのは無いな」

「そうか。じゃあ次。翔、携帯電話持ってっか?」

「うん。ここに…」

翔は尻のポケットからメタリックな外装の携帯電話を出した。

ストラップも何も付いていない地味な風貌だ。

「それで警察に電話してくれ」

「あ! そうか…忘れてた」

何故初めからその手段を思い付かなかったのだろうか。

翔は携帯電話を開いた。

そして、通話ボタンを押し……

「え?」

「どうした」

翔は杉山に携帯電話の画面を見せた。

「圏外…。は? 何でだ?」

「あの誘拐犯達が妨害電波みたいな物を出してるのかもな。犯人達はかなり財力を持っているのかもしれない。ところで、杉山の携帯電話は?」

「あ、ああ。すまん。教室に置いてきちまった」

そう言って杉山は頭をボリボリと掻いた。

「しかし、電話は繋がらないし、罠はあるし…。犯人達は俺達にこのゲームをクリアさせる気が無いんじゃねーかな」

「どういうことだ?」

杉山が首を横に捻った。

「あいつのルール説明に、ペンダントを全部集めたら助かるのかっていう言葉が無かっただろ?」

「確かにな」

杉山はあの時のやり取りを思い出していた。

確かに、ここから出してくれるのかどうかについては一言も語られていない。

「あのよ、相手チームが他のペンダントを持ってたら殺して奪わないと駄目かな」

杉山が手でペンダントを弄びながら言った。

「んー、どうだろうな。奪う時に殺すというルールは無かったからな。ていうか、ルールが曖昧なんだよなぁ。判断はこっちに任せる気かな」

ゲームの参加者に判断を全て任せてくれるなら、間違い無く殺さない方法をとる。

出来るだけ…………いや、どの道ペンダントを集められ無かった方のチームは全員死ぬから……。

「杉山、俺は相手チームを殺すつもりで行く。負けたら自動的に死ぬんだ。殺しても殺さなくても同じことだ」

「おいおい、翔! 正気か? それマジで言ってんのか?!」

「ああ。正気じゃなきゃこんなこと言えない。俺はマジだ」

「でもお前、あっちには桜田が…」

「…いいんだ! 仕方が無いんだ。生きる為には…殺るしかないんだよ……」

そう言う翔の目からは、大粒の涙が溢れていた。

それから杉山は少し考えた後、「分かった。そんなら俺もだ」と力強く言った。

「よし、行こう。そして、絶対生き残るんだ!」

2人はPTAルームを出た。


現在時刻 七時三十五分 

ゲーム開始から約一時間三十分

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