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狂室  作者: みづ きづみ
オワリノ編
30/37

27時限目 上昇

今回の罰は違う方向でいきました。

◇◇◇◇◇


二〇〇五年 十月二十四日 午後五時四十五分



 石田、魚島は小木を捜索していた。

今居るのは三階渡り廊下。

この階には大した教室は無い。技術室や、音楽室等の副教室がある。

「石田……この階に居ると思うか?」

魚島が口を開いた。不安だという証拠だ。

「分からない。でも、探すしかねーだろ」

石田は力強く答える。

「でもよ、ここは副教室ばっかりだ」

魚島はキョロキョロと辺りを見回した。

「…………それ関係無いだろ。………魚島、落ち着け。不安なのは分かるが、焦ると判断ミスを引き起こす。怖がるな」

「う、うるせぇ! 怖がってねぇ! ……不安でもねぇぞ」

魚島怒鳴った。

その声は筒型の廊下を揺らした。

二人は、鍵の開いていた軽音楽部の部室に入った。

鍵が開いているのは、この部屋に誰かが立ち寄った、もしくは滞在しているという証拠だ。

部室にはギターやドラム、ピアノ等が置かれている。

床には音楽CDが散乱していた。

「意外に汚いな、軽音楽部って。男子が多いのか?」

石田が眉間をひそめた。

「女子でもこんなもんだ」

軽音楽部だった魚島が言う。

「魚島って軽音楽やってたのか?」

「ああ。少しな。ドラムをやってたんだが、面白くないから運動部に入った」

「へぇ! そうだったのか!」

石田が驚いた顔をした。

「そんなに驚くことないだろ」

「だって経歴が凄い複雑じゃないか。誰でも驚く」

確かに、文化部から運動部への移行はあまり無いことかもしれない。逆はあるかもしれないが。

軽音楽部室では何も収穫はなく、次に二階を探すことになった。

しかし、二人は忘れていた。

”死神サン”が存在していることを。


二人が階段の段差に差し掛かった時。後ろからあの音が聴こえてきた。

コツ………コツ……

二人の背中を冷たいものが走る。

小木に気をとられ、忘れていた。

絶望の現況。

二人は走り出した。

我先にと、前へ進んだ。

だが、その判断は間違いだった。

”死神サン”は前方からやってきた。

「うわあああああああ!!!」

石田は階段の踊り場で脚を縺れさせて転けた。

目の前に”死神サン”が立ちはだかっている。

あの足音は、反響して聴こえていたのだ。

「魚島! ………魚島?!」

石田は魚島に助けを求めるが、返事が無い。

魚島は”死神サン”を視認した瞬間に逃げ出したのだ。

「………くそ!」

石田はこれからの恐怖を思い浮かべ、絶望した。

今までの罰。生き残れば解放というルールだが、全て生き残れるような軽いものではない。致死率は100%だろう。

石田は諦めた。

抵抗してもう逃げきれるわけがない。

腹を括ることにした。

「ほら。さっさと捕獲しろ」

石田は”死神サン”言い放った。

”死神サン”は『ククッ』と笑うと、石田を担ぎ上げた。



◇◇◇◇◇


 石田は何故か闘技場の様な場所にいた。

どうやら地下に作ったらしい。

薄暗いが、照明によって闇が消える。

地面は砂地だ。そして一丁、ショットガンが置かれている。

石田は言われなくとも察した。

闘い。

何も変化の無いゲームに飽きたのだろう。

そこへ、用意しておいた闘技の罰を与える。

「ははっ。笑えねぇ」

石田はショットガンを拾った。

今は何も来ていないが、急に敵が現れることもある。

用意周到に行くべきだろう。

「どこからでも来い」

石田はもう緊張による汗を掻いている。

ショットガンをリロードさせ、引き金に指をセットしておく。


五分が経過した。

何も起きない。


更に五分。

何も無い。


時間が止まった様にも思える…がそんなことはなく、腕時計は刻々と秒を刻んでいる。

六時十五分。

ここへ来て二十分が経った。


何も起きない。何も無い。

今回の罰はこれだけだろうか。

もしかして、向こうで何かあったのか。

いや、そんな確率の低いことはそうそう起きない。



石田が異変に気付いたのはここへ来て四十分が経った頃だった。

やけに自分が大きく見える。

数分前まで自分の隣にあった闘技場の模様が今は足元近い。

まるで体はそのままに背だけが伸びている様だ。

