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うん、この話  作者: うんこマン
本編
2/11

ハゲ散らかしたパンツ一丁のオッサンが犬のうんこ投げてきた

 ハゲ散らかしたパンツ一丁のオッサンが犬のうんこを投げてきた。


 お前らは俺が何を言ってるのかわからねーと思うだろうがこれは現実だ。

 俺は今、目の前でおこっている出来事を冷静に言葉にしているだけだ。

 あぁ、精神鑑定の必要は無い。別に錯乱して妙な幻覚を見てるだとかそんなんじゃないんだ。

 本当にハゲ散らかしたパンツ一丁のオッサンが犬のうんこを投げているんだ。



 俺の名は池面太郎。池面・太郎ではなく池・面太郎だ。

 高学歴高収入高身長と3Kでありルックスはイケメン、足も長く運動神経も抜群と人生の勝ち組街道を突っ走る男よ。

 きさまら底辺のクズとは全てが違う。


 そんな俺が何でこんな目に会っているのだろうか?



 ちなみに俺はこのオッサンに対して一切の面識は無い。

 俺は頭もスーパー賢いのだ。一度会った相手の顔は基本忘れない。

 忘れたいことがあっても忘れることが出来ない自分の優秀な脳が憎くなることもあるが。


 まぁそれは置いといてだ。

 つまりこのオッサンはイケメンな俺様に何某かの怨み骨髄で襲い掛かっているわけではないのだろうと思う。


 じゃあ一体何なのだと言いたいが辻斬りならぬ辻うんことでも言ったところか。

 そういうのは俺のいない所でやってくれよ……


「ちぃっ」


 オッサンの手から投げられたうんこは脆く崩れ去り天然の散弾となり点ではなく面の攻撃として俺に襲い掛かる。

 普通なら勝負ありでしょうよ。

 普通ならね。


 でもこれは池面太郎の話でしょ!


 と、言うわけで俺は華麗に回避する。

 俺はイケメンなのでやろうと思えば銃の引き金を引かれた後に動いて弾を避けることができるくらいの運動神経があるのだ。

 たとえ散弾と言えど人の手によって投擲されるうんこ如き見切れぬわけが無い。


 俺の動体視力や運動神経はうんこを見切り回避するためのものじゃねえ! と思えば空しくなるがな。



 辻うんこのオッサンのうんこを避ける俺だがただ避けているだけではない。

 ちゃんとやつから間合いを取り少しでも遠くへと逃げようとしている。

 戦って負けるわけが無いがぶっちゃけ関わりたくないんだもん。


 だがこのおっさんも然る者、投げながら近づいてきて無茶なフォームでも確実に動かなければ俺に当たるうんこを投げてきよる。

 超うぜえ。


「よっ」

「ふんっ!」

「ほっ」

「フンッ!」

「はっ」

(フン)ッ!」


 オッサンがフンフン言いながら投げるうんこは俺に当たらない。

 オッサンは必死だがそこらのハゲのオッサンとイケメンである俺との間にある隔たりは必死になった程度で破れるような薄っぺらい壁ではないのさ。

 その上こっちも必死よ。

 うんこ当たるとやだしね。



 しかし妙だ。

 このオッサンはパンツ一丁でハゲだ。

 犬のうんこなんて隠す場所は無い。

 なのになぜこうも投げ続けられるのだ?

