第5話 ある意味勇者様の召喚
40歳童貞様召喚の儀式をしてから、なんやかんやで半年が過ぎた。
国王軍は総動員して捜索にあたったが、40歳童貞様は見つからなかった。
国王軍の偉い人たちで話し合った結果、捜索は打ち切られることになった。
これだけ探しても見つからないのだから、どうせ見つからないに違いない。
ぶっちゃけ、捜索部隊も探し疲れちゃって、やる気がない。
きっと、40歳童貞様は移動魔法で遠くへ行ってしまったんだ。
もしくは、転移魔法で自分の世界へ帰ったんだろう。
あるいは、どこかで野垂のたれ死んだのかもしれない。
だから、いくら探しても見つかるはずがない。
そう、結論付けた。
きっと異世界でも、40歳童貞様は希少に違いない。
40歳童貞様は諦めて、今度は勇者様を召喚することになった。
この世界の勇者様とは、いわゆる「ある意味勇者」
現代社会においては、後先考えない、ムダに行動力があるアホのことである。
古より伝わりし文献によれば、『勇者様は魔王を倒してくれる、ありがたい存在である』と書かれている。
魔王を倒せるってことは、めちゃくちゃ強いはず。
ってことはたぶん、40歳童貞様よりも強い。
だったら、勇者様に魔王軍を倒してもらえばいい。
今度は、3人くらいまとめて召喚してみてはどうだろう?
勇者様だって、ひとりよりたくさんいた方が良いに決まっている。
せっかくなら、40歳童貞様に近しい勇者様たちを召喚してみようってことになった。
☆
ってことで、30歳童貞の魔法使いたちを再び呼び集めた。
前回のようなミスは、繰り返してはならない。
今度こそ間違えないように、全員で指差し確認をする。
「「「魔法書よし!」」」
「「「魔法陣よし!」」」
確認作業が終わったので、いよいよ召喚の儀式が始まった。
魔法使いたちは魔法書を開き、詠唱し始める。
魔法陣に書かれた線や文字に、ひとつずつ光が灯っていく。
やがて、魔法陣から目も眩むほど巨大な光の柱がそびえ立った。
詠唱が終わると、光は少しずつ弱まっていく。
光が消えると、3人の人間がぽかんとした顔で立っていた。
「「「やったぁ~っ、成功だ~! 今度は、上手くいったぞ~っ!」」」
無事に召喚された勇者様たちを見た魔法使いたちは、小躍りして喜んだ。
一方、召喚された勇者様たちは、不思議そうに周りを見回している。
「あれ? ここどこだ?」
「見た感じ、日本じゃなさそうだけど」
「なんか急に変なとこにいるんだけど、これ夢か?」
戸惑っている勇者様たちに向かって、魔法使いたちが話し掛ける。
「ようこそおいで下さいました、異世界の勇者様がた」
「突然お呼び立てしてしまい、申し訳ございません」
「ですが、我々には勇者様がたのお力が必要なのでございます」
「どうか、我々にお力添えいただけませんでしょうか?」
魔法使いたちの話を聞いて、勇者様たちは驚くと同時に興奮し始めた。
「スッゲェ~ッ! 異世界ってホントにあるんだなっ!」
「ってことは、異世界召喚されちまったのかっ?」
「さっき、おれたちのことを『勇者様』っつったよなっ?」
「さしずめ、俺が勇者ってとこかっ?」
「オレ、赤魔道士(戦闘・回復・攻撃魔法が出来る職業)がいい!」
「だったら、おれ、戦士になりたいっ!」
ひとしきり盛り上がった後、スンと冷静になる。
「ってか、伊藤は? アイツも、ここに来てんだろ?」
「そうだ、伊藤に会わせてくれ」
「アイツがいねぇと、色々困んだよ」
勇者様たちに問われて、魔法使いたちは挙動不審になった。
何故か勇者様たちは、40歳童貞様が召喚されたことを知っているようだ。
誰が本当のことを言うか困って、魔法使いたちは円陣を組んで話し合う。
じゃんけんに負けたひとりが、ごにょごにょと話し出す。
「……その伊藤様というのは、40歳童貞様のお名前でしょうか?」
「アイツ、ここでは『40歳童貞様』って呼ばれてんのかよ?」
「マジで? ウケる」
「確かに、40歳童貞様には違いねぇな」
勇者様たちはそう言って、ケラケラと笑った。




