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狂室  作者: みづ きづみ
オワリノ編
28/37

25時限目 蝶

 「どうだった?」

西川が希崎が戻ってきたのを見て話し掛けた。

「ううん。知らないって」

「そう。………あのさ、希崎さん。何でそんなに嬉しそうなの?」

西川が不思議そうに希崎の顔を見ていた。

「え?! あわわわ! そんなふうに見えてた?!」

希崎は直ぐ様自分の顔を隠す。

「……ま、いいけど」

西川はどうでもいいという風にその場から立ち上がった。

「何処行くの?」

希崎が西川を眼で追う。

「武器になるものは無いかなーって思って」

西川は次々とロッカーや、配置されている机を探り始めた。

希崎もつられて探し始めた。



十数分後。

二人は武器を見付けた。

……といっても大した物ではない。

ハサミや、コンパス等の筆記用具だ。

まだ無いよりはましだが。


ガラガラ

ドアの開く音。

「あっ!」

希崎が一番に反応する。

先程の今津との会話を思い出す。

くるりと振り返り、ドアの入り口をみた。もとい、駆け寄った。

そして氷つく。希崎の背中を冷たいものが伝う。

そこにいたのは今津ではなく、”死神サン”だったのだ。

「き、きゃああああ!!」

希崎はすくに逃げ出した。事務室内に。

「西川さん! あいつが!」

希崎はおぞましいというような顔をしている。

”死神サン”に何か怖い思い入れがあるのだろう。いや、参加者は皆そうだが。

「希崎さん! こっち!」

西川はロッカールームに招いた。

すぐに”死神サン”も入って来る。

「ああ!」

希崎は”死神サン”に捕まりかけた。

西川はぐんぐんと教室内を逃げる。

”死神サン”もそのあとを追う。

鼬ごっこだ。

数分間逃げていると、額から玉状の汗が幾つも吹き出てきた。

息も切れている。

”死神サン”は辛そうな素振りも見せず、何処か遊んでいるように思えた。

「あっ!」

ついに希崎が力尽き、転けた。

西川が振り返る。

「助けて! 西川さん!」

倒れた希崎は必死に西川に助けを求める。

「………………………」

西川は希崎から顔を反らし、再び走りだした。

「西川さん! 私達は友達じゃなかったの?!」

いつだってそうだ。

友人同士の騙し合い。嘘。

希崎の周りにはいつもそれが付きまとった。

しかし、西川と出会い、本当の友達というのを手に入れたと……思った………思っていた。

でも………


「! うっ!」

希崎は”死神サン”に肩掴まれ、そのまま担がれた。

でも……やっぱり……みんな………みんな本当の意味で、友達になんて慣れない………

ゴン!ゴン!ゴン!

