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狂室  作者: みづ きづみ
ハジマリノ編
13/37

12時限目 青

◇◇◇◇◇


二○○五年 十月二十三日 午後十時五十七分


 ズガァアアン

体育館に高らかに響く銃声。


「はあ、はあ」

口から漏れる、切れた息。

翔と桜田は体育館で青”死神サン”と激しい戦いを繰り広げていた。


「桜田!」

「うん!」

2人で青”死神サン”を銃で狙った。

同時に銃声が響く。

風を斬る弾丸が猛スピードで青”死神サン”へ襲い掛かる。

だが。

「! くそ!」

やっぱりか!

青”死神サン”にはそれは全く通用しなかった。

飛んで来る弾丸を鎌で切り裂き、隙あらば目にも留まらぬ速さで鎌を振り、攻撃を仕掛けてくる。

翔と桜田は傷だらけだった。

そして弾丸が当たったとしてもまるで効いていない。もしかしたら効いているのかもしれないが、それを全く感じさせない。

「どうすればいいんだ」

翔は1人呟いた。

青”死神サン”が鎌を振るう。

避ける、撃つ。効かない。

この繰り返しが続いていた。

そして既にかなり体力は限界。

桜田が着いてこられているのが意外だった。

「稲川君!」

翔はその声に我に還る。

頭上を鎌が通り過ぎた。

今のは危ない。

鎌を空振りした青”死神サン”へ翔が拳を向ける。

だがそれは直ぐに手で受け流され、鎌の追撃を促す。

そこへ桜田のフォロー。

手をマグナムで狙い撃つ。

ドゴオォン

弾丸が青”死神サン”の手を貫いた。

血は出ない。だが、鎌の攻撃は免れた。

翔は殴ろうとしたとき、首に青”死神サン“の掛けているペンダントが目に入り魔が射したが、こいつを殺してからだ、と思い止まった。

拳を受け流され、前に大きく倒れる翔。

それを庇う様に立つ桜田。

翔も直ぐに立ち上がり、桜田の横に並ぶ。

青”死神サン”は貫かれた手をぶらぶらと振っている。

今回のは流石に効いたんだろうか。

「桜田、傷大丈夫か?」

翔はこの隙に桜田の顔や体を見た。

鎌による攻撃で服がびりびりだ。

「大丈夫。ありがとう」

桜田が優しく微笑んだ。

それを見て翔は顔を赤くし、うつむいた。

稲川君は…本当に私のことを…?

桜田は吉永の言った一言を思い出した。

『稲川もお前のこと好きだぜ?』

桜田も赤くなった。

並んだ両者がそっぽを向くという、少女漫画に出てきそうな光景が出来た。

しかし、床を擦る鉄の音で2人は目を覚ます。

何と場違いな事を思っていたのだろう。

「あ……」

翔は今の内に攻撃しておけば良かったと、後悔した。

「う…」

桜田も同じく。

『ふっ。お2人共、よく戦っている方だ』

スピーカーから声が流れて来た。

2人はシカトを決め込んで、青”死神サン”に意識を持っていく。

すると突然、青”死神サン”は此方に向かって走り出した。

「おいおい! 何だ?」

急な動きに戸惑う翔。

「あいつ! 私を狙ってる!」

青”死神サン”は確かに桜田の方向へ体を向けていた。

先程の弾丸が効いたのだろうか。

確信はないが、翔は僅かに勝機を感じ取った。

ぶううん!

振り下ろされる鎌。

身を引く桜田。

そして近距離射撃。

どしゅどしゅと肌を突き破る音が響いた。

だが、血は流れない。

「くそ! 桜田! アサルトライフルを撃つ! 退け!」

「っ!」

桜田はそこから離れた。

同時にアサルトライフルが連射される。

タタタタタタタタタタタタと軽い銃声。

弾丸は青”死神サン”に命中するが効果は無い様に見て取れた。

翔はリロードを行う。

その隙に桜田が青”死神サン”の手を踏み、そのままぐいっと足を捻る。

青”死神サン”手から鎌が外れた。

「くそ! 弾切れだ!」

翔はアサルトライフルを棄てた。

「こうなりゃ素手だ」

「? 稲川君! その背中の刀は何?」

「!! ああ! 忘れてた!」

翔は今まで全く使わなかった刀を鞘から引き抜いた。

体育館に溢れる月明かりが銀色の刃を照らす。

その輝きは見る者を魅了する。

持ってみるとズンと重たい。

刀など使ったことのない翔だが、覚悟を決めた。

「行くぞぉ!!」

青”死神サン”に向かって刀を向けた。

そのまま走り出した。


武器の無い青”死神サン”は一瞬戸惑ったが、結論は腕で受け止めることにした。

胸の前で二本の腕をクロスさせて自分の体を守る青”死神サン”だが、刀相手に守りきれる筈もなく、見事に腕を切り落とされた。

ずぶしゃあああと返り血が翔の顔面に……掛からなかった。

腕は落ちたが、血は出ない。

刀には糸を引いた体液が付着していた。

もう相手は鎌を振るえない。

完全に2人の勝ちだった。


どしゅっ。

「え……」

体育館に響いたのは桜田の声だった。


現在時刻 十一時十五分

ゲーム開始から約五時間十五分

あと1、2話でハジマリノ編完結

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