第21話 大江戸温泉物語
鳩のマークのスーパーに寄り、買い物を済ませて道の駅あいづに着いたときは暗くなっていた。
「今日は金曜日か」
なんか車が多いな~と思ったら金曜日だったよ。
施設が整っている道の駅は平日でも車が多かったりする。車中泊する人らが本当に多いよ。
「お風呂に入りたいわね」
日本酒を一杯空けてからの一言。なにか日本酒にそんな要素があったか? 風呂で酒はよくないって聞くぞ。
「いいですね。この近くに入れるところあるかな?」
矢代さんも一杯空けてからの同意。自分のスマホで探し出した。
もうなにも言うまいと矢代さんに任せ、トイレにでも行って来る。トイレも一杯だ~。
「道端さん。ここなんてどうです? 大江戸温泉物語あいづです。ここから近いですよ」
江戸なんだかあいづなんだかどっちなんだよ? まあ、マップで見たら確かに近いな。
「ルーシャはここでいいのか?」
「構わないわ。いろんなところに入ってみたいし」
ってことなので決定。
「あ、今までたら駐車場が埋められるか?」
埋まることはないとしても結構いい位置に停められた。動かすのは嫌だな~。
「矢代さんの車で行きますか。軽なら離れていても大丈夫でしょうからね」
もちろん、運転はオレ。わかってますって。
お願いしますとキーを渡され、風呂セットを移して大江戸温泉物語あいづとやらに向かった。
周りに明かりがない。なんか田んぼの中にあるところだ。客、来るんか? と思ったが、それなりに来ているっぽい。金曜日だからか?
「スーパー銭湯か健康センターって感じですね」
どっちも知らないのでなんともかんとも。なんか宿泊も出来るっぽいな。
まあ、日帰り湯はやっているので券売機で券を買った。
施設の中は寂れた感じはまったくなく、朝から来て夕方までゆっくりしたいところではある。泊まりで来るのもいいかもな。
「一時間くらいでいい?」
「了解です」
「よかったら延長ね」
「あいよ」
貴重品を一つのロッカーに預け、オレは男湯に。女性陣は女湯に向かった。
これまで入ってきた日帰り温泉とそう変わりはない。まあ、かなりいいほうの施設だろう。
服を脱いで風呂セットを抱えて浴場に。施設の大きさを示すように浴場も広い。泡風呂やサウナまであり、露天風呂もあるようだ。
いちものようにシャワーで体をしっかり洗い、内風呂に入る。
ここも臭いはない。長く入っても臭いがつかないのはいいよな。なんか最近、キャンピングカーの中の匂いが変わった。と言うか、女の匂いに満ちている。結婚とかすると家とかあんな風になるのかね? 独身者にはよーわからん。
「なにはともあれいい湯だ~」
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◆ルーシャ◆
「おー。いい感じですね~」
ほんと、脱衣場が綺麗だわ。
「結構いるわね」
「金曜日ですからね」
了によれは大体の人が明日から休日なんだとか。この世界は休みがたくさんあるのね。つい最近もゴールデンウィークっていう連休があったばかりなのにね。
服を脱いで浴場に入る。
「広いわね」
旅館の浴場くらいあるかしら? これなら人がいてもゆったり入れるわ。
シャワーをしっかり浴びて湯船に。ここはそんなに熱くないわね。これなら三十分くらいは浸かっていられそうだわ。
「ルーシャさん、わたし、サウナ行って来ますね」
五分くらいで湯船を出てサウナへと行ってしまった。サウナ好きね~。
湯に入ることが難しかった頃はサウナがいいと思っていたけど、こうしてお湯に浸かるほうが至高だと知ったわ。
「泡風呂ってのも経験してみましょうか」
初めてのものは経験しておかないとね。あら、いいじゃない。全身に当たる泡がいい感じに衝撃を与えてくれる。これは、筋肉を使いすぎたときにいいんじゃないかしら? これは効くわぁ~。
いつまでも一人占めはいけないわね。お風呂はマナーが大事。ルールをまもっ楽しみましょう、だ。
「あら、もう出て来たの?」
湯船から上がったらヤチヨが水風呂に入っていた。
「混んで来たので」
確かに入った頃よりは増えてきたわね。やっぱり人が少ない時間に入らないとゆっくり出来ないか。
「家族風呂があればいいんですけどね」
「家族風呂?」
「まあ、貸し切りみたいなものですね。一時間くらい借りられるはずですよ」
へー。そんなのもあるのね。それはいいんじゃない。
「家族風呂だと道端さんと入ることになりますよ。さすがに一人で、ってわけにもいかないですしね」
「了が構わないのならわたしは気にしないわよ。サウナは男女関係ないからね」
さすがに布の服は着るけど。でもまあ、了なら裸でも気にしないかな? わたしも男性の体くらい見たことあるしね。
「ふふ。了さんなら嫌がらないでも水着着用になるでしょうね。紳士だから」
水着か。水着を着るならプールってのも入りたいわね。泳ぎにちょっと興味あるし。
「露天風呂のほうに行って来るわね」
楽しみはあとに回して今の楽しみを堪能するとしましょうか。まだまだ体が温まってないしね。
「あ、わたしも行きます」
露天風呂に続く通路を通り、先に入っていた人に迷惑をかけないよう静かに湯に入った。ふ~。いい湯だわ。
「ルーシャさん。そろそろ一時間になりますよ」
「あら、もうそんな時間?」
「はい。お酒が美味しくなるくらい入ってますよ」
確かにいい具合に汗が流れたわね。今日はコーヒー牛乳ではなくビールがいいわね。
「じゃあ、上がりましょうか」
今日はなんだかんだと疲れた。美味しいお酒を飲んでぐっすり眠るとしましょうかね。
 




