34時限目 デジャヴ
『お前達はテストに合格した、これより強制転換する。』
「…………?え?何て?」
『まあ、無理もない。何故ならこの俺さえも忘れていたからな。いいか、お前達はこのグラフィックワールドで選抜テストを受けていた。』
「選抜……?」
『ああ。俺はその教官だった。この世界へ記憶を消してやってきたのだ。小木に殺されたことで記憶が戻った。』
「ち、ちょっと待て!話が全然読めない!」小木はあせあせとしている。
『ともかく、テスト合格おめでとう。君達にはこれより直ぐに三次試験を行って貰う。覚悟は良いな?よし。』
「三次?……………何の?」
『敬語を使え。』
「三次って何すか?」小木が聞きなおす。
だがまだ納得がいかないようだ。自分にはこれまでの記憶、このゲームが始まるまでの記憶がある………………いや、あれ?………………………無い?あれ?記憶が……ゲーム以前の記憶…………………え…………じゃあ俺は一体……一体何者なんだ?
『気付いたか?ゲーム以前の記憶が無かろう。』
「おい、翔!ふざけんなよ!試験て何だ?!目ぇ覚ませよ!」大野田は必死に自分の知る翔を取り戻させ、この現実から逃げようとしていた。
『…………馬鹿が。だから言っただろ。これは試験だと。目なら覚めている。なら、お前の本当の名前を教えてやろうか?お前の名は[試験番号7805425番f-jo562]だ。お前は大野田でもなんでも無い。ただの軍の道具なんだ。』
「軍……?お、俺は軍の人間なのか?!」
翔は鼻でふんと笑う。
『人間ではない。唯の道具だと言っただろう。ああ、これは比喩でも何でもない。事実だ。お前は研究開発班によって造られたアンドロイドだ。現在この日本はアメリカ、ロシアとの国交問題で戦争中だ。そして、領土問題により韓国との戦争も行っている。今、日本は危機だ。そんな中、研究開発班はお前達アンドロイドという最強兵器を造った!体は合成ナノファイバーで覆われ、探索能力、戦闘能力はプロの軍人のそれを超えた!しかも貴様らは大量生産可能なのだ!これは願ってもないチャンスなのだ!』
「じ……………じゃあ、じゃあ何ですぐ起用しない?!今すぐにでも戦場に出せば良いじゃないか!」
一瞬の沈黙………翔は何か悩む様な仕草を見せた。
『いや、そういうわけにはいかない。……今の年号を知ってるか?今は2360年!アンドロイドに人工知能を着けることはもう安易なのだよ!だが、その人工知能も、戦場では役に立たなかった。アンドロイド共は戦場で恐怖して漏らしやがった。戦闘放棄だ!その戦いは俺達の完敗に終わった。そこで研究開発班の奴らは人工知能に学習させることを考えた。兎に角恐怖の底に陥れ、いざ戦場に出た時に何も恐れるものが無いようにな。でも、やはり人工知能なりの個人差が出てきた。だから今度は繰り上がり式の試験で生き残りゲームをさせる様になった。お前達、可笑しいと思わなかったのか?何であんなに殺し合いが行われているのに、誰一人、警察も動かなかったことに対して…。それに、都合良く学校が改装していました………それなのに仕事をする人間が居なかったのは何でだ?これがゲームだからだ!!第一のゲームでは、恐怖と同時に銃を撃つことを覚えさせる。第二のゲームでは小隊での協力、戦闘を覚えさせる。何故今回の死神サンだけ生きた人間か……それは生きた人間でも殺せるように教育する為だ。これで……理解出来たか?』
「あ………」ああ………………「あああ……………」ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!………………………………………………………………………………………………………………………………
◇◇◇◇◇
『さ………し……』
……………何だ…………………
『さと………』
声?………うるさい……………
『さとし!智!智!』誰……………だ………こいつは………………あ………かあさ………「母さん!」
「智!」
「お兄ちゃん!」
ああ…………愛佳……………ここは………病院?俺は………誰だ?…………………
「大野田君!良く、よく意識を取り戻したね!」………「あんた誰?」
「こら智!この方はあなたの主治医の斎藤先生よ。」母さんは涙を眼に浮かべながら俺を軽く小突いた。妹の愛佳は母さんに抱き付いてわんわん泣いている。あれ、父さんは何処だろう………仕事かな。…………ところで俺は誰だ?
「………お母さん、智君はどうやら家族以外の記憶を失くしてしまっているようです。」俺の主治医という人間が母さんにそう告げた。記憶が無いのか?
