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『オウエンお断りマン』 哀愁物語 ~断られる男の七転八起~ 蓬莱帝国の迷物議員~  作者: 如月妙美


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第三章:お断りからの解放 ~逆転の発想と新たな使命~

 オウエンお断りマン山田拒絶太郎の人生が劇的に変わったのは、ある雨の日の出来事がきっかけだった。

 その日、拒絶太郎は議員会館の食堂で一人寂しく昼食を取っていた。隣のテーブルでは同僚議員たちが応援演説のスケジュールについて楽しそうに話している。彼らの会話が否応なく耳に入ってくる。

「来週は3件の応援演説があるよ」 「僕は5件だな。忙しすぎて困っちゃうよ」 「羨ましい悩みですね」

 拒絶太郎はため息をついた。今月の応援演説予定はゼロ。それどころか、来月も再来月も空欄のままだった。

 そんな時、食堂の隅で一人の若い男性が泣いているのに気づいた。年齢は30代前半、スーツを着ているが、どこか疲れ切った様子だった。

 拒絶太郎は迷ったが、放っておけずに声をかけた。「大丈夫ですか?」

 男性は顔を上げた。「あ...すみません。お見苦しいところを...私、来月の市議選に出馬予定の新田希望と申します」

 新田希望。拒絶太郎はその名前に覚えがあった。確か2週間前に応援演説を依頼してきて、1週間前に「急遽、選挙戦略を変更することになりました」という理由で断られた相手だった。

「新田さん...もしかして、僕に応援を頼んできた?」

 希望は驚いた。「え?山田拒絶太郎先生ですか?」

「そうです。お断りマンです」拒絶太郎は自虐的に笑った。

 希望は再び涙ぐんだ。「先生...実は、私はもう誰からも応援してもらえません。先生にもお断りしてしまいましたが、実は他の議員の方々からも全て断られているんです」

「なぜですか?」

 希望は重い口を開いた。「私は3年前に父の借金を背負いました。父が経営していた小さな会社が倒産して、連帯保証人だった私に2000万円の借金が残ったんです。それが知れ渡って、『借金まみれの候補者』として敬遠されているんです」

 拒絶太郎は胸が痛んだ。「でも、それはあなたの責任じゃない」

「そうなんです!でも誰も信じてくれません。父を見捨てることはできませんでした。でも、そのために政治家としての道が閉ざされようとしています」

 希望の話を聞いていると、拒絶太郎は不思議な共感を覚えた。理由は違うが、誰からも必要とされない境遇は同じだった。

「新田さん、もしよろしければ...」拒絶太郎は震える声で言った。「僕があなたを応援させてください。僕は『お断りされる男』ですが、あなたは『お断りする側の人』に見捨てられている。だったら、僕たちは似たもの同士じゃないですか」

 希望は目を見開いた。「でも、先生が応援すると、私の評判がさらに下がるかもしれません...」

「それでも構いません」拒絶太郎は力強く答えた。「僕は初めて、心から応援したい人に出会いました」

 この出会いから、拒絶太郎の人生が変わり始めた。

 希望の応援演説を準備する中で、拒絶太郎は自分の経験を活かした新しいアプローチを発見した。それは「お断りされる側の気持ち」を代弁することだった。

 演説当日、会場にはそれほど多くの人は集まらなかった。しかし、拒絶太郎は今までで最も心のこもった演説をした。

「皆さん、私は山田拒絶太郎です。『オウエンお断りマン』として有名な議員です」

 会場がざわめいた。しかし拒絶太郎は続けた。

「私は何度も応援演説をお断りされました。理由は様々でしたが、要するに『この人に応援されると困る』ということでした。つまり、私は政治の世界で『不要な存在』とみなされていたのです」

 聴衆は静かに聞き入っていた。

「でも、新田希望さんと出会って気づきました。社会には、私のように『必要とされない』と感じている人が大勢いるということを。新田さんは父親の借金を背負って苦しんでいます。でも、それは家族を愛する気持ちからの行動でした」

 拒絶太郎の声に熱がこもった。

「私たちの社会は、完璧な人だけを歓迎します。でも、完璧な人なんてこの世に存在するでしょうか?誰もが何らかの事情を抱え、誰もが時には助けを必要とします。新田さんは、そんな普通の人々の代表として立候補しているのです」

 この演説は、会場にいた聴衆の心を動かした。特に、経済的な困難を抱える人々、家族の問題で悩む人々にとって、拒絶太郎の言葉は深く響いた。

 選挙結果は、関係者全員が驚くものだった。新田希望は見事当選したのだ。得票率は決して高くなかったが、確実な勝利だった。

 しかし、この成功以上に重要だったのは、拒絶太郎に起こった変化だった。

 選挙後、拒絶太郎のもとに意外な依頼が舞い込み始めた。

「先生、私も誰からも応援してもらえません。お願いします」 「私たちのような『はみ出し者』を応援してください」 「先生こそ、私たちの代弁者です」

 拒絶太郎は気づいた。自分は「応援される候補者」を応援するのではなく、「応援されない候補者」を応援する専門家になれるのではないかと。

 秘書の恵美はこの現象を「拒絶太郎革命」と呼んだ。「先生は、政治の世界で新しいニッチを発見されたんです。『アウトサイダーの応援者』という役割です」

 拒絶太郎は新しい看板を事務所に掲げた。「社会から見放された候補者専門応援議員」

 この看板を見て、多くの人が笑った。しかし、笑えない状況にある候補者たちにとって、これは希望の光だった。

 半年後、拒絶太郎の応援した候補者の当選率は70%を超えていた。しかも、彼らは皆、従来の政治家とは違うタイプの人々だった。シングルマザー、元犯罪者、借金を抱えた起業家、障害を持つ活動家...

 拒絶太郎は今や「オウエンお断りマン」ではなく、「アウトサイダーの守護天使」と呼ばれるようになっていた。

 ある日、恵美が言った。「先生、結局のところ、お断りされ続けたからこそ、本当の使命を見つけることができたんですね」

 拒絶太郎は微笑んだ。「そうかもしれない。お断りされることも、人生には必要だったんだな」

 彼の事務所には今日も、社会の片隅で頑張る人々からの応援依頼が届く。拒絶太郎は一つ一つの依頼に真剣に向き合い、その人だけの特別な応援演説を考える。

「オウエンお断りマン」の物語は、実は「新たな始まり」の物語だったのである。


※この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件等とは一切関係ありません。

※コメントやレビューは、みなさまに平等にお返しができないため、OFFといたします(ご了承ください)。

【動画】 YouTubeにて公開しています。


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