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第4話 観光

 上杉城跡。城があるわけじゃなく、堀に囲まれたところに上杉謙信を祭神とした上杉神社がある。


 ここに来るのはこれで二度目。母親が山形県生まれなので小さい頃来たことがあるのだ。と言っても昔過ぎて記憶も曖昧だけどな。


「凄い!」


 駐車場から堀沿いを歩いて舞鶴橋に立つと、ルーシャが感激の声を上げた。


 耳を隠せば外国人なので、奇妙な目を向けられることはないが、クスクスと笑われるのはちょっと恥ずかしい。


 キョロキョロするルーシャの手をつかみ、表参道を進んで上杉神社まで向かう。

 

 作法とかよく知らないので、前の人の真似をして五百円玉を賽銭箱に放り込んだ。


 これと言って願うことも報告することもなし。形だけ頭を下げた。


「次は、もっと調べてからにしようか」


 ルーシャに説明もできない。まあ、ルーシャは初めての光景に話なんて聞いちゃいないだろうがな。


「しかし、綺麗な花よね。ピンクの花びらなんてまさに異世界だわ」


 あ、桜か。まったく気にもしてなかった。米沢の桜は今なんだな。


「毎年見てたはずなのに、まったく気付かなかったよ」


 まあ、始発から終電までの毎日。会社に泊まったことは数知れず。自然に触れることもなかった。オレの二十代はなんだったんだろうな?


「綺麗だな~」


 ルーシャと出会わなければ三十年の人生をただ仕事だけで終わらせるところだった。桜が綺麗だと気付かないまま終わっていたってことだ。


「写真撮ろうか」


「写真?」


 説明するよりやってみたほうが早いとルーシャを桜の木の前に立たせ、スマホでパシャリ。撮したものを見せた。


「わたしだ!」


 やり方を教え、ルーシャにスマホを渡した。


「好きな風景を撮ってみな」


 ルーシャに任せ、オレはそれについて行く。あ、撮影禁止のところもあるから注意だよ。


 稽照殿(宝物殿)や伝国の杜(米沢市上杉博物館・置賜文化ホール)を見て周り、上杉城史苑に移って米沢牛を使ったコロッケとメンチカツを買って食べた。美味い美味い。


「メンチカツ、美味しい~!」


 イメージでエルフは肉を食べないと思ってたが、ルーシャはがっつり肉を食うエルフさんだった。


「米沢牛を食べられるところに行くからそれだけな」


 よく食べるとは言え、無限の胃袋を持っているわけではない。美味しく食べるためにも抑えてくださいよ。


「お肉楽しみ!」


 腹を空かせるためにキャンピングカーは駐車場に置かしてもらい、歩いて米沢牛ステーキ、ハンバーグ専門店へと向かった。


 ここは、子供の頃、連れて来てもらったことがある。なんか前の名前と変わっていたが、味は変わってなかった。


「やっぱハンバーガーは美味いな」


 オレ、ハンバーグとかハンバーガーが好きだわ。


「お肉も美味しいよ!」


 ルーシャも満足のようだ。


「また来ような」


「うん」


 夜は米沢ラーメンを食べたい。


 病気になったら食欲も減ったが、健康になったら食欲が出てきた。太らないようにしないといけないな。登山とかもやろうかな?


 腹も満たされたので、コーヒーとデザートでシメてキャンピングカーに戻った。


「ちょっと休もうか」


「ええ。はしゃぎすぎて疲れたわ」


 道の駅米沢に向かい、お昼寝……ではなく、がっつり眠ってしまった。


「スーパーによってから来るんだった」


 道の駅に併設されたコンビニは朝の七時から。まだ四時間も先だ。


「了。これの使い方教えて」


 スマホが気になるようで、賜の湯が始まるまでスマホの使い方を教えた。


「ルーシャのも買おうか。離れたときないと不便だからな」


 一応、パソコンも持って来ているが、持ち歩きには向いてない。明日、買いに行くとしよう。まだ米沢ラーメンを食べてないし、米沢周辺も観光したいしな。あ、米沢牛のすき焼きも食べたかったんだ。


 温泉を楽しみに旅に出たのにグルメ旅になりそうだ。まあ、それも旅の楽しみ。思うがままに旅をするとしよう。


「いいの?」


「必需品だからな。構わないよ」


 ルーシャとはぐれ、一生会えないとか嫌だ。スマホ一台くらい安いものさ。


「お、時間だ。風呂に行こうか」


 まずは風呂だ。朝風呂だ。賜の湯にレッツゴーだ。


「そうね。温泉に入るようになってから体の調子がいいわ。魔力もなんだか高まっている感じがする」


「魔力?」


 なんかファンタジーなセリフが出て来た。あ、いや、ルーシャはファンタジーな世界の住人だったわ。


「この世界に来るまで魔力はそこまで高くなかったのに、今は倍、いえ、どんどん増えているような気がするわ」


「まあ、減っているならまだしも増えているならいいんじゃない。この世界だど魔力がなくても生きていけるけどね」


 魔力、魔法が使えてなんになるんだ? 金儲けができるならまだしも火や水を出しても仕方がないだろう。


「今の魔力ならなんとかなるかも。これ、使ってもいいかしら?」


 ディーバッグをつかんだので、構わないと答えた。


 なんかよくわからない力がルーシャから出ているのが見えた。オレにそんな力が!?


「ふー。成功だわ」


 なにに成功したん?


「夢だったの。拡大収納化するの」


 よくわからないので説明してもらったらディーバッグの容量を百倍くらいにしたそうだ。


 まあ、確かにたくさん入るのはいいが、そんなに入れるものなんてあるのが? 災害時ならまだしもこの日本で百倍の容量があるディーバッグっていらないだろう。キャンピングカーの収納、まだまだ余裕があるし。


「それは便利だね」


 と言っておく。きっと役立つ日が来るようにと願いながら……。

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