考えていた希崎は、鈍い音に我に還った。

途端に視界がぐらっと倒れた。

背中が地面を打つ。

衝撃。

「がはっ!」

希崎は肺から大量の空気が抜けるのを感じた。

どうやら地面に落ちたらしい。

痛みを堪えながら眼を開けると、そこには手に消火器を持つ西川の姿があった。

「……に、西川さん?! 逃げたんじゃ?!」

「逃げるわけないでしょ! 私達は友達よ?!」

希崎の曇った心がぱぁっと晴れた。

本当の友達は……居た。

辛い時、助けてくれるような友人が。

「希崎さん、早く逃げっ……!! ううっ!」

希崎に何かを伝えようとしたが、西川は”死神サン”に首を掴まれ、言葉を発することを中断させられた。

「西川さん!」

希崎は急に眼から涙が溢れるのを感じた。

まだ死ぬとは決まってないのに。

「き……崎……さん。逃げ…………て……はや……く」

西川はその体をロッカーに叩きつけられた。

相当怒っているようだ。

「ひっ!」

”死神サン”は西川を押し付けながら希崎を見た。

威嚇している。

脳が、指令を出している。

危険……。

希崎は一目散に、そして西川を思いながら事務室から逃げた。

ドアを思いきり開け、見向きもせずに走りだす。

涙が止まらなかった。

初めての親友に、こんな形で出会うことになるなんて……

逃避する中、耳に叫び声が聞こえた。

「希崎! 希崎! おい!大丈夫か?! 何があった!」

声を出していたのは今津だった。

希崎を引き留める。

「今津君…………」

希崎はおもむろに今津に抱き付いた。

「おい! どうしたんだ?! 一体?! まさか、あいつか?! ……西川?!」

希崎は今津の胸の中でうんうんと頷いた。

「くそ!」

実は今津は、小木に作戦をやらされていた。小木の推測によると、空腹で電話を掛けてくる筈だ、という。そして、上手く場所を聞き出し、殺す。

これが今回の作戦だった。

だが、失敗に終わった。

抱き付かれては殺せない。

今津は希崎等どうでも良かったが、父性本能が働いてしまった。

「よし、兎に角、俺達の所に来い」

今津は電話を操作しながら言った。

希崎は今津の胸から離れて、「うん。」と一言だけ返した。

「ちょっと先進んどいて」

今津は作戦の失敗と、今から連れて行く、という報告をした。

二人は小木達の待つ場所に戻った。

「全く君は」

小木ははぁそ溜め息を付いて、それからソファに座った。

ここは応接室だ。

生徒会役員のみが立ち入りを許可されている。

「座って」

今津が希崎に椅子を差し出す。

「ありがと」と呟き、ちょこんと座った。

「……で、西川が捕まったんだな?」

小木は考える様に手に顎を乗せた。

「…うん。変わりに西川さんが身代わりになってくれて……」

「そんなこと聞いてない! 黙れ!」

「ひゃい! 御免なさい!」

希崎は縮こまった。

こう見ると可愛いものだ。

今津はふとそう感じた。

「あと……ちっ! あと、相手は二人。そいつは仲間と認める」

小木が今津に言う。

「ああ。どうも」

今津はいらっとしながら答える。

「こんな女、殺せば早い。だが、今回はそういうの無しだ」

小木がうつむいて言う。

………?……まさか?!こいつ?!希崎が好きなのか?!嘘だろ…………

今津は唖然とする。

「じゃあ小木、次の動きは?」

大野田が小木に問う。

「ああ。取り敢えず、電話を観よう。西川の罰だ」

小木はにやりと笑う。

既にタッチパネルは動画画面に変わっている。


『ここ……何処……』

西川は透明ガラスを触る。

この部屋は、何故か辺り一面に花が植えてある。


「花? 次は何だ……」

今津はごくりと生唾を飲んだ。

全員に緊張が走る。


『え? 何?』


「あ。これ」

「………まさか次の罰は……蝶」


罰部屋の中に大きな蒼い羽を持つ蝶が現れた。

どこかモルフォ蝶に似ている。

だが、その羽の模様は……


「おい、あの蝶、羽の模様ドクロだぞ」


蝶がボックスの中に入ってきた。

そして希崎の肌に止まる。

次に二匹、三匹、と何羽も入ってくる。


『あっ! 嫌!』

ついにボックスの中に入りきらない程の蝶が部屋にいる。

あふれた蝶は、周りの花畑に止まる。

そして花畑も満帆になってしまった。

「西川……何も変化ねーぞ」と今津。

「ああ」大野田が答える。

『お……終わった?』

西川は少し明るさを取り戻す。

姿は分かりにくいが、蝶の奥に、胸を撫で下ろす西川の姿が見えた。

「良かったな! 希崎! 西川、助かったぞ!」

大野田が、希崎に声を掛ける。

希崎は嬉しそうに笑った。

「良かった!」

だが、その考えは甘かった。

西川は罰部屋から一行に解放されない。

その時、数千羽の蝶が一斉に羽ばたいた。

たった一回だけ。

それだけで、画面は紫色の粉で埋め尽くされた。

『ぎゃあああ!』

その中から西川の悲鳴が聴こえる。

「何?!」

数秒間、画面は燐粉で見えなかった。



そして……「ああ?! なんだ?! これは?!」

画面内には、ミイラ化した西川がいた。いや、ミイラどころか、骨が丸見えだ。まるで急に肉だけが溶けてしまった様だ。

画面をよく見ると、蝶が何かごそごそと動いている。

ボックスの地面、花畑。

蝶は食んでいた。美味しそうに………

粉々に……燐粉と化した西川の肉を………


現在時刻 午後五時半

ゲーム開始から約四時間半

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