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侯爵家 (M



[離婚はしない。

君は何か誤解をしている。

話を聞いて欲しい。

明日は侯爵家に挨拶に行く。


指輪を準備できた。

自分の好きな色だから、つけていて欲しい]



簡潔かつ丁寧に記入されたメモの横に小さな木箱が置かれていた。

明日、義実家訪問をするために帰ってきたのかと。

ついでにお飾りの女をつまみ食いするかと興味本位でやってきたのか。

これまでヒロインと城でライル殿下や他の攻略対象に見つからない様に逢瀬を重ねてきて都合のいい。

お飾りの妻だと思うんだったら、関わらないでよ。そんな悪態をつきながら木箱を開けると、澄んだ空の色の水色の宝石がついていた。

一瞬、スカイの瞳の色を連想させて、連鎖してヒロインを思い出した。

スカイはヒロインの妖精だもんね、会ったことあるのかもね、とか。

そういえばマーテル様も水色だったな髪の色。似ている色を選んだのかもなぁ。


頭が動かないままメモを見入り、気が付けば朝になっていた。



エイラがドレスを、マルタが朝食を三人分持ってきて部屋で食べる。

二人は今日の予定を把握してるのか、エイラはついてくるが、一応予備知識に、と侯爵家の親族の要注意人物を教えてくれた。

宰相の親族であり、現宰相補佐に嫁いだ騎士団長の妹ルリーラに気を付けろ、と。


「あの方は侯爵様と昔から折り合いが悪く、それでいて嫁いだ後も侯爵家にたびたび理由なく訪れては騎士道を説くのです」

騎士家系だから、騎士の家に使える使用人はきちんと心構えを持てと言いつつ本人は昔から非力らしい。志は一人前だとマルタは苦笑いしながら伝えてくれた。

亡くなった先代夫婦が溺愛し過ぎた結果だと。宰相補佐官とは大恋愛の末結ばれたらしい。ちなみに宰相と騎士団長は仲良しらしい。息子どもは犬猿の仲でヒロインハーレムの一員だけどな。



とりあえず昨日の夜の様子を察してる勘の良い二人はレイシャダルの話題を一切出さず淡々と義務的にドレスに着せていく。

落ち着いたクラシック調の深緑色をチョイスして落ち着いた雰囲気を演出。

エイラもちゃっかりおでかけ用ワンピースに着替え、玄関ホールに向かう。

エドモンドが馬車の手配は済んでいると見送れば、レイシャダルは護衛がてら馬に乗って向かうと伝えられた。今は外で待機していると。


「奥様」


見送りの際、留守番組のエドモンドとマルタが微笑む。



「坊っちゃまのことを、よろしくお願いします」


レイシャダルのことを彼らは坊っちゃまと呼ぶのか?

よろしくされても…ねぇ?

とりあえず彼らにはお世話になっているので私は頷いたのであった。




馬車の中ではエイラも無言だった。もちろん私も。

ただ一回だけ、「奥様は伯爵様と一度話してみてくださいね」とお願いされた。

使用人には慕われているんだな、あの色男と窓から見えた茶馬に跨ったイケメンを見ると視線を感じたのか、申し訳程度に視線を送られたのでカーテンを閉めた。


ものの十分で本邸…義実家である侯爵家に到着した。こんなにご近所さんだったのかと馬車から降りると侯爵家の家令らしき燕尾服の男性がメイド軍団従えて豪勢にお出迎えしてくれた。


義父になった騎士団長は仕事がまだ終わらないため少し遅くなるということで応接間に案内されて、レイシャダルの隣を勧められたが当たり障りのない笑みを浮かべ一人がけソファに座る。レイシャダルは二人がけのソファに寂しく座りエイラは私の背後に立つと、なんとも言えない沈黙の時間が続いた。

部屋には家令と私達三人。



「お兄様っ!!お会いしとうございましたっ!!」


メイドに連れられ現れたのは、先日会ったマーテル様で。

「マール!」

マーテル様の顔を見たレイシャダルも嬉しそうに笑みを浮かべる。

両腕を広げて、レイシャダルの体に身を委ねるマーテル様。

マールって愛称で呼んでるじゃねーかと、頬擦りを始め出した二人を尻目に無言を貫き通す家令とエイラ。



「マール、今日の髪の編み込みも綺麗にできてるね。マールは器用だからお兄ちゃん羨ましいよ」

「お兄様ったらぁ!私、最近刺繍を始めましたの!今度お兄様にハンカチを贈りますわ!」

「ありがとう、嬉しいよ、マール!」

「お兄様!マール、お兄様のこと大好きですわ!」

「俺もだよ!可愛いマール!!」


これのどこが浮気現場じゃないのか?

昨晩のことを思い出して多分無表情になっていたと思う。

そんな私のことなんかお構いなしに、スキスキ言い合っては抱きつき合うカップル達。

しかし、男の方は城でもヒロインと同じ様なことしてるんだろ?他にも女いるんだろ?


そう思ってた時、扉が開いた。



目の前に現れたのは派手な貴婦人。

ゴテゴテの飾りやでかいピアス。

扇すらギラギラしてて逆にすごい成金趣味全開の貴婦人は私を一瞥した後、ツカツカとヒール音を立ててバカップルの前までやってきた。



「相変わらず気持ち悪いわね…」

貴婦人の声に肩を震わせるマーテル様。庇う様に抱きしめるレイシャダル。

貴婦人を止めようと駆け出す家令とエイラ。

何が何だかわからない間にレイシャダルが扇で引っ叩かれ、マーテル様の髪を掴み上げて…。

露わになるレイシャダルの兄、義兄と一緒の髪色のおかっぱ。そして貴婦人の手には、水色のカツラ…カツラ?



「誇り高きダルメロ家の四男が引き篭もりの女装癖なんて恥ずかしくて話せないわ!この身内の恥晒し!」


貴婦人はマーテル様に対してカツラで頬を叩いた。


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