24. 学院後期の始まり
夏季休暇中の多くの時間を、私はルネと過ごした。
ルネのデビュタントの準備は既に始まっているけれど、ネックレスを私と揃えたいというルネの希望の為に、私の夏季休暇に合わせて商人がたくさんのネックレスを持って家にやってきた。
ドレスに合う意匠のネックレスがルネの部屋に並べられていくのを、お養母様とルネと私で見ているのだけれど、ルネが私とお揃いのネックレスにしたいと主張している。
けれどルネのデビュタントなのだ。
もちろんドレスが違うから、同じネックレスをつけたところで印象は違うだろうけれど、それでもデビュタントのルネと私が同じネックレスをするのでは、その日はルネが主役だというのに、私がでしゃばってしまうようで少々問題である。
だから、意匠を合わせるのは良いとしてーーそもそもドレスの意匠も合わせているのだから、合わせるネックレスの意匠も自然と寄るものだーー同じ物にするわけにはいかない。
「ルネ、それならこの石が3つのネックレスをあなたが、石が1つのこちらのネックレスをサラがつけるのはどう?意匠は揃っているし、それにサラのドレスには石が控えめな方が似合うわ」
「そうかしら?」
お養母様にそう諭されて、ルネは二つのネックレスを見比べた。
しばらくそのままネックレスを見ていたルネは、納得したのか頷いた。
「分かりました。ではこれとこれを私とお義姉様でつけましょう」
「それなら、お養母様はこちらをつけませんか?」
私は同じ石がついているイヤリングを取り上げた。
お養母様のドレスには私たちが選んだネックレスは合わないだろう。けれどせっかくならばお養母様とも合わせたい。このイヤリングならば、合わせることが出来るのではないだろうか。
「あら、イヤリング?」
「それがいいわ。そうしましょうお母様!」
お養母様にもルネにも気に入ってもらえて、私たちは無事にルネのデビュタントの日のアクセサリーを選び終えた。
そうして過ごしていると、学院に戻る日はすぐに訪れる。
名残惜しそうなルネと、困ったら手紙を出せと心配げなリュカに手を振って、私は学院へと戻った。
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王立学院の後期は秋の終わりの剣術大会に向けての日々になる。
騎士科は参加に向けて技を磨き、官吏科は大会の準備を通して実務を学ぶ。
大会が終われば、貴族たちの冬の社交が始まる時期である。
家の都合で学院に来ることが出来ない生徒もいることから、授業は行われない。けれど、代わりにたくさんの課題が出される。
課題を提出し、期末試験が終われば後期は終了なので、剣術大会後は家に戻って課題を進める生徒もいれば、家には戻らずに寮に残って学院に通い、課題に取り組む生徒もいる。
昨年のコンスタンは、伯爵家が主催する私のデビュタントの夜会の後は学院に戻るのだと言っていた。
私もルネのデビュタントの為に家に戻るけれど、その先は決まっていない。
学院にいた方が課題は進めやすいだろうけれど、家でも出来るならば来年は家に一人になってしまうルネのそばにいたいとも思う。
コンスタンは今年も伯爵家での夜会に参加した後は学院に戻るつもりなのだろうか。
私は少なくともすぐには戻らないつもりではあるけれど、学院で過ごす生徒はどのくらいいるのだろう。
それも聞いておきたいな。
そんなことを考えながら、私は戻って来た寮の自室の扉を開けた。
アルノー子爵夫人「ルネのデビュタントの後は、サラのための家庭教師が必要かしら?え?家に残るか学院に戻るか決めかねているの?…そうね。家庭教師の手配の都合もありますから、早めに決めて教えて欲しいわね」




