花、咲く (M
それからもヒロイン節は続く。マウントですね、理解してます。
「私はレイの悩みを知ってるし、理解してるの!」
「レイのお母様にも会ったことあるのよ?」
「レイはね、見た目細身なのに筋肉割れてるのよ?あんたは見る機会一生ないでしょうけど!」
いい加減飽きてきたなぁー、と上の空で聞いているとドアからノック音がして問答無用で開かれるドア。
ヒロインの運命の相手その一人、レイシャダルが入室してきた。
途端にレイシャダルにしがみつくヒロイン。なぜか頭から紅茶を流してる。
「レイっ!!こ、この子ひどいのっ!レイがねっ、私に優しいからって…人の旦那を取るな、泥棒って言ってぇ、髪の毛にぃぃ!!」
「サクラ様!?お怪我はっ!?」
「ふぇぇん!熱いのぅう!ねぇ、レイっ!ひどいと思わない?」
見つめ合うヒロインと攻略対象。絵になるなーとジト目で二人を見ていると、背後に控えたエイラがに白けた目で頷く。ヒロイン指差して、紅茶持つ仕草をして頭を叩く。何そのジェスチャー面白い。
夫は駄目な思考だけど、侍女のエイラとは仲良くなれそうだなぁ〜と小並感。
「サクラ様、ベルは壁に立っていますが…?」
「わ、私に八つ当たりした後ぅ、レイが来るとすぐにあっちに行ったの!!ひどいと思わない!?」
無茶振り過ぎるぞ、ヒロインや。
すぐに騒ぎを聞きつけて、ライル殿下達もやってきてね、ライル殿下が来るとすぐにレイシャダルから離れてライル殿下に抱きつくヒロイン。
「レイの奥様に虐められましたわぁ!」
「な、なんだとっ!?君もなのか!?君もサクラが気に食わないと言うのか!?」
ヒロインを抱きしめ、ヒーロー面して私を睨みつけるライル殿下。さながら、私は悪役令嬢になった気分よ。
「殿下、妻も悪気があったわけではありません。俺は結婚した身、今までの様に学生の気分で交流して欲しくない。そんな願いを頼んでいた際に謝って持っていたカップが滑って頭に…。ねっ、そうだよね?サクラちゃん」
そうだよね、のトーン、甘くね?
なんでライル殿下に抱かれながらレイシャダルを見る目が潤んでるんだよ、このヒロイン。
「俺の中でサクラちゃんはサクラ様になったんだよ。蕾が花開く様に、君はライル殿下の隣で咲き続けるんだよ」
とか、言いながら浮気続行するつもりですね、わかります。
「…ライル殿下、俺の願いです。俺の可愛い妻のベルを許してくれないでしょうか?ベルはただ一途に俺の事を想って…!」
ねーよ、と、第三者目線でヒロインハーレム見てたんだ。
ヒロイン、お前さっきと言ってること違うぞ、早速人のこと悪者にしたな?と思うところはある。
ライル殿下、わかった、じゃねーよ、即決かよ。
「ただし、お前の妻であろうと二度目はないからな!」
「ふぇえ!ライルぅ〜」
「ご慈悲を感謝します」
なんだよ、この茶番!!
いい加減コルセットがキツイなぁ〜とうすら目を閉じたり開けたり。
最後に見えた光景は、焦った表情のレイシャダルの姿だった。