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【夢幻の大陸詩】 Blue Bird & Black BloomⅠ ~勇の章  作者: 水城杏楠
十二章  誰かの代わりに
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 竜巻の一件は、目撃者も多かったことから、三日もしないうちに噂が噂を呼び、ついにはカストゥール王国との戦が始まるとまで言われるようになっていた。

 それとともに排魔という団体の動きも活発化したのだが、魔道使いを排除するという彼らの主張が、民の間でも正当化されつつあった。

 カディールたちにとっては、まったく嬉しくない事態である。

「それで、お話というのは?」

 夕食後にユティアとリトルセが湯浴みに向かってから、カディールとシオンはカリスに呼び止められていた。

 第一王子は相変わらず王城にときおりしか姿を見せないらしいが、今に始まったことではないせいか、最近のカリスは多忙から解放されて屋敷にいることも多くなった。

 民の噂と悪化する治安問題のほうがより深刻で、カリスはその責を負う立場にないおかげで暇になったとも言える。

「ええ、七日前の竜巻の事件以降、奇妙なことが続いているそうなのです。念のため、気をつけたほうがよいかと」

 カリスは穏やかな笑みを曇らせて、歯切れ悪く言葉を続けた。

「なんでも……首を落とされて殺される魔道使いが多い、とか」

「何っ?」

 カディールは差し出されていた酒の杯を、あやうく取り落とすところだった。

 そんな話はまだどの酒場でも噂になっていない。国によって秘密裏に処理されているのか、噂にならないほど裏の世界で動いていることなのか。

「街中での刃傷は、残念ながら今までもなかったとは言えません。しかし、最近はそういった同じ手口の死体が、この七日で十体も見つかっているとか」

「……全員が魔道使いなのですか?」

 いつになく厳しい表情をして、シオンが尋ねた。

「ええ、国の魔道使いがそれを確認しています。それもかなりの能力者たちらしいのです」

「じゃあ、排魔がやったんじゃねーの?」

 カディールが街を歩いていると、一日一度はどこかで排魔を名乗る人々が演説のようなものを行って人々の心を惑わしている。状況をたくみに利用した洗脳に近い。

「いえ、それが奇妙なのですけど、その十人はみな、サルナードの民ではないようなのです」

 所持品などからそれを推測できるが、なにより突然十人もが消えたというのに、誰も捜索願を国に訴えてこないというのは、たしかに奇妙なことだった。

「他国の魔道使いを、あえて狙ってるってことか」

 エヴァン王国は、北と西でいくつかの小国と接している。東は大国カストゥールで、南がエリシャ領だ。カストゥールからでなくとも、他国から旅人が流れてきてもおかしくない立地ではある。

「でもなんのために? 排魔はこれほど残酷なことは今までしていないのだから、別の一味が現れたと考えるほうが妥当でしょうね」

 シオンが即座に下した冷静な判断に、カリスもうなずいて同意した。

「いずれにしろ、気をつけてください。国は、まだその実態すら、特定できていないのです」

 サイロン家の屋敷にいれば、とりあえずは安全だと言える。この広さのわりに使用人が少なく、死角は多いのだが、カディールとシオンが常に警戒しており、めったなことは起こらない。

(それにいつも、エンディーンもいるしな)

 サルナードに到着するまでの十日以上の間、カディールは彼の剣技を間近に見ていた。

 相手の力量を見極めてそのぎりぎりのところで対峙するカディールは、一見すると荒削りに見え、本人が頓着しないせいで小さな怪我も多いのだが、エンディーンのそれは、余力を残しながらも正確な動きをし、その技量はカディールにけっして劣らない。

 落ちぶれた名家の使用人にしては、できすぎた腕だ。

(それにしても、竜巻に排魔に首切りか)

 今のところ、そのどれもユティアに直に接してきてはいない。

 しつこかったカストゥールからの追っ手も、サルナードでは不思議なほどの静寂に包まれていた。


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