無理難題
なんでだろう。
この世は不公平で非条理だ。
なんで、俺は姫川にビンタされてんだろう。
「いいかげんにしろ!コラァ!」
「うっさい!探したんだからね!何組の人かも知らないから全部のクラス回って・・・」
「しらねぇよ!そんなこと。約束した覚えもねぇよ」
「最低ッ!謝るなら許してやろうと思ったけど、やっぱダメだ。殴らせて」
「さんざん殴っただろうが!ざけんな!顔赤くなってんだろ!」
「それはあたしの顔見てるからでしょ?」
「お前どんだけ自意識過剰なの?普通に往復ビンタのせいに決まってんだろ?」
「はいはい。悪かったわね」
なんなんだコイツ・・・。早くなんとかしないと
「で、何の用だよ・・・」
「ん?あぁ、帰りながら話す」
「一緒に帰んねぇぞ?」
「なんで?」
「そのまんま返す。なんで?」
「アンタしかわかるわけないじゃん・・」
「なんで一緒に帰る必要があるのかってことを聞いたんだよ!気の毒そうな目で見るな!」
「さっき見た感じだとアンタ結構強いんでしょ?だったら使えるし・・・」
「厄介事か?」
「ちょっとだけ・・・ね」
「ざけんな。かかわるわけねぇだろ」
「アンタがいてくれればすっごく助かるの!」
「俺のメリットは?」
「は?」
「だからメリット・・・。その厄介事にかかわって俺にいいことがあんのか?」
「・・・。あたしのそばにいれる?」
「よし、疑問文にしたから許してやろう。言いきったらぶん殴ってるとこだ」
「あのね。妹が・・・」
「いきなり話し始めたよ・・・。まぁいいけど・・・」
「妹がおばさんにとられそうなの」
「どういう意味?」
「お父さんとお母さんが離婚するんだけど、2人とも親権を受け取りたくないって言っておばさんに預けることになったの・・・」
「重いな・・・。つか、ひどい親だな・・・」
「それはどうでもいいの!あんな人たち勝手に消えてくれて構わない。でも、雛はまだ5歳・・。お母さんとお父さんとあたしまでいなくなったら悲しむと思うの・・・」
「お前はおばさんの家に厄介になるんじゃないのか?」
「あたしは1人暮らしってことになってる・・・。できるならあたしが引き取って雛を育てたいけど・・・。おばさんが許してくれないの・・・」
「別におばさんは悪くないだろ。1人でも引き取るってのは大変なんだぞ?」
引き取ってもらっている俺はそのことをよく知っている
「そんなことわかってる!でもおばさん引っ越すことになっってるの。もしかしたら、もう一生会えなくなるかも知れない・・・」
「そうか・・・」
「・・・・・」
「でもなんで力が必要なんだ?どっちかっつったら説得が得意な奴に頼んだほうがいいと思うんだが・・・」
「最終的にはこっそり連れてくことになると思うから、追手が来たときに追い返せる力が必要でしょ?」
「誘拐決定!?もっと穏便に済ませようとか思わないわけ?」
「そんな時間ないの。明明後日には引っ越す予定だから・・・」
「それにしたって・・・」
「じゃあアンタが説得してくれるの?」
「うっ、それは・・・」
できる、できないで言えばできないだろう・・・。
だが、断ろうとすると胸が張り裂けそうになる・・・。
結果なんてどうでもいい・・・。とにかくやってみろ!心?が叫んでる。
俺にはその子をほっとくことができなくなっていた・・・。
昔の自分と重ねてしまったのだろうか?
「とりあえず、一緒に帰ってくれる?あたしだって初対面の人にこんなこと相談するなんておかしいと思ってる。けど、時間がないの!」
「はぁ、わかったよ・・・」
「ありがとう!」
うっ、ちくしょう・・・。可愛いんだよ・・・。
「じゃあ、行こう?」
「あぁ」
まわりのやつらの視線がいつもより強くないか?コイツもしかして朱音より人気あるのか?
「なんでそんなにまわりを気にしてるの?」
「いや、別に・・・」
「そう?まぁ、モブからの視線なんて気持ちいいものじゃないけど気にしなければいないのと同じだよ?」
あぁ気づいてたんだ・・・。つか、そんな風に周りを見てたんだな・・・。
「で、どの道から帰る?」
「雛の幼稚園が向こうの通りだから、ここをまっすぐね」
「雛ちゃんと会わせるのか?」
「うん、だい・・じょうぶ・・・だよね?ロリコンとかじゃないよね?」
「ざけんな」
「よかった!あ、けど雛の前でそんな話し方したらぶち殺すから」
「・・・雛ちゃんのために気をつける」
お前なんかにぶち殺されるとは思わないし・・・
「うん」
「姫川です。雛を迎えに来ました」
「あら、今日はおねえちゃんなのね。おかえりなさい。雛ちゃん?お姉ちゃんが迎えに来てくれたわよ!」
「おねぇちゃん!」
あら、可愛い。姫川をそのままミニマム化した感じだ。目元が少し垂れてるんだが、それがなかなか和ませてくれる。姫川の目は少しきつい印象があるからな。
「おかえり、雛」
「だれぇ?」
「お姉ちゃんの友達。相談に乗ってくれるの」
「そぉなんだぁ!こんにちわ!姫川 雛です!よろしくおねがいします!」
しっかりしてるなぁ。別に姫川がいなくても大丈夫なんじゃないだろうか?
「こんにちは。岸本 勇樹です。よろしくね」
「ゆ、ゆ、ゆうちゃん?」
「え?あ、それでいいよ」
「ゆうちゃん!」
おお、元気だな。可愛い!
「あ!パパ!」
え?お父さん?姫川と雛のこと捨てたんじゃ・・・。
!!!!!!!
ブチブチィ、
雛のおやじ・・・こいつが?
なんでてめぇがこの子たちの父親やってんだよ・・・。
岸本 雄大よぉ!