第11話 40歳童貞様の帰還
「こちらの執事さんが手伝ってくれたおかげで、お前を呼び戻せたんだぜ」
「へぇ~、そっちも大変だったんだな。執事さん、ご協力してくださって、ありがとうございました」
「皆様のお役に立てれば、光栄に存じます」
情報交換をして互いを労い合っていると、魔法使いたちが召喚の間へ駆け付けてきた。
「今しがた、召喚魔法の光が見えましたがっ!」
「もしや、勇者様がたが召喚の儀式を行なわれたのですか?」
魔法使いたちは、伊藤を見て驚きの声を上げる。
「ややっ? そちらにおわしますお方は、もしや大魔法使い様っ?」
「ようこそ、国王軍へおいでくださいました、大魔法使い様っ!」
「おおっ! なんと素晴らしい! さすがは、勇者様がたっ!」
「長らく行方不明だった大魔法使い様を、呼び戻して下さるとはっ!」
「大魔法使い様と勇者様かたがいらっしゃれば、必ずや我が国王軍に勝利が訪れましょうっ!」
「あなた様がたは、まさしく勇者様でございますっ!」
魔法使いたちは跪き、勇者様たちを褒め称えた。
たった今、ここに召喚されたばかりの伊藤は、ポカンとするばかりだ。
鈴木と高橋と田中は、魔法使いたちを鋭い目で睨み付ける。
「召喚魔法で、簡単に呼び戻せたんだけど。お前ら、今までいったい何やってたの?」
「まさか、真面目に探してなかったってことはねぇよな?」
「もしそうなら、絶対許せねぇんだけど」
「そもそも、お前らが呼び出さなけりゃ、伊藤はこんな目に遭わなかったんだっ!」
「伝説の大魔法使いだか勇者なんだか知んねぇけど、オレらを巻き込むんじゃねぇよ」
魔法使いたちは、勇者様たちが何をそんなに怒っているのか、全く理解出来なかった。
「どういうことですか? 勇者様がた」
「何をそんなに、お怒りになっていらっしゃるのですか?」
「どうか、何とぞお怒りをお鎮めになってくださいませ」
「一生分かんなくていいよ。伊藤、高橋、田中、帰ろうぜ!」
「もう二度と、呼ぶんじゃねぇぞ」
「次呼んだら、ぶっ殺すっ!」
「帰るって、どこへ?」
オロオロする伊藤に、鈴木がにっこりと明るく笑いかける。
「俺たちの世界、東京に決まってんだろ?」
「帰れるの? ってか、帰っていいの?」
「当たり前だろ。ってか、お前、こんなとこにいてぇの?」
高橋の質問に、伊藤は首を横に振って訴える。
「そんなの、今すぐ帰りたいに決まってんじゃんっ!」
「だよな。だったら、今すぐ帰ろうぜ」
田中は伊藤の腕を掴んで、魔法陣の中へ引っ張り込んだ。
伊藤を呼び戻す為に使った魔法陣とは、別の魔法陣。
こちらは、4人が現代日本へ戻る為に、こっそり用意しておいたものだ。
魔法陣の上に立つと、3人は再び詠唱し始める。
それに気付いた魔法使いたちは取り乱して、慌てて手を伸ばす。
「お待ち下さい、大魔法使い様、勇者様がたっ!」
「勇者様がたは、お帰りいただいても構いませんが! 大魔法使い様だけは、どうかこちらへっ!」
「大魔法使い様にお帰りになられたら、我が国王軍の勝利は――」
4人は国王軍の都合で、勝手に呼び出された被害者。
この世界の行く末など、どうでもいい。
国王軍と魔王軍がどちらが勝とうが負けようが、4人には関係ない。
今後一切、関わり合いになりたくなかった。
「「「知るか、ボケ」」」
3人は、魔法使いたちに向かって中指を立てる。
その言葉を最後に、4人は光の中へ消えた。
4人が現れた場所は、伊藤の部屋の中だった。
伊藤は懐かしい自分の部屋を見回して、驚きの声を上げる。
「えぇ~っ? マジでっ? お前ら、転移魔法なんて使えたのっ?」
「ふふ~ん、まぁな! どうだ、驚いたかっ?」
「オレらも早く帰りたかったから、必死で覚えたんだぞ」
「たぶん、あっちの世界でしか、使えねぇと思うけどな」
伊藤は感激して、得意げな鈴木と高橋と田中に感謝と喜びの言葉を伝える。
「連れ戻してくれて、ありがとう! お前らが友達で、本当に良かったっ!」
「「「どういたしまして!」」」




