9時限目 チーム
記念すべき10話目です。
切りよく、10時限目にしたかったんですが、話の都合上無理でした。
二○○五年 十月二十三日 午後九時一分
翔は杉山と二手に別れ、もう一つのチームを探していた。
生徒玄関はそんなに広くないので直ぐに見付けられる筈だ。
「ど、何処にいる?」
翔は慎重に辺りを見回す。
「!」
居た…。
翔達の反対側に…コンクリートの柱に隠れていた。
2人だ。
やはり1人殺られている。
誰かは分からないが、失った人数は同じのようだ。
翔は相手チームを確認すると、元の場所に戻った。
そこには既に杉山がいる。
「翔」
「ああ。俺も確認した。相手はどうやら、でかい銃を持ってる」
「多分、TLだと思うよ?」
「は? タクティカルランチャーか?」
「うん。じゃあ、壁を……」
「翔! そのことは諦めたんじゃ無いのか? どの道壁を壊してもバレる。殺されるのがオチだ!」
「……そうだった」
そういう翔の背中を杉山はバシンと平手打ちした。
「翔。相手が桜田だからって油断するなよ!」
「うるせぇ。余計なお世話だよ」
翔は首を左右に傾ける。
こきこきとその首が鳴る。
「で、どうする。この緊迫した状況をよ」
「威嚇射撃をして、相手を撹乱…でその隙に食料を確保ってのは?」
「……まあ、それで良いか。てかお前先に食い物喰ったんだからあのパン俺に寄越せよ」
「嫌だね」
「何でだよ!」
「翔…忘れたか? 俺は浅川の鬼だぞ」
答えになってないと思いつつも、仕方ないと諦めた。
「ふー。よし! 行くか!」
「おうよ!」
2人は同時に駆け出した。
◇◇◇◇◇
その頃。
「よ、吉永君」
「何だ?!」
吉永は少々苛ついていた。
仕掛けたばかりの罠を直ぐに壊さなければいけなかったからだ。
「どうするの? ……その、食料は…」
「俺に案がある」
「何?」
桜田は不安そうに聞く。
「まあ、安心しろ。案って言っても威嚇射撃で突っ込むだけなんだがな。でもこの案は却下。多分相手チームも同じ事をやって来る筈だ。だから俺達はその去り際を狙う」
「? どういうこと?」
「奴等が食料を採る。で持ち場に戻る。その時に俺達が素早く食料を採る。
てかそれくらい理解しろ」
「ご、御免」
桜田は今頭の中がこんがらがっていた。青い装束の”死神サン”はパンを4つしか持っていない。
つまり、相手チームも1人死んでいる…いや殺されたのだ。
それがもしかしたら稲川君かもしれない、桜田はそれが不安だった。
だから作戦を聴いていなかった。
「桜田、銃はリロードしてあるか?」
「う、うん」
桜田は自分の銃を見る。
弾の有無を示すレバーは一番上、つまり満タンを示していた。
「そろそろ動くかもしれない。気を付けろ、桜田」
「うん!」
ズガァアアン!
ズドンズドン!
タタタタタタタタタタタタタタタ
虚空に大きな銃声が響く。
相手チームが動き始めた。
吉永は柱から相手を窺う。
銃を撃っていたのは稲川と杉山だった。
「藤田は殺られたか……」
そう漏らすと、
「吉永君! 誰が攻めて来てるの?」
「攻めては来てないけど、稲川と杉山が銃を撃っていた」
「!!! よ、良かった~」
桜田はにっこりと笑顔を作り、安堵の息をついた。
「よし! 行くぞ!」
「うん」
桜田と吉永が青”死神サン”に近寄った。
「!!! 吉永君!!」
桜田が吉永の腕を引いた。
吉永の鼻を弾丸が掠める。
「くそ! そう簡単にはいかないか」
吉永は桜田を柱の陰まで連れていく。
「桜田! 俺があいつらの気を引く! その間に食料を!」
「分かった!」
やっぱり、稲川君は私達を殺すつもりで来ているのだろうか。
桜田は表情を曇らせた。
「桜田、どうした?」
「……ん、ううん。何でもない」
桜田はうつ向きながら首を振った。
「そうか…行くぞ! ………う、うおおおおお!!」
柱の陰を飛び出し、吉永がTLを撃ち放つ。
至る所で爆発が巻き起こり、校内のゴム製の床を焼き払う。
爆発は激しく、相手チームはどうやら反撃出来ない様だった。
吉永は柱の陰に隠れる桜田に合図を送る。
同時に桜田が柱から飛び出し、青”死神サン”の盆からパンとペットボトルを奪う様に取り、また違う近くの柱の陰に身を潜めた。
吉永はそれを確認し、その柱の陰へ移動した。
「よくやった! 桜田!」
「吉永君のおかげだよ」
えへへへと桜田が笑う。
「とにかく、図書室に戻るか」
