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40歳童貞の大魔法使い様を異世界(現代日本)から召喚したけど、魔法陣の座標が間違ってて行方不明になっちゃった。  作者: 橋元 宏平


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第7話 ある意味勇者様の希望

area(エリア) Δ(デルタ)へ連れて行ってくれ」

「かしこまりました。では、魔王軍に一時休戦を申し出て参ります」


 勇者様たちが、みずから大魔法使い様の捜索へ行きたいと言い出した。

 しかし召喚したばかりの勇者様たちまで、死なせる訳にはいかない。


 勇者様たちまで殺したとなれば、国王軍のイメージダウンに繋がる。

 国王軍は、わりと世間体(せけんてい)を気にする。

 やっぱり、軍は信用第一。


 安全に紛争(ふんそう)地域へ行くには、休戦する必要がある。

 休戦するには、まずは魔王軍と話し合いをなければならない。

 話し合いには、お互いの予定を合わせなければならない。

 話し合いが出来るのは数時間後か、はたまた数日か。

 魔王軍との予定が合わなければ、月単位なんてこともある。


 ☆


 魔法使いたちは、魔王軍と話し合いの申請をする為にその場から立ち去った。

 入れ替わりで、執事らしき初老の男が現れた。

 

「初めまして、勇者様がた。お待ちいただく間、応接室へご案内致します」

「あ、はい」


 執事の後をついて行くと、勇者様たちは広々とした応接室へ通される。

 テーブルの上には、ティーセットが用意されていた。

 来客用のカップに良い匂いがするお茶が注がれ、中央の大皿には美味しそうな焼き菓子が山盛りにされていた。


「どうぞ、こちらでごゆるりとお過ごし下さい。ご用命(ようめい)(さい)には呼び鈴を鳴らして下されば、すぐに参ります」

「どうも、ありがとうございます」


 執事はテーブルの上に呼び鈴を置くと、一礼(いちれい)して立ち去った。

 執事がいなくなると、3人は椅子に腰掛けて深々とため息を吐いた。

 3人だけになって、ようやく緊張を()くことが出来た。


 いきなり異世界に召喚されて、親友の死を知らされた。

 見知らぬ環境と衝撃的な展開の連続に、ずっと気を張り詰めていた。

 ほんの数十分で、どっと疲れてしまった。


 これからもずっと、4人でバカやれるものだと信じて疑わなかった。

 伊藤が死ぬなんて、信じられなかった。

 いや、信じたくなかった。


 気が(ゆる)むと同時に涙腺(るいせん)も緩んで、涙があふれ出した。

 鈴木が泣き出すと、高橋と田中も釣られて涙を流し始める。


「うぅ……、伊藤ぉ……っ」

「鈴木、泣くな。てめぇが泣くと、オレまで泣きたくなるだろうが……」

「アイツがこんなに早く死ぬなんて、思わなかったな……」


 3人は泣きながら肩を寄せ合い、伊藤の死を(いた)んだ。

 思いっきり泣いて落ち着いた頃、高橋が涙を(ぬぐ)いながら口を開く。


「そういえばさ、召喚って死んだヤツにも可能なのかな?」

「呼び出せたとしても、ゾンビかガイコツになってそうだけど」

「この世界に、|necromancerネクロマンサー死霊(しりょう)使い)っていんのか?」

「伊藤を(よみがえ)らせるつもりか?」

「蘇らせるんなら、聖職者じゃね?」

「とりあえず、さっきのヤツに聞いてみるか」


 田中が呼び鈴を振って、チリンチリンと鳴らす。

 まもなく、扉の前で(ひか)えていた執事が入って来る。


「はい。お呼びでしょうか?」

「執事さんは、この世界に詳しい人?」

「私の知り得る範囲であれば、お答えいたします」

「魔法の知識は?」

「何をお聞きになりたいかによりますが、ある程度なら」


 この執事は有能そうだと判断して、鈴木が質問する。


「召喚魔法って、この世界にいる人間も呼び出せんのか?」

「はい、可能でございます」

「だったら召喚に失敗しても、もう一回召喚し直せば良かったんじゃね?」

「はい、左様(さよう)にございます」

「だったら、なんでそうしなかったんだよ?」


 田中が問い詰めると、執事は淡々と答える。


「出来なかったのではないでしょうか」

「というと?」

「対象が死んでいた、あるいは召喚を(はば)まれた場合、召喚は不可能です」

「死んでいた、か……」


 鈴木が、悲しげにぽつりとつぶやいた。 

 高橋は、もうひとつの可能性に食いつく。


「召喚を阻まれるってのは?」

「召喚魔法を阻む魔法や魔道具を使っていたら、召喚出来ません」 

「伊藤にそんなこと、出来るわきゃねぇだろ」

「いや、出来るね。伝説の大魔法使いなら」

「大魔法使い様ほどのお方でしたら、造作(ぞうさ)もございません」


 執事が当然とばかりに、(うなづ)いた。

 伊藤が生きているかもしれない。

 希望を見出(みいだ)して、3人は笑顔を取り戻した。

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