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PANDORA  作者: 日下祈京
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 パンドラの箱、と言うものは良く知られているものであろう。

一説では、不幸や災いなど、所謂負のイメージのものが詰まっている、空けてはいけないと言われている箱。一度空けてしまえば、中に詰まっていた負があふれ出し、世界を混沌の渦に飲み込んでしまう。しかし、全ての負が流れ出ていってしまったわけではなかった。箱の底に一つだけ残ったもの、それは「未来を全て解ってしまう災い」。その一つが残っていたために、人々は希望を捨てずに暮らしていけるのだという。

また、一説では箱の中に負のイメージのものが詰まっていたことに変わりは無い。が、最後に一つ残ったものは災いではなく希望が一つ残り、それによって人々は救われたのだと言う。

 そんなパンドラの箱はギリシア神話の中にしか存在しない。いや、もしかしたら実際に存在するかもしれないが、その真偽は定かではない。

 しかし、それと似たようなものは、この世に存在した。

 「Anti-Pandora’s Box」。反パンドラの箱。

 二〇六六年六月二日。某国某所にて、日本の調査隊が不思議な箱を発見。その四日後の六月六日、調査隊は日本にその箱を持ち帰り、多くの人々が見守る中、或る人物が慎重にその箱を開けた。

 その直後、中からは虹色の光が溢れ出した。それに驚いた調査員は慌てて蓋を閉めた。

 それからというものの、世界は豹変した。

 世界各地で起こっていた紛争は、嘘のように無血解決し、飢餓や飢饉といったものは数週間のうちにこの世の何処からも無縁のものとなった。

 身近なところでは、公害問題が矢継ぎ早に解決され、次々とエコロジックな技術が開発されていった。

 また、もっと身近なところで、少々おかしな方面でもその効果は発揮される。

 ある朝起きたら、自分好みの女の子が寝ていたり、遅刻しそうになってパンを咥えて走っていたら曲がり角で自分好みの男の子と衝突、実は同じクラスの転校生で席もお隣だったり、会社への出勤途中良いお天気なのでふと空を見上げたら女の子が降ってきて「御主人様」と呼ばれたりなど、不思議な出会いが頻繁に起こったりする。

 反パンドラの箱。

 それは中に希望がぎっしりと詰まっていた。人々を幸せにした。世界は明るくなった。

 だが、その奥底に隠された一握の「闇」を、一握のものでありながらも恐ろしく強力な「闇」を、まだ誰も知らない。

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