14時限目 西口高等学校
◇◇◇◇◇
二〇〇五年 十月二十四日 午前八時二十分
体育館で告げられた次の目的地、西口高校。
それは浅川高校から1時間程歩いた距離にある。
勉強面はいまいちだが、スポーツは殆どの部活が県大会に出場している。
翔はその西口高校の校門前に居た。
平日にも関わらず、門は開いていない。今日は休みの日なのだろうか?
「ちっ。何で開いてねーんだ? あのスピーカー野郎」
翔は自分が騙されたと思い、苛々しながら門の前に立ち尽くした。
桜田の顔がフラッシュバックする。
途端に泣きそうになった。
だが、人物の急な登場により涙を流せなかった。
それは男だった。
背は高めだが、顔立ちは幼い。
「えっと、君も狂室の参加者?」
男は門の向こうから話し掛けてきた。
狂室?何だそれは。
「何を言ってる? 俺は、ここに行けと言われた。狂室というのは知らない」
「あっ、名称を知らないのか…。ええっと、君の体験したあのゲーム。って解る?」
「ああ」
「あれは狂室って言うんだ。恐らく君はその生き残り。違う?」
「……あれが狂室というのなら俺は……そうだ。生き残りだ」
「詳しいことは後で話す。兎に角中に…さあ」
男は校門を力一杯に引いた。
ぎぎぎぎと鈍い音がして、ゆっくりと門が開いた。
「こっちだ」
男はズンズンと歩いて行く。
翔もその後ろに続いた。
西口高校は思いの外広かった。
グランドや体育館等のスポーツ関係は充実しているだろうと思っていたが、それ以外にも、設備が整っていた。
翔と男は下駄箱に入り、更に二階へ上がった。
どうやら二年教室に向かっている様だ。場所は違えど二年四組には嫌な思い出しかない。
四組には入りたくない。
しかし、翔の願いは通らず、男は二年四組教室の前で足を止めた。
「ここだ」
男が翔に笑顔を向ける。だが、不自然だ。
笑顔なのだが、何か抜けている。
「どうしたの?」
男が不思議そうにこちらを見た。
そして直ぐに頷いた。
翔は教室に入るのを躊躇っていた。
「ははは。やっぱり狂室の参加者なんだね」
男は苦笑いしながら言った。
どう言うことだろうか。
そう考えながら、翔は思いきって二年四組の教室に入った。
視界が開けた。
中には6、7人の恐らく学生。
「! おっ! そいつも参加者か?!」
出口の一番手前に居た男が言った。
「ああ。てか、そんなもん吸ってると死ぬぞ」
横の男が手前の男に言う。
「良いんだよ。別に」
手前の男は煙草を吸っていた。
慣れた手付きで近くにあったゴミ箱に灰を落とす。
「あ、俺は今津準。よろしくな」
見掛けに寄らず、無邪気な笑顔だ。
「俺は稲川翔。こちらこそよろしく」
翔は手を差し出した。握手だ。
今津がそれに応えた。
「待て2人共。まだ全員揃ってない。挨拶は後回しだ。次、準が見張りだろ」
横の男が今津に言う。
今津は「ちぇっ」と呟くと教室を出て行った。
「稲川で8人。あと2人だ」
「何の話だ?」
翔は男の口から出るワードにずっと疑問を抱いていた。
「聞いてないのか?」
「ああ」
「じゃあ、あっちが面倒臭がった方のやつか」
「何?」
「まあ、稲川もこの雰囲気で分かると思うが、第一次ゲームで生き残った俺達は第二次ゲームを行わなければいけない」
「………そうか」
「予想してたんだな」
「ああ。薄々気付いていた」
「……誰を失った?」
「それを言わせるか?」
「悪い……」
そこで沈黙。
どうやら、俺は面倒事に巻き込まれたようだ。
数分後
9人目が教室に現れた。
そして次の案内の担当が行く。
9人目の参加者は女の子だった。
髪の毛を軽いカールにし、それを左右に別けていた。
つぶらな瞳が翔をも惹いた。
桜田と勝負したらどっちが可愛いだろう。
そんなことを思っていると最後の1人、10人目が来た。
男だ。
結局、男6人 女4人 の計10人になった。結局というか当たり前なのだが。
「みんな、自分の学校で『狂室』を行って来たと思う」
全員が集まると、翔を案内した男が教卓に立って話を始めた。
「みんな違う学校だから、みんながみんなを知らないと思う」
「いちいちややこしい話し方をするなぁ」と今津が言った。
確かに、と翔は思った。
「そこで1人ずつ自己紹介をしたいと思う。先ずは俺から。終わったら次々と自己紹介を進めてくれ。スピーカーの声の主から、午後一時から新たな指示を送ると言われた。皆、急いで軽めに頼む」
そうして男が自己紹介を始めようと口を開いた時、違う男から声が上がった。
「何でお前に指示を出したんだ? 今ここで全員に言えば済むじゃないか」
問い掛けたのは強面の男だ。
「ああ、奴はまだここに到着していない、もしくは声を出せる状況にない。俺はそう考えている。何故なら俺は自分の高校の廊下で先程のことを言うように指示された。恐らく指示を出すには何らかの準備が必要なんだと思う」
そういうと、強面の男は口を閉じた。
「じゃあ気を取り直して。自己紹介を始める。俺は……
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二〇〇五年 十月二十四日 午前十時二十分
ゲーム未開始




