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エルフさんと癒され日帰り温泉旅へ  作者: タカハシあん


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第35話 *宮脇早苗*

「はぁ~。再生数伸びないな~」


 キャンプ系動画配信者として始めて二年とちょっと。やっと登録者数二万を越えたけど、再生数は二万を越えたことがなかった。今では一万五千まで下がってきているわ。


 同じキャンプ系としてはまあまあの数字でしょうが、二年もやってこれでは先が見えている。


「終わりなのかな~」


 車中泊やキャンプは楽しい。でも、生きるためにはそれだけではダメだ。稼がないといけない。家賃も車の維持もなかなかの出費だ。


 朝のルーティンを撮る前にトイレに行っておこう。


 山の中にある道の駅なので朝はちょっと冷える。道の駅周辺をちょっと撮っていたほうがいいかな?


 そんなことを考えながらトイレに向かおうとしたら金髪の外人さんがいた。


 今時珍しくもないし、日本全国を旅をしている人もいる。ここにもいるんだな~ってくらいの考えで通りすぎようとしてなにか違和感を覚えた。


 え? と振り返ったら金髪外人さんの耳が尖っていた。アニメやゲームの中にいるエルフかのようだった。


 わたし、寝惚けてる? まだ夢見てる? それとも昨日のノンアルビールが残っている?


 エルフらしき金髪外人さんを目で追っていたらグレーのキャンピングカーの陰に消えてしまった。


「え?」


 トイレに向かって顔を洗い、すっきりさせてからまた顔を洗った。


 頭までびっしょりにさせても夢か現か幻かもわからない。


 トイレを出てエルフらしき金髪外人さんが消えたキャンピングカーはそこに存在していた。


「あのー。大丈夫ですか? ずぶ濡れですけど」


 茫然としていたら三十手前くらいの男性に声をかけられた。


「あ、いや、だ、大丈夫です! すみませんでした!」


 我に返り、急いで車に戻った。ずぶ濡れの女とか怪奇でしかないでしょう! 恥ずかしい!


 タオルで顔や頭を拭き、ポータブル電源にドライヤーを繋いで髪を乾かした。


 お湯を沸かしてコーヒーで一息。現実を見詰め直した。


 ………………。


 …………。

 

 ……。


「うん! 夢や現や幻でもないわ! 現実だわ!」


 あれは間違いなく存在していた。耳も尖っていた。


「どこかでコスプレ大会でもあるか?」


 コスプレにしては違和感はなかった。本当のエルフにしか見えなかったわ。


 車を出て──さすがにキャンピングカーに突撃はできないって! エルフですか? なんて訊きに行くのか? 違ってたら不審者よ!


 わたし、なにやってんのよ! と頭を抱えていたらキャンピングカーから金髪外人エルフさんと男性が出て来た。


 ほら、やっぱりいたじゃない! エルフじゃない! 違うというヤツがいたらちょっとわたしの前まで来なさいよね!


 金髪外人エルフさんと男性は、なんか木刀を持っていた。


 なにをするの? と、好奇心が働いて二人のあとを追うと、芝生があるところで戦い始めた。け、決闘なの?!


 と慌てたけど、決闘にもならない力量差。男性が木刀を振り払うだけで金髪外人エルフさんは避けるだけ。素人のわたしですらわかるほど、金髪外人エルフさんが鬼強い。男性の一撃を涼しい顔で避けていた。


 わたしはなにを見ているの?


 唖然と茫然と二人の戦いを見ているしかなかった。


 男性の体力に限界がきたのか、激しく息をついて芝生に崩れてしまった。


 厳しい顔でいた金髪外人エルフさんは、崩れた男性に優しく笑い、どこからか出したタオルを渡した。師匠と弟子か?


「あら~。見ちゃいましたね~」


「ヒィッ!?」


 突然、後ろから声がして誰かの腕が回ってきた。


「確か、キャンプ系動画を出しているミオさんですよね? よく動画を観させていただいていますよ~」


「あ、いや、あの、わたしは別に──」


「まあまあ、落ち着いて。旅先でエルフを見たら気になりますもんね~。無理ないですよ。あ、あたし、阿佐ヶ谷璃子と言います。あの二人の関係者でマネージメントもしております。まだ名刺がないのでご容赦を」


 な、なんなの、この人? まだ二十代前半っぽいけど、やたら馴れ馴れしいわね。


「リコ、฿₥₢₣₨₦€?」


「知り合じゃないですよ。動画配信者さんですよ」


「฿฿₥₣◎◆₥★₨₠?」


「そうそう。キャンプ系の動画を出している人です。あとで教えますね」


 金髪外人エルフさんと会話をしている阿佐ヶ谷さん。英語じゃないよね? どこの言葉なの?


「あ、すみません。彼女、簡単な日本語しか話せないんですよ。ルーシャさん。コンビニでコーヒーを買って来てもらえますか? こっちで話を通しておくので。了さん。今のうちにシャワーでも浴びてください」


「え、ああ。そうするよ」


 男性は不思議そうな顔で去って行き、金髪外人エルフさんは歩いてコンビニに向かった。


「ミオさん。ちょっとお話ししましょうか」


 璃子さんに言われて近くのテーブルに座った。


「あ、なにか飲みます? お近づきの印におごりますよ」


「あ、いえ、飲んだばかりだから大丈夫です」


 今はドキドキしすぎでなにも喉を通らないわ。


「改めて自己紹介といきましょうか。あたしは阿佐ヶ谷璃子と言います。まだ会社としては設立していませんが、写真家、田倉健吾先生のスタジオを引き継ぐ準備を進めています。これからルーシャさんを売り出していく計画です」


 年下なのにやたら迫力のある人だった。わたし、どうしたらいいの!?

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― 新着の感想 ―
貴女は知り過ぎた…… そっちがベラベラ喋ったんじゃないのよ!
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