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第5話 喜多方

 スマホを買ったり観光をしたりで、長いこと米沢にいたものだ。そろそろ次に向かうとするか。


「了。ここでも桜祭りをやっているわよ」


 すっかりスマホ中毒者となったファンタジーな世界のエルフさん。少しは目のために自重しなさいな。


「喜多方か。すぐだな」


 国道121号線で一時間もかからないな。


「上杉まつりを見たかったけど、桜は待ってくれないしな。行くか」


 まだ先だ。さすがに他にも行きたいし、今回は諦めるとしよう。寿命は延びたんだからな。


 お世話になった道の駅で米沢の日本酒と高畠ワインを買わしてもらう。ルーシャが大食漢で飲兵衛さんなものでな。


「了、お金大丈夫?」


「なくなったら稼げばいいさ」


 旅は出来なくなるが、仕事は出来るほうだと自負する。すぐに貯めてやるさ。


「これって売れるかな?」


 と、金貨を何枚か出した。


「おー。異世界の金か~。意外と精巧だね~」


 ファンタジーだからもっと雑かと思ったら記念硬貨並みにしっかりしている。どんな造幣技術してんだ? 


「試しに売ってみようか」


 お宝買い取り的なところ検索して、そこに行ってみる。どうでしゃろか?


 鑑定の結果、金融率は高く、五枚で八十三万円になった。マジか!?


「これって税金かかるのか?」


 現代だと金を売るのも大変そうだよな。まあ、あとで調べてみるか。金貨はまだたくさんあるそうなので。あ、闇取引とかやっちゃう? 闇とか知らんけどさ。


「はい。これはルーシャが使いな。って、財布がないか。途中で買うか」


 オレはカードとスマホでなんとかなるし、現金も三十万円くらい下ろして来た。現金はルーシャに持たせるとしよう。


「さすがに八十万円は入んないから十万円は入れて、残りはそこに入れておくといいよ」


 オレも八十万円持って歩くとか怖すぎる。十万円くらいがちょうどいいだろうさ。


 午前九時に出発。買い物はしてあるので国道121号線を進み、途中の道の駅田沢でトイレ休憩──することもなかったが、せっかくだから立ち寄って玉こんにゃくを買って食べた。


「懐かしい~。子供の頃食べたっけな~」


 山形と言ったら芋煮と玉こんにゃく、ってイメージしかないや。あ、ミルクケーキもあったな。ケーキってより飴みたいなものだけど。


 二十分くらい立ち寄って出発。山とトンネルを越えて喜多方市に入る。


 初めて来るところだが、この世にはカーナビというものがある。日中しだれ線桜並木ってところにやって来た。


 臨時駐車場があり、キャンピングカーでも余裕で停められた。


「意外と大規模だな」


 平日だというのにたくさんの観光客が来ている。県外もいるんだ。そんなに有名だったんだな。


「綺麗ね」


 元汽車の路線だったようで、かなり先までしだれ桜が続いていた。これ、どっちに向かえばいいんだ?


 とりあえず、SLが飾ってあるほうに向かってみた。


 想像してたものとは違ったが、このしだれ桜の前ではどうでもいいこと。行けるところまで行ってみよう──と思ったが、一キロ歩いてもまだ先がある。


「戻ろうか」


「そうね」


 すまぬ。我はまだ体力がないのでござる。


 駐車場の端で飲み物を売っていたので抹茶ラテを買って喉を潤した。うめー。


 椅子に座りながらしだれ桜を眺める。


「この世界は綺麗ね」


 海外旅行などしたことがないオレにはなんとも答えられない。日本のこともまともに知らないのだからな。


「もっと綺麗なものが見てみたいな」


「ええ。見てみたいわ」


 一人より二人で見る景色は綺麗だろうね、なんてこと言えるわけでもなし。オレたちは夫婦でもなければ恋人でもない。旅の友。まあ、それでも構わない。二人は寂しくないのだからな。


「……そろそろお昼にしようか」


 時刻は午後の三時前。昼はとっくに過ぎてて、まだ玉こんにゃくと抹茶ラテしか口にしてないや。


「そうね。お腹空いたわ」


 喜多方と言ったら喜多方ラーメンだが、米沢で一日一回はラーメンを食べていた。さすがに飽きた。米が食いたいよ。


 とりあえずキャンピングカーに戻り、どこにしようかと二人で相談した。


「ここでいいんじゃない?」


 ルーシャが選んだのは道の駅喜多の郷の近くにある田舎カフェみたいなご飯屋さんだ。


「いいね。道の駅も近いし」


 道の駅喜多の郷には日帰り温泉がある。今日はここを宿としよう。


「ごはんやカフェか」


 田舎カフェみたいなところは米沢に来る前、福島で行ったことはある。野郎一人で入るには度胸が必要だったっけ。


 でも、女性と一緒だと強気になれるから不思議だ。


 道は狭かったが、昼を過ぎていたので駐車場に余裕で停められた。


 古民家、ってより昭和初期な感じがする店で、なんか懐かしい匂いがする。母親の実家もこんな感じだったっけ。


 おじさんとおばさんがやっている店のようで、本当に実家に帰って来たような気分になるな。


 席につき、メニューを見る。


「なにを食べようか?」


 メニューを決めるとき、なんか幸せを感じるよな。


「わたしはレモンミソラーメンとミニソースカツ丼かな」


 相変わらず大食漢だ。大の男並みの胃をお持ちだ。


「オレはおぐみハンバーグの味噌トマトソースにしよう」


 ハンバーグがあったら食べずにはいられない男なのです。


 注文を言って出て来るのをわくわくしながら待つとする。

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