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エルフさんと癒され日帰り温泉旅へ  作者: タカハシあん


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第10話 人生を楽しみましょうや

「プハー! お腹空いたわ!」


 地元の乳業が出しているコーヒー牛乳を飲み干しての一言。今日もルーシャの胃は絶好調だ。


「じゃあ、なんか食べるか」


 日帰り温泉の醍醐味の一つでもある温泉飯──ってほど立派なものじゃないが、オレが日帰り温泉に嵌まった理由の一つでもある。


 別に特別でもなく特産でもない。まあ、たまにあったりはするが、日本のどこにでもある料理ばかり。でも、それがいい。いい汗をかいて、牛乳で喉を潤し、腹を満たす。


 これほどの贅沢があっていいのだろうか? あってもいい! 人の楽しみなんてそれぞれ。オレはこれが味わいたくて旅に出たのだからな。


「了。ラーメンバーガーだって。どうやっているのかしらね?」


 そういや、道の駅にそんなのが書かれていたな。ラーメンをバーガー? 想像がつかんな。あ、ラーメンピザなんてもんもあったっけ。喜多方、意味わかんねー!


 とりあえず好きなものを注文してみる。


「ビール飲んでいいかな?」


 まだ飲むんかい。昨日、道の駅で買った日本酒、すべて飲んだのに。


「いいんじゃない。風呂上りのビールは美味いからな」


 オレも風呂上りにはビールを飲んでいた。そうしないと明日も戦えなかったからな。


「矢代さんはダメですよ」


 あなた、一人で来たんでしょう。飲んだらまた一泊コースですよ。


「ううっ。一人が辛い……」


 オレも運転手なので飲めないんですけどね。


,「オレはソースカツ丼だな」


 昨日、ごはんやカフェで一瞬悩んだんだよな、ソースカツ丼。ラーメンは専門店で食べたい。


「わたしは喜多方ラーメンにします。一度食べたかったんですよね」


 ふっ。旅を知らない人だ。まあ、オレも素人だけどな。


「でも、こういうところに来るとソフトクリームも食べたくなりますよね」


 それはわかる。旅の最初、食いすぎて腹を壊したのはいい思い出だ。


「って、ビール頼んでるじゃないですか!」


 ちょっと目を離した隙に矢代さんがビールを手に持っていた。いつの間に!?


「いや~。飲みたいときが飲むときじゃないですか」


 真理だけど、本当にまた一泊コースだよ。


「まあまあ、そう固いこと言わない。飲んで食べましょうよ。ルーシャさんはもう飲んでますよ」


 本当だ。席に座ってゴクゴク飲んでるよ……。


「……自由な人ばかりだ……」


「病気が治ったのにまたなっちゃいますよ、そんなに心配してたら。人生楽しみましょうや」


 あなたの場合は少しは真面目に生きなさい。よく社会人やってんな。よく自由奔放で出版社で働いているもんだよ……。


「まあ、確かにそうですね」


 本人が楽しんでいるなら他人がどうこう言っても仕方がないか。オレだって余命半年とか言われて自暴自棄になって旅に出ちゃってんだからな。


 オレらも席に移り、注文ができたらいただくとする。


「この世界、どこでなにを食べても美味しいわよね。胃があと一つ欲しいわ」


 いやあなた、大食いチャレンジに出ても優勝するくらい食べてんでしょうが! もう一つあったら食費が凄いことになるわ!


「こりゃ、帰ったら仕事見つけないとな」


「え? 了、帰るところあったの?」


「そりゃあるよ。この国で住所不定は生き難いからな」


 車庫証明だって税金だって払わなくちゃならない。拠点を作らないと旅はできなかったのだ。


「どこに住んでいるんですか?」


「栃木の那須塩原ってわかります? そこに引っ越しました。安かったんで」


 会社の同僚の実家があるところで、使ってない平屋を借りたのだ。もちろん、余命宣告を受けたことは話してある。金も前払いにして借りているのだ。


「村田さんにも報告しなくちゃならないか」


 いろいろ世話になった。治ったことを告げて、また借りるとしよう。結構自然に囲まれたいいところだからな。


「那須って、遊園地がありましたよね?」


「ええ。オレは行ったことないですが、まあ、そこです」


 と言ってもオレは逆のほう。那珂川の下流のほうだ。田舎だが、静かでオレは気に入っているよ。生活するなら大変だろうけど。


「いいですね。学生時代、那須高原に行きましたよ」


「帰ったら行ってみたいですね。なにも知らないので」


 引っ越して一月しかいなかった。死ぬ前にいろんな温泉に行きたかったしな。


「住所、教えてください。また会いに行きますので。電話、メール、ラインなんかやってたら教えてください。わたしも教えるので」


「ルーシャのスマホにラインを入れてやってください。オレ、入れてないのでで」


 ラインでやり取りする友達もいなかった。もっぱらメールでのやり取りだけだった。


 ……高校や大学の友達なんて、とっくに縁が切れていたしな……。


「ヤチヨ、教えて」


 スマホ依存症になりつつあるルーシャさん。環境適応力凄いエルフさんだよ。数ヶ月後にはオレより詳しくなってそうだ。


「まあ、まずは温かいうちに食べましょうよ」


 この分ではまた道の駅でお世話になりそうだ。てか、さすがに買い出しに行かないと夜食うものがないよ。


 道の駅でたくさんお金を落とすので連泊することをお許しくださいませ。てか、一旦RVパークかガソリンスタンドで水を補給したり排水タンクを掃除しないといかんな~。

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