 一度に投げる量自体は意外と少ないのだろうがよ……そういぶかしんでいたら俺は気付いてしまった。

 オッサンは、毎度毎度うんこを投げるたびにパンツから、うんこを補給しているのだ。


 自前のクソではない犬のクソを。


 それに気付いた瞬間全身に鳥肌が立った。

 キモ過ぎるだろこのオッサン。マジヤベエ。


 恐怖と震えで体が鈍る。

 だがしかしイケメンである俺は何とか回避を続け逃避行を続ける。

 いくらパンツの中にうんこを詰め込んでいてもそれは所詮は有限。

 いずれは無くなるのだ。

 うんこが切れた時にオッサンに背を向けて走って逃げればいいのだ。

 俺は全力疾走すれば100メートルを11秒切れるくらい速いんだ、イケメンなので。


 そう、唐突に始まったこの戦いだがエンディングは一つしかない。

 イケメンの俺は身傷に綺麗な身を保ち逃げ切るというグッドエンディング。


 そう思っていた時期が俺にもありました。


 たとえ結果が見えたレースでも何某かのイレギュラーがあれば結果はありえないものになることもある。

 そう、今回がそれに該当する。


「は、はわわ……」


 近所のガキだろうか。

 偶然脇道から出てきたガキがうんこを投げまくるハゲのオッサンの存在を見て腰を抜かしてしまっている。



 オッサンからもガキの姿が見えてしまった。

 オッサンはガキを見てにやりと笑いやがる。


 そうか、うんこを投げても一向に当たらぬイケメンより投げれば当たるのがわかりきっているガキの方がいい獲物に見えたのだろうよ。


「ふんっ!」


 オッサンは今まで以上に大きく振りかぶってメジャーリーガーのようなダイナミックなスイングで腕を振りぬきうんこを投げた。

 腰を抜かして動けないガキに向かって。



 俺の名は池面太郎。イケメンである。

 イケメンである俺は行動も常にイケメンでなければならない。


 そう、例えば子供が車に轢かれそうになれば自分の身も省みずに押し飛ばして助けてやるように。

 俺の場合はそんなシチュエーションでもその上で生き延びることも難しくなかったのだが。


 だが今回は違った。

 オッサンの投げたうんこは放射状に広がりながら飛んでいる。

 たしょう子供を押し飛ばしたところで破片は当たってしまうのだ。


「ちくしょう!」


 イケメンな我が身が憎い。

 俺は庇うようにガキの前に躍り出てオッサンに背を向けた。


 直後、背中に何かが当たる不快な感触。

 後頭部とか腕とかにもちょっと当たってる気がするのがまた不快。



「ひゃっはー! 動かねぇ的はボーナスステージだぜえッ!」


 オッサンは笑いながら動かない俺にうんこを投げつけてくるがもうブチ切れた。

 おっさんがうんこを投げるのを無視して俺は未だ腰を抜かしているガキを脇道に押し込み立ち上がった。


「ふんっ! ふんっ!」


 オッサンがうんこを投げまくり俺はそれを避ける。

 そこだけ言えばさっきまでと変わりは無いがそこ以外で違いは有る。

 俺はオッサンに向かって走りながらうんこを避けているのだ。


 オッサンは面食らいながらもうんこを投げようとするがビビッて腰が引けたおっさんのうんこはさっきまでの制度もスピードも無い。

 ハエでも避けれるわ。


 そして


「噴破ッ!」


 俺はオッサンを一撃でKOした。

 汚らわしいので触れたくも無かったがそれ以上に怒りが大きかったのだ。


 このオッサンが何者なのかとか死ぬほどどうでも良くなるほど虚しい気分だ。

 だがまぁイケメンらしく己の身を省みずに子供を救った俺はカッコイイ。

 そう思って自分を慰めようじゃないか。


「あ……」


 すると、事が終わったのを察したのかさっきのガキが路地裏から顔を出す。

 平日の夕方にあんなオッサンとエンカウントしたら確実にトラウマだろうなぁ……そうは思うが俺のほうが酷い目にあってるんだ。このガキもこのくらいは自力で乗り越えてもらってもバチは当たるまい。


「フッ、安心しろ小僧。悪は去った」

「お、おっちゃん……」



 もう30だし別にいいんだがイケメンヒーローにおっちゃんはねーだろ、とは思うが俺はそのまま何も言わずにガキに背を向けて去るのであっ


「うわー! おっちゃん背中にうんこ付いてるー! うんこマンやー! 逃げろー!」


 背中に聞こえる子供走り去る足音を聞き、俺は泣いた。

 ちくし(くそ)ょう!

この話はフィクションだけどパンツ一丁でうんこを投げてくるハゲ散らかしたオッサンは実在するそうです。

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