「そうだね。罠を仕掛け直さなきゃね」
2人は柱から柱を渡り、図書室までの道を目指した。
移動途中に撃ってくる様なことは無かったので、相手チームも移動したのだろう。
2人は辺りを警戒しながら、前へ進んだ。
◇◇◇◇◇
二○○五年 十月二十三日 午後九時三十五分
2人の作戦は失敗した。
相手の出てくる隙を狙うというのは向こうのチームも考えていたのかもしれない。
それに、TLは予想以上に強大だった。
爆風のおかげで狙いが定まらず、撃てなかった。
「ちぃ! 大失敗だ!」
「しっ! 静かにしろ。また奴等は巡回を始めてんだ。」
叫ぶ杉山を翔が宥める。
「とにかく、次だ。2つめのペンダント。それを見付けないとな。あ、そういえば、殺られていたのは上本だったな……あいつ、すげー良い奴だったのに……」
杉山は悲しそうな顔を見せた。
「……俺も、あいつに助けられてばっかで、あいつに勝ってることなんて一つも無かったよな。勉強以外は」
「ああ。そうだったな。あいつ勉強だけは苦手だったよなぁ」
上本がいたのが遥か昔の様に感じる。
「でも、杉山。くよくよばっかしてても始まんねぇ。気持ち、切り替えて行こうぜ」
「おう。その通りだ」
杉山は残りのパンを口に放り込んだ。
あれが現れたのはそれから数秒後のことだった。
ドッシャアア
「……………」
「…? ………???」
一瞬、何かが階段から落ちて来た。
「ああん?」
翔は思わずすっとんきょな声を出してしまった。
「……ええーと、今の……何?」
目の前を通り過ぎた<それ>は女子便所と男子便所の間のスペースからガサゴソと出てきた。
「いいっ??!!!」
「ぇぇええ??!!」
それの正体は蠍だった。
硬質な殻に覆われた外骨格を自慢げに輝かせている。
6本の脚。前の2本は赤黒く汚れたハサミになっている。
そして長い尻尾。
マガマガシく、そして見るものを魅了するかのようだ。
多くの特徴を持ったそれの最も印象的なのは背中の数々の顔だ。
「……おおお、おいい! なな、何だ……こ、これ……」
杉山は手のレールガンを強く握った。
全身に汗がぶわっと溢れ出す。
「……え、いや、えと、も、モンスター?」
「み、見りゃ分かんだろ! これはサソリ型のモンスターか何かだ!」
「……え、何でこんなとこいんの?」
「し……しらん! とにかく…………逃げろぉぉおおおおおお!!!」
杉山の言葉に翔は今思い出したかの様に回れ右して走りだした。
廊下を走りながら杉山を見ると、かなりきつそうだ。
「杉山! 大丈夫か!」
「え、む…無理!」
「おい! …銃が多いんだよ! 一個捨てろ! ……いや、待て! あいつをそのレールガンで撃つのは?!」
「…!! あああ! そうだよ! 怖くて本能的に逃げたけど、これあんじゃん!」
翔はレールガンを見つめた。
杉山は後ろを振り返った。
撃てるくらいの距離はある。
「翔!」
「撃つのか?!」
「ああ!」
「充電は?!」
「満タン!!」
「よしぃ!」
2人は廊下のど真ん中で立ち止まった。
同時にサソリも止まる。
サソリと2人の間には15m程の距離がある。
レールガンの射程圏内だ。
「撃つぞ!」
翔は少し不安だった。
あの硬そうな殻を電磁波で突き破れるのか。
それに、これが効かなかったら杉山の体力が持たないだろう。
体型的な面が足を引っ張っている。
翔はそう思った。
そして今気付いたが、背中に顔が大量に埋め込まれている。
その中には藤田と上本の顔もあった。
どれも若い、自分達と同じくらいの年代の様に見えたのは気のせいだろうか?
耳に甲高い音が響いた。
「うっ!」
前を見ると杉山がレールガンを撃ったところだった。
「……よ、よし!」
杉山が小さく叫んだ。
あのサソリは見るも無惨にぐちゃぐちゃになった。
「ぃよおし!」
杉山は驚いた顔をしている翔の頭をくしゃくしゃと揉んだ。
だが、まだ翔は驚いた顔をしている。
「…翔? どうし……」
杉山は翔の目線の先を見た途端凍り付いた。
ぐちょ……にち……きちゅ……
何と、サソリは体を再生させていた。
ばらばらになった体を元に戻すのでは無く、何かを中心に新しく体が出来ている様に見えた。
「な、何なんだよ……こいつ……」
現在時刻 九時五十五分
ゲーム開始から約四時間
えー、未だにサソリの細かい設定が決まってません。
どうしよ。
感想や評価を頂けたら有難いです。




