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【完結】誰が為にシナリオはあるのか〜乙女ゲームと謀りごとの関係〜  作者:
第一章「長いプロローグ ーbefore the game beginsー」
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1. 婚約破棄?

 「フォスティーヌ=アセルマン侯爵令嬢、あなたとの婚約を破棄します!」


 王太子アルフォンス=パジェスは高らかに宣言した。

 その言葉の広がりとともに、楽しげな会話で彩られていた卒業パーティーの賑わいは静けさに変わった。王太子の声の残響が会話を止めた卒業生たちの頭に沁みていく中、いくつか残ったダンスのステップの音も消え、そして楽師たちも演奏を止めた。

 ホールの端までは王太子の声は聞こえなかったかもしれない。けれど誰もが静寂を守り、給仕すらも動けずに王太子を見つめた。


 静けさを作り出した王太子は、彼の前に立つフォスティーヌを真っ直ぐに見つめていた。

 彼の傍らには子爵家令嬢のサラが身を寄せている。


 「フォスティーヌ、あなたはサラを市井育ちと蔑み、虐めているね」

 その言葉の終わりを待たずに、傍らのサラは弾かれたように王太子の顔を見上げると、慌てたように口を開いた。

 「いえ、それは…!」

 王太子はサラに優しく微笑むと「大丈夫」と彼女の頭を撫で、そして再びフォスティーヌに顔を向ける。

 「優しいサラはあなたをこのように庇う。けれど私は王太子として放置することは出来ない」

 フォスティーヌは王太子の言葉を静かに聞いていた。

 目を逸らすことなく王太子を見つめるフォスティーヌの横顔は美しく、それ故に周りは息を止めた。


 王太子は続ける。

 「このような行いをするあなたと結婚することは出来ない」

 王太子はそこで周りを見渡した。何かを求めるようにゆっくりと視線を巡らせる。王太子の視線を受け、しかしそれでも動くことを恐れるように、周りは身じろぎも出来ずに王太子たちを見ていた。


 王太子は微かに眉を顰めるとサラに目を遣り、そしてフォスティーヌに視線を戻した。

 「私はサラと婚約するつもりだ」

 サラが驚いたように王太子を見た。そして一度フォスティーヌに目を向けると王太子に視線を戻した。

 彼女は王太子に向けて口を開きーーー


  **


 「ーーラ!サラ!朝よ!起きなさい!」


 私を呼ぶ声が聞こえる。王太子殿下?違う。女性の声だ。

 私の体を包んでいた温もりが剥ぎ取られる。

 「ん…待って…」

 私は体を両腕で抱き込むようにして丸まる。


 遠い昔に見た記憶をなぞっていたような気がした。だけど同時にこの先の未来を見ているような心地でもあった。

 過去と未来、夢と現の狭間をゆらゆらと漂いながら、自分の名前を呼ぶ声の方に引き寄せられる。


 「サラ!」

 体を揺すられる感触に抗うように手を伸ばして…

 「…!」朝!

 ーー夜の夢は瞬間霧散した。


 私は飛び起きると傍らを見上げた。

 「おはよう!」

 私の布団を片手に持った母さんの、呆れたような笑顔が目に映った。

更紗「王太子ルートは断罪からの婚約破棄かあ。ベタすぎだけど、まあ王道だよね」

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