断酒エレベーター
掲載日:2025/11/19
断酒エレベーター?
「なんじゃこりゃ」と俺はつぶやいた。
エレベーターには大勢の人が乗っている。皆、俺と同じ赤ら顔だ。最後に俺が乗り込むとエレベーターはゆっくりと上昇し始めた。
2階についた。扉が開くと、一人の男が降りた。女が男を待っていた。女は涙ぐみ喜んでいる。男の嫁のようだった。
3階についた。今度は、数人が降りた。待っていたのは、泣きじゃくる家族達だった。「父さんが帰ってきた」と喜び泣きじゃくる家族だった。
4階、5階、…
各階に停まる度に、数人おりる。待ち人達は皆、安堵や喜びの表情で彼らを迎えている。
俺はエレベーターが停まる度に、中から外を覗いてみたが、知る顔はなかった。
10階についた。また数人降りた。彼らを待っていたのは、厳格な顔をした医者だった。 彼らは病室に閉じ込められた。きっと暫く出られないだろう。
エレベーターは、俺だけになった。
やがて、頂上についた。
扉が開いた。
辺りは優しい光に包まれて、白く輝いている。
俺は天国についた。
エレベーターの扉が閉まった。
俺は、もう下には戻れないのだな。と悟った。




