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40歳童貞の大魔法使い様を異世界(現代日本)から召喚したけど、魔法陣の座標が間違ってて行方不明になっちゃった。  作者: 橋元 宏平


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第8話 クリスマス休戦

 今日も今日とて、魔王軍陸軍大将と中将と少将は、会議室で話し合いをしていた。

 中将が一枚の書類を机の上に置き、大将の前に滑らせる。


「ちょっと、これ見て。国王軍が、一時休戦を求めてきたんだけど」

「え? なんで?」

「なんか、紛争地域(ふんそうちいき)視察(しさつ)をしたいんですって」

「視察ねぇ……。なんか、裏事情がありそうだな」


 書類に目を通して大将は顔をしかめると、少将にも書類を見せた。

 少将は首を(かし)げて、中将に問う。


諜報部隊(ちょうほうぶたい)の報告は?」

魔王軍(うち)の諜報部隊によれば、国王軍はまた異世界人を召喚したらしいわ。それも、3人」

「マジで? 国王軍、異世界人召喚しすぎじゃね?」

「大魔法使いが見つからなかったから、代わりの人間を呼んだみたいね」

「一時休戦も、たぶんそれが理由か?」

「でしょうね」


 中将は少しおどけた口調で、大将に決断を(ゆだ)ねる。


「それで、どうすんのよ? 魔王軍陸軍大将殿」

「まずは、魔王様に報告だ」

「そうね。報連相(ほうれんそう)(報告・連絡・相談)は大事」


 中将は、会議室備え付けの電話から魔王に連絡する。


「もしもし、魔王様。今、お時間よろしいでしょうか? ……はい、はい、そうですよね。奥様とお嬢様とお過ごしの貴重なお時間に、誠に申し訳ございません。すぐ済ませますので、ええ、はい」


 通話を開始してから、2分くらいで電話は切れた。

 受話器を置いた中将に、大将が(たず)ねる。


「で? 魔王様はなんて?」

「家族で過ごすクリスマスの準備で手が離せないから、こっちに任せるそうよ」 

「マジか」


 魔王様は妻子持ちで、4歳のひとり娘がいる。

 可愛い盛りで、魔王様もデロデロ甘々に溺愛(できあい)しまくっている。

 最愛の妻と娘との大事な時間を取られたくなくて、こちらへ丸投げしたらしい。

 それを聞いた大将は、ニカッと明るく笑う。


「じゃあ、俺らで好きにやろうぜ」

「好きにって、どうすんだよ?」


 少将が聞くと、大将は大きく頷く。


「とりま、批准(ひじゅん)すっか」


 戦争を全面的休戦するには、批准(ひじゅん)が必要となる。

 批准とは国家間において、条約や協定を確認し、同意する。

 国の代表者が署名した条約を国へ持ち帰って、国の偉い人たちと相談する。

 偉い人たちが話し合って、GOサインを出したら、その条約は発動する。


 小難しい説明をしたけど、早い話が「国の偉い人同士が、約束を守ること」である。


 なお、部分的休戦(一部地域だけ戦争を一時中断する)の場合、批准は必要ない。

 両軍の代表者同士が「疲れちゃったから、ちょっと休憩しない?」「いいよ」と認め合えば、その場ですぐに休戦出来る。


 大将の言葉を聞いて、少将が詰め寄る。


「いいのかよ? 何(たくら)んでやがんのか分かんねぇし、罠かもしんねぇぞ」

「かもしんないけど、冬休み欲しくない?」

「欲しい」


 ず~っと戦争ばっかりしていると、国全体が戦争疲れしてしまう。

 国王軍も魔王軍も、心身ともに疲れ果てて弱っている。

 一時休戦して、兵士たちや国民たちをゆっくりと休ませてあげたい。


 っていうか、ぶっちゃけ休みが欲しい。

 家族や友人や恋人と、クリスマスを楽しみたい。

 クリスマスパーティーしたいし、ケーキも食べたいし、ごちそうだって食べたい。

 

「休戦開始日時と期間は?」

「それはこのあと、国王軍と話し合いをして決める。ただし休戦期間中も、監視体制は強化しろ」

「そんなん、当たり前よ」


 ★

 

 こうして、国王軍と魔王軍で話し合いの場が(もう)けられることになった。

 どちらも大将と中将と少将が出席し、互いに腹の探り合いのような緊迫した空気が流れた。


 それはそれとして、冬休みが欲しいのはどちらも同じ。

 話し合いの結果、12月24日~1月7日までゆっくり休もうということになった。

 ちょうどクリスマスということで、「クリスマス休戦」と呼ばれた。

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