12時限目 青
◇◇◇◇◇
二○○五年 十月二十三日 午後十時五十七分
ズガァアアン
体育館に高らかに響く銃声。
「はあ、はあ」
口から漏れる、切れた息。
翔と桜田は体育館で青”死神サン”と激しい戦いを繰り広げていた。
「桜田!」
「うん!」
2人で青”死神サン”を銃で狙った。
同時に銃声が響く。
風を斬る弾丸が猛スピードで青”死神サン”へ襲い掛かる。
だが。
「! くそ!」
やっぱりか!
青”死神サン”にはそれは全く通用しなかった。
飛んで来る弾丸を鎌で切り裂き、隙あらば目にも留まらぬ速さで鎌を振り、攻撃を仕掛けてくる。
翔と桜田は傷だらけだった。
そして弾丸が当たったとしてもまるで効いていない。もしかしたら効いているのかもしれないが、それを全く感じさせない。
「どうすればいいんだ」
翔は1人呟いた。
青”死神サン”が鎌を振るう。
避ける、撃つ。効かない。
この繰り返しが続いていた。
そして既にかなり体力は限界。
桜田が着いてこられているのが意外だった。
「稲川君!」
翔はその声に我に還る。
頭上を鎌が通り過ぎた。
今のは危ない。
鎌を空振りした青”死神サン”へ翔が拳を向ける。
だがそれは直ぐに手で受け流され、鎌の追撃を促す。
そこへ桜田のフォロー。
手をマグナムで狙い撃つ。
ドゴオォン
弾丸が青”死神サン”の手を貫いた。
血は出ない。だが、鎌の攻撃は免れた。
翔は殴ろうとしたとき、首に青”死神サン“の掛けているペンダントが目に入り魔が射したが、こいつを殺してからだ、と思い止まった。
拳を受け流され、前に大きく倒れる翔。
それを庇う様に立つ桜田。
翔も直ぐに立ち上がり、桜田の横に並ぶ。
青”死神サン”は貫かれた手をぶらぶらと振っている。
今回のは流石に効いたんだろうか。
「桜田、傷大丈夫か?」
翔はこの隙に桜田の顔や体を見た。
鎌による攻撃で服がびりびりだ。
「大丈夫。ありがとう」
桜田が優しく微笑んだ。
それを見て翔は顔を赤くし、うつむいた。
稲川君は…本当に私のことを…?
桜田は吉永の言った一言を思い出した。
『稲川もお前のこと好きだぜ?』
桜田も赤くなった。
並んだ両者がそっぽを向くという、少女漫画に出てきそうな光景が出来た。
しかし、床を擦る鉄の音で2人は目を覚ます。
何と場違いな事を思っていたのだろう。
「あ……」
翔は今の内に攻撃しておけば良かったと、後悔した。
「う…」
桜田も同じく。
『ふっ。お2人共、よく戦っている方だ』
スピーカーから声が流れて来た。
2人はシカトを決め込んで、青”死神サン”に意識を持っていく。
すると突然、青”死神サン”は此方に向かって走り出した。
「おいおい! 何だ?」
急な動きに戸惑う翔。
「あいつ! 私を狙ってる!」
青”死神サン”は確かに桜田の方向へ体を向けていた。
先程の弾丸が効いたのだろうか。
確信はないが、翔は僅かに勝機を感じ取った。
ぶううん!
振り下ろされる鎌。
身を引く桜田。
そして近距離射撃。
どしゅどしゅと肌を突き破る音が響いた。
だが、血は流れない。
「くそ! 桜田! アサルトライフルを撃つ! 退け!」
「っ!」
桜田はそこから離れた。
同時にアサルトライフルが連射される。
タタタタタタタタタタタタと軽い銃声。
弾丸は青”死神サン”に命中するが効果は無い様に見て取れた。
翔はリロードを行う。
その隙に桜田が青”死神サン”の手を踏み、そのままぐいっと足を捻る。
青”死神サン”手から鎌が外れた。
「くそ! 弾切れだ!」
翔はアサルトライフルを棄てた。
「こうなりゃ素手だ」
「? 稲川君! その背中の刀は何?」
「!! ああ! 忘れてた!」
翔は今まで全く使わなかった刀を鞘から引き抜いた。
体育館に溢れる月明かりが銀色の刃を照らす。
その輝きは見る者を魅了する。
持ってみるとズンと重たい。
刀など使ったことのない翔だが、覚悟を決めた。
「行くぞぉ!!」
青”死神サン”に向かって刀を向けた。
そのまま走り出した。
武器の無い青”死神サン”は一瞬戸惑ったが、結論は腕で受け止めることにした。
胸の前で二本の腕をクロスさせて自分の体を守る青”死神サン”だが、刀相手に守りきれる筈もなく、見事に腕を切り落とされた。
ずぶしゃあああと返り血が翔の顔面に……掛からなかった。
腕は落ちたが、血は出ない。
刀には糸を引いた体液が付着していた。
もう相手は鎌を振るえない。
完全に2人の勝ちだった。
どしゅっ。
「え……」
体育館に響いたのは桜田の声だった。
現在時刻 十一時十五分
ゲーム開始から約五時間十五分
あと1、2話でハジマリノ編完結




