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【完結】誰が為にシナリオはあるのか〜乙女ゲームと謀りごとの関係〜  作者:
第三章 「前世の記憶 ーinside the game scenarioー」
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45. 休みの終わり

 誰にとっても長かった休みが終わった。


 サラは諦めと覚悟の配分に悩みながら馬車に乗り、リュカは義姉あねの卒業パーティーのパートナーを立派にやり遂げて見せると意気込んでいる。

 馬車には彼らの両親と可愛い妹も一緒で、新しく学院に入学するルネはまだ寮に入るには早い時期のため、入寮出来るまでは両親と一緒に準備してある宿泊場所で過ごすのだそうだ。

 そこは卒業後のしばらくの間、サラが滞在する予定の場所なのだそうだけれど、詳細は卒業後に話そうとサラは言われている。

 正直に言うとサラも卒業後のことに向ける気持ちの余裕は全くなかったから、疑問に思う気持ちはなくはなかったものの有り難いと思って詳しく聞いてはいない。


 エクトルは剣術大会で優勝したというのに、フォスティーヌが片時もサラの側から離れなかったからサラと二人で過ごすことすら出来なかったことに休みの間憔悴したままであったけれど、卒業パーティーが求婚の本番だと気合を入れている。

 一応休みの間に、卒業パーティーで求婚したという騎士科の先輩であるソニエール伯爵家の騎士の何人かには、求婚の体験談は聞いてある。

 誰もが勢いでしたような求婚だということが分かり、とにかく勢いは忘れないでいようと心に誓った。

 ちなみにソニエール伯爵の元にはアルノー子爵から息子リュカには、義姉サラと過ごしたいという男性もいるだろうから、邪魔をしないで見守るようにと伝えてあるという手紙が届いているが、伯爵は息子エクトルにそれを伝えてはいない。


 王太子は休みの間に悩みごとには整理をつけ、レアンドルは無謀に思えた願いが叶いそうなことに気持ちの昂りを感じていた。

 卒業パーティーで決着をつけることにしたのは、それがレアンドルが与えられていた期限であるからなのだけれど、王太子が素直にレアンドルの言葉を受け入れてくれたのは、彼がそれまでに王太子の信頼を勝ち取ってきたからであろう。

 自分を頼りにしてくれている王太子を憐れむ気持ちもレアンドルの中には確かにあったけれど、レアンドルは自分の願い事の方が遥かに大切であったし、それに王太子も恋しい少女を手に入れられるのならば悪い話ではないだろう。

 そう考えればレアンドルの行いは、王太子への恩返しにもなるのではないかと思え、彼は憂なく卒業パーティーに向けて備えることにした。

 

 国王へのアスカム帝国皇子からの手紙の意味を調べることを一任されたアセルマン侯爵は、商人を介してアスカム帝国と娘がいないはずのパスマール侯爵の内情を探っているようなのだけれど、進展があるのかないのか、フォスティーヌはそれを知らされてはいない。

 卒業パーティーにはどうやらパスマール侯爵も参加するようなので、その時に探りを入れるつもりか、もしかしたら手紙を見せることもあるのかも知れない。

 今年の卒業パーティーは保守派の侯爵家は娘息子の卒業でもあるので当主が参加するはずで、

ラファルグ侯爵家当主がもしも来るのであれば全ての侯爵家の当主が揃うことになる。

 慣例的に学院の卒業パーティーへの侯爵家の参加は義務のようなものではあるけれど、当主が参加しなくてはいけないわけではないので、名代が参加することの方が多い。

 パスマール侯爵が今年参加するのはおそらくは王太子が卒業するということに加え、保守派の侯爵家当主が揃って参加するからなのだろうと考えれば、おそらくはラファルグ侯爵も参加するのではないだろうかとフォスティーヌは思った。


 あれこれフォスティーヌが考えているのは、思いついたことを取り留めなく考えることで、思考の迷路に入ることを回避しようとしているからだ。


 ようやく期末試験が終わり、ステファニーのおかげでセリアと話をする場を用意してもらうことが出来た。


 とはいえ、やはり直接会いにいくのは避けた方がいいだろうということで、ステファニーに提案されたのは、セリアの友人であり、彼女をお茶会に招待することを願ったというアンリオ伯爵令嬢のタウンハウスでのお茶会に招待されるという形を取ること。

 そこで、フォスティーヌとステファニーは、セリアと会って話をすることに決め、アンリオ伯爵令嬢には事情は後で話すこととして席を外してもらうつもりだ。


 アンリオ伯爵令嬢はまだお茶会での出来事を知らない。けれど学院を卒業すれば、お茶会に参加していたそれぞれの令嬢たちの立場も変化する。

 それはステファニーの力が及ばずに、いつまでも他言無用が守られない可能性も生まれてしまうものだから、どこかでアンリオ伯爵令嬢が耳にする前に、穏やかな形で彼女の耳にも入れておいた方が良いだろうと思えば、いい機会と言える。


 落ち着いてセリアと話をしなければ、

フォスティーヌは馬車に乗ってから何度目かの深呼吸をする。


 レアンドルから聞いた話は本当のことなのか、冷静に考えなければならないのだから、感情的になってはいけない。


 フォスティーヌは出来るだけ事実だけを見定めるようにしなくてはと自分に言い聞かせ、

アンリオ伯爵家へ向かう馬車に揺られた。

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