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エルフさんと癒され日帰り温泉旅へ  作者: タカハシあん


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第14話 熱塩温泉

 阿佐ヶ谷妹の説得のお陰で暗くなる前に撮影会が終了出来た。


「いらっしゃいませ。お疲れでしたでしゅう」


 突然の予約にも快く迎えた旅館の女将さん(だと思う)。旅館なんて初めてだからなんか恐縮してしまうな。


「いえいえ、本当に突然ですみません。助かりました」


 とりあえず下手に出ておく。無理を言ったのはこちらなのだから。


「お気になさらないでください。こちらとしても助かっておりますから。ゆっくりと休んでください」


「ありがとうございます」


 荷物はルーシャに任せてフロントに。あ、矢代さんも来てください。オレ、初めてなもんで。


 矢代さんについて来てもらってチェックインを済ませた。


「払ってもらっていいんですか? かなりの金額になりますよ」


「大丈夫ですよ。矢代さんや阿佐ヶ谷さんたちにはお世話になるでしょうからね。ルーシャにいろいろ教えてやってください」


 打算があってのこと。申し訳なさそうにされるほうが申し訳ないよ。


「それは任せてください。わたしもルーシャさんからいろいろ教わりたいですから」


「お願いします。阿佐ヶ谷さんたち、部屋の鍵です。夕食は十九時半からだそうです」


「じゃあ、その前にお風呂に入って来ますね!」


 阿佐ヶ谷妹さんは本当に嬉しそうだ。


「矢代さん。旅館に交渉できませんか? ルーシャさんを撮りたいんです」


「わかりました。話して来ましょう」


「了。わたしもお風呂に入りたいのだけれど」


 こそっと伝えてきた。


「まあ、まずは部屋に行こうか」


 矢代さんなら許可を勝ち取ってくるだろう。その間に風呂に行けばいいさ。


 キャンセルされた部屋は四人部屋で、ベッドが二つ。畳に布団を敷くようだ。


「立派な部屋ね~」


「ああ。オレ一人なら絶対に泊まったりしないな」


 ホテルや旅館をまったく知らないので、部屋にはランクがどれほどのものかわからないが、宿泊代から考えてそう悪いようには見えない。てか、オレには不似合いなところだ。一人ならカプセルホテルがお似合いだろうよ。


「阿佐ヶ谷妹さんに電話するから一緒に行くといいよ。ついでに会話できるようにするといい」


 これからお世話になる姉妹。ちゃんとしゃべれるようにしておいたほうがいいだろうよ。


「あの姉妹とは仲良くしておくといい。味方は多いほうがいいからな」


「了が言うならそうするわ。モデルってのは困りものだけどね」


「旅の思い出と思えばいいさ。写真に撮っておけばあとで懐かしめるからな」


 電話をして阿佐ヶ谷妹に部屋に来てもらい、ルーシャを風呂に連れて行ってもらった。


「ふー。疲れた」


 癒されに来たのに疲れてばかりだ。

 

 うとうとしていたら矢代さんと阿佐ヶ谷姉が入って来た。あれ、鍵は?


「ルーシャからもらったわ」


 あーそうだった。持たせたんだっけ。


「で、どうだった?」


 とりあえずお茶を淹れる。夕食まで一時間以上あるからな。


「許可をもらったわ。もちろん、他のお客さんに迷惑をかけないのが前提だけど。明日のチェックアウトしたらお昼までは館内を使っていいってさ」


 ほんと、交渉力のある人だ。


「夕食はどこで?」


「中広間よ。騒がなければ写真を撮ってもいいってさ。浴衣姿も撮りたいわ。ロビーと足湯があるみたいだからそこでも撮りたいわね」


 阿佐ヶ谷姉は、撮影のことでどこかに飛んで行きそうだ。


「それならあまり飲まないように。矢代さんもですよ」


 阿佐ヶ谷姉は知らないが、矢代さんは前科がある。飲みすぎには注意だ。


「わ、わかってますって。実子さんは、飲めるほうなんですか?」


「いえ、わたしは飲めないので大丈夫です。妹は父に似て酒飲みなのでバカみたいに飲むかもしれません」


「妹さんって何歳なんです? 二十歳くらいに見えますけど」


「二十二歳です。フリーターですけど。いや、わたしは無職でした」


「オレも無職ですよ」


 余命半年で最後に旅に出たことやルーシャに救われたことを語った。


「その薬ってまだあるんですか?」


「どうでしょう? かなり高価なものだとは言ってましたが」


 薬事法とかある国で売るわけにはいかんからな。まだあるかなんて尋ねても仕方がないから気にもしなかったよ。


「あったら譲ってもらえないかな? お金は……ないんだけど……」


「まあ、訊くくらいなら問題ないでしょう。ダメなら諦めてくださいね」


 もうないのなら諦めてもらうしかないし、あるならルーシャが決めることだ。オレがどうこう言えることではない。


「そうですね。わたしたちだけで決めたらダメですね」


「まあ、それはあとにして、二人は風呂、どうします?」


「わたしは明日の朝にでも入ってみます。二回も入っちゃいましたしね」


「わたしも遠慮しておくかな。撮影のために旅館を見て回ってくるわ。旅館なんて久しぶりだしね」


「あ、わたしも付き合います」


 元気な人たちだ。


「オレは部屋にいますよ。あ、これでお土産を買ってきてもらえますか? いろいろお金を落としていたほうがいいでしょうからね」


 一万円を矢代さんに渡した。


「お世話になっている人へのお土産なので饅頭とかお願いします。なければ適当なもので構いませんので」


 オレのセンスより女性陣のセンスのほうが確かだろうよ。


「わかりました。じゃあ、行って来ますね」


 はい、よろしくです。


 二人を見送り、備えつけのお菓子をいただいた。

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