経済学の二つの潮流について
「法人税や所得税を減税することでスタグフレーションを抑えられ社会を好景気にすることができる。」この意見に対して、あなたは賛成だろうか、それとも反対だろうか? 私はこの意見に反対である。ここでは、その理由について経済学の二つの潮流について説明するのと合わせて書いていこうと思う。
経済学には二つの潮流がある。商品の需要を調整しようとするケインズ経済学と、商品の供給量を増やそうとするサプライサイド経済学だ。(ちなみに、マネタリズムはこの二つの中では前者の発想だ。)
まずケインズ経済学は、財政政策と金融政策を通して金利とインフレ率を調整して商品の需要と為替を適正に保ち続けることで経済成長することを目的としている。ケインズ経済学のもとで世界は大恐慌から回復し、またケインズ経済学のもとで日本は高度経済成長を迎えた。
しかしその後、オイルショックが発生したことで、世界は景気が悪いにも関わらずインフレが加速するスタグフレーションに陥った。そのような状況で再発生したのがサプライサイド経済学である。ちなみに、戦前の大恐慌以前にもサプライサイド経済学に似ている商品の供給量を増やすことを目的とした経済学が盛んに唱えられていたが、戦前の大恐慌を説明することができず、また戦前の大恐慌にたいする有効な解決策を打ち出すことができずに衰退した。
セイの法則とは、商品の需要は商品の供給量によって決まるという法則である。サプライサイド経済学の特徴は、このセイの法則が成り立つという仮定に基づき商品の生産量を増やすことを主張しているのである。サプライサイド経済学が主張している政策として、市場を神の見えざる手に委ねること、国家の規制緩和、および法人税や所得税の減税などがあげられる。サプライサイド経済学のもとで行われた政策としては、レーガノミクスがあげられる。
しかし、本当にサプライサイド経済学やその理論的支柱となっているセイの法則は正しいのだろうか?
セイの法則が正しいとするならば、国家の生産能力が増えればその国は好景気になるはずである。しかし、戦前の大恐慌の時代、アメリカの生産能力は増えていたのにアメリカは不景気になっていた。故にセイの法則は現代では成り立たないと私は考える。
また、サプライサイド経済学が成り立てば、レーガノミクスによってアメリカの生産能力は増えて、それによってアメリカの税収は増えアメリカの財政再建が果たされ、さらにアメリカの国際競争力が増しアメリカの商品の輸出が盛んになることでアメリカは貿易黒字になるはずだった。
実際にレーガノミクスで起こったことは以下の通りだ。まず、アメリカの法人税や所得税が減税されたことでアメリカの税収は減りアメリカの財政赤字は増えた。そのことによってアメリカ国債の金利が上がりアメリカの債権の金利が上がった。これによってドル高がもたらされた。その結果アメリカの商品の輸出は難しくなり、またアメリカ向けの輸出は有利になった。それによりアメリカは貿易赤字となった。つまりレーガノミクスによってアメリカは財政赤字と貿易赤字の二つの赤字に悩まされるようになった。これはサプライサイド経済学が成り立つと仮定したときのアメリカ経済の動きとは反対である。故に、サプライサイド経済学は成り立たないと私は考える。
商品の供給量を増やせば好景気になるというサプライサイド経済学は、確かにわかりやすいと私は思う。しかし、実際に効果があるのは商品の需要量を調整することで適切なインフレ率を保とうとするケインズ経済学のほうだと、私は考える。
ちなみに、私はマネタリズムについては否定的ではない。しかし、前述の通りサプライサイド経済学については私は否定的だ。国家はサプライサイド経済学に従って政策を決めずにケインズ経済学およびマネタリズムに従って政策を決めるべきだと私は考える。