「………? 何? 何だこれ」

石田はいきなり気付いた異変に戸惑う。

自分が急に成長しているのだ。

驚かない方が可笑しい。

石田は自分の体をあちこち触ってみるが特に変わった、いや変わっている様には見えない。

上を見上げてみるが、闇に包まれていて何も見えない。

その闇も、こう見ると夜空の様だ。

ただ、星が無いのが気掛かりだ。


石田は星が好きだった。父が天体観測が趣味で、石田も一緒に行い、その内に影響されたのだ。

石田はふたご座が好きだった。

兄弟がいないので、いつも憧れていた


石田は異変に何も打つ手が無く、そして理解も出来ないので、仕方なくその場に座り込んだ。

「はぁ。何なんだよ、ったく。俺だけこんな意味の分からないことばっかで。ていうか罰って何だよ! 俺達が何か悪いことしたか?!」

石田は急に沸き上がったぶつけようの無い怒りを拳に込めて、地面を殴った。

強すぎたのか、拳からは赤い血がどろりと流れてきた。


それから二十分が経過した。

そこで石田はようやく異変の正体に気付いた。

「………………ま……………まさ………まさか………嘘…………だろ? う………おえええ!」

異変の正体に気付いた石田は、堪らず嘔吐した。

上昇…………している。

上昇上昇死上昇上昇死上昇上昇死上昇上昇死上昇上昇死上昇上昇死上昇上昇死上昇上昇死上昇上昇死上昇上昇死上昇上昇死上昇上昇死上昇上昇死上昇上昇死

上昇………………………………………


この闘技場は上昇している。

いや、闘技場の地面が上昇しているのだ。

天井に向かって。

既に闘技場の入り口は埋もれた。

もう出られない。

窓らしき物は見当たらないし、ここは地下だ。

出られたとしても、地上に戻れるということはほぼない。

今、天井と地面の隙間は100m程。

毎秒、毎分、毎時何m上昇しているのかは分からないが、上昇するスピードは速い。

犯人達は飽きてなんかいなかった。

ただ純粋に死を見たかったのだ。

ショットガンは闘いの罰だと思わせる為のフェイクだ。

今もぐんぐんと上昇しているのだろう。

石田はまた吐き気に襲われた。

この先の死を考えると、頭で何も考えることが出来ない。

真っ白だ。

だが、体は恐怖に反応し嘔吐を繰り返す。

体は正直、とはこのことだ。

「ぐ……くそ! 畜生! 死にたくない!」

石田は髪をぐしゃぐしゃと掻き回す。

その瞳には涙がある。

現在天井と地面の幅、約50m。

天井がそろそろ見えてくる位置だ。

石田は不意に天井を見た。

何も無い。真っ白な天井。まるで自分の頭の中だ。

星空など無かった。

あるのは死のみ。

あと25m。

もう直ぐに天井がある。

石田は今までの人生がフラッシュバックするのを感じた。

勝手にこれまでの人生が頭の中に展開される。

母親。父親。父親との天体観測。

友人。部活の風景。その全てが石田を作ってきた。

これまでの人生が、ある。だから今ここに自分が存在する。

それも今日で終わる。

「ああ……後悔ばっかりの人生だったなぁ。母さんとも喧嘩が最後だし。ヒロシには漫画返して無いな。ああああああああ!!! 死にたくないいいいいいいい!!! あああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!」

どれだけ叫んでも、上昇が止まることは無かった。

そろそろ立っているのが辛くなった。

2mを切っている。

石田は地面に寝そべった。

そうしなければ、腰が折れる。

更に上昇は続く。

あと150cm。

母さん………父さん………みんな…………ありがとう。

あと、40cm。

ついに天井が体に触れた。

物凄い重圧が体にのしかかる。

「ううううう!!」

横にうずくまって寝ていたので、肩が天井の圧を受けて悲鳴を上げている。

そして…………………………。

バキッ。

「くああああああ!!」

肩の骨が折れた。

途端に体が肩の分だけ細くなる。

だが、すぐに天井が追い付く。

折れた部分を天井が更に押す。

あまりの圧力に、体が無理矢理仰向けになった。

石田は肩を見た。

位置がずれている。脱臼と同時に折れたのだろう。

痛みがありすぎて感覚が麻痺している。

次に天井が鼻を押し付け始めた。

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