「智君……お父さんのことは覚えているかね?」
「あ…はい。………母さん……俺、どうなったんだ?」
「あんた………学校の前で交通事故に遇ってね……3か月くらい意識不明だったのよ?」
「………そうだったのか……。」俺は頭の中のもやもやした感覚を覚まさせようとしたが、どうにもならない。これは記憶がないおかげらしい。家族以外何も思い出せないなんて…………これじゃまるでゲームみたいだ……………ん?ゲーム?…………いや、何も思い出せない、気のせいか。
「でも、本当に良かったわ……智……………あ、そうそう、あなた、彼女いるのよ?」
「え?彼女?」
「ほら、これ写真…………何か思い出すことない?」俺はこの美人の写真を見つつ、何かを巡りながら思いだそうとするが、何も浮かばない。どころか、更にもやもやは深くなっていく。
「こいつ………名前は?」
「えーと、そう!桜田さん。桜田優奈ちゃんよ!」
「……………知らねぇな………」
「お母さん……私はこれで……そろそろ智君の報告書を書かないといけないので。」
「あ……はい。ありがとうございました。」母さんは深々と頭を下げ、俺にも下げるよう促す。俺も仕方なく浅い礼をした。
「おい、愛佳、くっつくな!」愛佳は相変わらずわんわん泣きながら俺にしがみついてくる。
「智、売店行くけど、何か欲しいものはない?確か、食べ物は駄目だけど…飲み物なら良いって先生言ってたわ。」
「あ、んーまあ何でも良いよ。てきとーに何か買ってきて。」
「はいはい。愛佳は?」
「あたしこーらね!こーら!」
「あんまり炭酸飲料ばっかりじゃいけませんよ。」
「分かってるもんね!」愛佳はどうやらすねてしまったらしい。
「愛佳、今何歳だっけ?」
「ん。」愛佳は指で四を作った。
「そっか。」俺はにっこりと微笑む。
数分後、父さんが母さんと一緒に来た。
「智!智!よかった!」父さんは男らしい分厚い手で俺の頭をくしゃくしゃと掻く。
「うん。俺、生きてたよ。」
俺は母さんの買ってきたブラックの缶コーヒーの開け口を開けた。ぷしっと小気味良い音と共に開け口は簡単に開いた。どうやら俺はブラックのコーヒーが好きだったらしい。随分と背伸びしたやつだったんだな…とそう感じた。愛佳は機嫌を直して俺の横でにこにことコーラという飲み物を飲み、目の前では両親が俺の傷や、記憶のことについて話し合っている。
俺は幸せ者だったのか、と痛感した。
しばらく家族の余韻に浸っていると、突如として部屋に大きな音が鳴り響いた。
『ジリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリ』……………………この音、どこかで………「何かしら?」
「知子、もしかしたら火事か何かで避難かもしれん。」知子とは母さんの名前だ。
「ええ。」母さんは俺を背中から抱き起こした。
「いてて。」
「ごめん。少し我慢しなさい。」俺の体は硬直しているらしく、腰が曲がると同時に痛みが電流の様に流れた。
「…………あれ?可笑しいな…」
父さんが病室のドアの取っ手を引くが、びくともしない。
「あなた…鍵掛けた?」
「いや?……それにしても、緊急なら院内放送が流れてもいいはずだが…遅いな。」
鍵が………開かない?この光景………何処かで………これももしかしたら記憶の断片なのかもしれない……
『ガガッ!』スピーカーから何か音がした。父さん母さんがそのスピーカーを仰ぎ見る。愛佳はまだ異変に気付いておらず、コーラをせっせと飲んでいる。
『……………アー、アー、。マイクノテスト……テスト……テスト……』
「こんな緊急事態にマイクのテストだと?!ふざけてるぞ……」父さんがありえない、という表情をした。
『エー、ドウモ、院内ノ皆様。私ガ今回ノゲーム主任、支配人ヲサセテイタダクコトニナリマス。』
「……………」父さん母さんは絶句している…俺も驚きで声が出ない…………しかし、この光景……………こんな異常な光景なのに……何処かで見たことがある……スピーカーからの声を聴き、恐怖する…………何だ………これは…………少し…もやもやが晴れた。
『デハ、コレヨリ、ゲームノ説明ヲシマスネ。………』
スピーカーからの声が聴こえるが、俺はそれどころではない………何かが鮮明に……記憶が頭の中から……頭の底から混み上がってくるような……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………
「……………こんな、こんなことって………」
『ナオ、室内ノ人間ガ残リ一人ニナルマデ、ロックハ解除サレマセン。』
「そ…………そんな………これは何だ!ふざけるな!!くそがぁああ!」父親が…………壁をガンガンと叩いている。
「智…………。」「…………智。」………………………混み上がって来るような………………………………………………………………………………………………「…………………お前ら、誰だ。」
俺は、目の前にいる、ガキ、おっさん、ばばぁに向かって言った。
-狂室-
完
どうも、ユウダイです!
完結しました!
自分的にはいい感じに締め括れたのでは無いかと思っております!
詳しい感想等は活動報告に描きたいと思います。
それでは、次の作品で………あ、次の作品についても活動報告のほうに掲載したいと思います。
では~




