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第19話 *阿佐ヶ谷姉*

 なんだろう。撮れば撮るほどルーシャさんの力に惹かれていく。


 モデルのような洗練されたものはないのに、立ち振舞いにまったくのブレがない。どんな足場でも凛として立っていた。


「本当に機材を持って来なかったのが悔やまれるわ」


 もっと光を集めて、レンズも全種類持って来てたらもっと上手く撮れたのに。せめてzfは持って来るんだったわ。なんでf9だけにしちゃったんだろう? わたし、バカすぎる。


 それでも可能な限り、いいアングル、解像度を変更していろいろ撮ってみる。


「実子さん。そろそろ戻りましょうか。九時半になるので」


 もっと撮りたいけど仕方がない。この失敗は次に活かしましょう。これから先もルーシャさんを撮れるんだからね。


「凛子はなにしているの?」


「動画撮影。メイキング映像やSNSに上げようかと思って。エルフの旅日記物語ってね」


「日記なのか物語なのかどっちよ?」


「どっちでも取られるようによ。ルーシャさんはエルフのコスプレイヤー。真実と嘘を織り交ぜるのよ。ルーシャさんの魅力を出すにはSNS戦略も大事なんだから」


 わたしはそっち方面はわからない。道端さんや矢代さんが許しているならわたしが口を出す理由はないわ。


「了さん。あたしをSNS担当にしてください。身バレしないようにやりますんで」


「うーん。オレもルーシャもSNSのことはなにもわからないから手助け出来ないよ」


「大丈夫ですよ。了さんやルーシャさんは、スマホで動画や写真を撮ってもらってあたしが編集します。あとはあたしのスマホでアップしますんで」


 この子、こんなに積極的な性格だっけ? フリーターとは名ばかりのニートみたいな存在なのに。


「……わかった。お願いするよ。費用はオレが出すから」


「道端さん、いいんですか?」


 フリーターとは名ばかりのニートを更正出来るなら姉としてありがたい限りだが、失敗は道端さんの損失となる。手放してば賛同出来ないわ。


「まあ、璃子さんの行動力はオレらにないものですからね。任せてもいいと思います。なんか臨機応変に動けそうでもありますからね。ルーシャを補佐してくれる報酬です」


「いいんじゃないですか? SNS対策はしていたほうがいいですからね。知り合いに弁護士がいるので紹介しますよ。会社を立ち上げるなら必要ですからね」


「あ、会社にするのは決定なんですね。それならわたしは、うちのスタジオがお世話になっている税理士さんを紹介します。信頼出来る方ですよ」


「いや、まだ会社にするかは未定です。会社設立とか必要なこととか勉強しないといけませんからね。利益が出るかもわからない状況ですからね。今はオレのポケットマネーから出します」


 貯金していたとは聞いているけど、だからって思いっきりがよすぎる。死を目の前にした人はなにか悟ったりするのかしら? 


「先生が助かるならスタジオに入社って手もあるかも。先生、スタジオ経営に時間を取られるのは面倒だっていつも愚痴ってたから」


 経営にはまったく関与してなかったからわからないが、雇われ社長ってのもあるんだし、道端さんを社長に出来るんじゃない?


「まあ、今日明日ってわけではありませんし、今は趣味でやっているってことにしましょう。仕事なんて選ばなければすぐに働けますからね」


 うちの妹に爪の垢でも飲ませてやりたい。道端さんならコンビニアルバイトからでも稼げそうな才能を持ってそうだわ。


「さあ、旅館に戻りましょう。お昼までの約束ですし」


「そうね。わたしには撮ることしか出来ないし、今出来る最高の絵を残すわ」


 これはわたしにとってもチャンスだ。写真集が出ればわたしの名前も掲載される。プロとしてやって行けるようになるわ。


 旅館に戻ったら旅館のあちらこちらで撮影し、特別許可をいただいて入浴シーンも撮らせてもらった。これは絶対に流出させてはいけないものだわ。


「璃子。動画はちゃんと管理しなさいよ。ネットに繋いでないパソコンで編集しなさい」


「わかっているって」


「了さん、パソコンが欲しいです!」


「……帰りに買おうか……」


「うちの妹が本当にすみません」


 わたしには頭を下げることしか出来ない。いざとなればこいつの体で払わせますんで。


「チェックアウトと荷物はオレが運んでおくから時間まで撮ってください。ルーシャ、がんばって」


「わかったわ。お世話になっている身だしね」


 やっぱり道端さんって手際がいいわよね。きっと働いていたときも優秀で重宝されてたんでしょうね。


「あ、実子さん。わたしも道端さんの手伝いをしてきます。時間までいい絵を撮ってください」


 矢代さんも破天荒ながら仕事はきっちりこなすタイプっぽい。なんかいいコンビよね、あの二人って。


「わたしも着替えたほうがいいかしら?」


「そうですね。普段着の絵も撮っておきましょう」


 てか、もっといい服を着せたいわ。あ、ブランドを立ち上げた友達がいたっけ。帰ったら声をかけてみようっと。


 先生にも連絡を入れないとならないし、忙しくなりそうだわ。

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