4. 事故
「サラちゃんは一人でちゃんと出来るって分かったから、夕食は一緒に作りましょう」
エマさんと一緒に絵本を眺めてからは、エマさんと一緒に夕食作り。
玉ねぎ、にんじん、じゃがいも、キャベツに豆をたくさん、それに残っていたベーコンの切れ端やソーセージも入れてスープを作る。
半分はエマさんがお家でオダンさんと食べる分、半分は私が父さん母さんと食べる分。
スープの匂いの広がる部屋で、エマさんと一緒に父さんと母さんが帰ってくるのを待った。
エマさんは父さんと母さんが帰って来たら、スープを持って隣の家へと帰るのだ。
いつもならそろそろ両親が帰ってくる時間。だけど父さんも母さんもなかなか帰って来ない。
「今日はお仕事が忙しいのかしら?」
時々父さんが忙しくて、母さんが先に帰って来ることはある。だけど母さんも帰って来ないことなんて滅多にない。
スープは冷めてしまって、もう匂いがしない。
「お腹も空いたし、先にご飯を食べようか」
エマさんがそう言った時、扉をノックする音が聞こえた。
慌てて玄関に向かおうとした私の肩に手を置いて、エマさんが玄関に向かう。
しばらくして玄関から入って来たのはオダンさんだった。
「オダンさん…」
父さんと母さんだったらノックしないで入って来るはず。だから両親のはずがない。きっとエマさんが帰って来ないから迎えに来たのだろう。
「あ…えっと…こんばんわオダンさん」
私が慌てて挨拶するとオダンさんは私の前にしゃがんだ。
「こんばんわサラちゃん」
そうして私の頭をぽんぽんと軽く叩くと「やっぱりまだセザールたちは帰って来ていないか」と言う。
セザールは父さんの名前だ。
「やっぱり?」
エマさんがオダンさんに聞き返す。
「ああ、帰りにオベールの店の前を通りかかったら慌ただしくしていたからな。何かあったんだろう」
「…!」
私が不安そうな顔をしたからだろう。オダンさんはもう一度私の頭をぽんぽんと軽く叩いた。
「一先ず食べようか」
いつもはエマさんとオダンさんは隣の家に帰ってから食べるのだけど、今日は私と三人で夕飯を食べてくれた。
食事を終えても両親は帰って来なかった。
だから私はオダンさんの家に一緒に行って、父さんと母さんを待った。だけど父さんも母さんも帰って来なくて、だからエマさんと一緒にエマさんのベッドで眠った。
私は不安で、だけどエマさんに背中を撫でてもらっているうちに眠たくなって、気がついたら朝だった。
私はエマさんと一緒に家に帰った。だけど父さんも母さんも帰って来ていない。
エマさんは私を連れて父さんと母さんが働く商家に行ってくれた。
朝だからなのか、それとも昨日オダンさんが言っていたように何かあったからなのか分からないけれど、バタバタと人が出入りしていてとても忙しそう。父さんも母さんもやっぱりまだ働いているのかも。
私がそんな風に思いながらエマさんの手をぎゅうと握ると、エマさんが手を握り返してくれる。
エマさんは商家の使用人と思われる人に声をかけてくれた。
私たちは中に入り、そしてしばらく待たされた後に知らせを聞いた。
父さんと母さんが馬車の事故にあった。
そして、父さんと母さんは、死んでしまったーーー