表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/39

お飾り妻 (M


結局会話がなぁなぁに終わり、気がつけばあっという間に結婚式当日。


両家の顔合わせは?やら、ドレス、サイズぴったりなんだけど?とか疑問は多数ある。


当日参列したのは騎士団長である義父にあたる侯爵と、騎士団長と同じ髪色からして長男らしき美男(ただし顔つきは全く違う)と銀色の髪色の美女。きっと奥さんなんだろう、王太子妃の従兄弟の。

会話する間も無く教会で誓い合う私達。


愛を育むってなんぞや?なんでこうなった?説明してくれてもいいはずの放蕩子息はニコニコ笑ってばかりで話にならない。と言うか、卒業パーティー、二回目の顔合わせ、三回目で結婚式って急ではありませんかね?


参列席には緑髪の攻略対象、茶髪のマイル殿下、ライル殿下とヒロイン、マイル殿下の隣に金髪美男子が座ってる。最低限の人員。

突貫工事も良いところよね、卒業して四日後に結婚式って普通ありえないからね?

私の家族は前列にいるのに、縮こまってるしね。

淡々と行われた流れ作業の様にヴァージョンロードをエスコートされながら逆走してると入り口の前までやって来て立ち止まる。



「今日から君は俺だけのベルだね」

マリーが家族からよばれる愛称のはずなのにな、勝手に決めるなと目を細めれば頬を染められ。

指輪はオーダー間に合わなかったと場違いな謝罪を貰った。



お披露目は後日、新居に向かうにあたり簡易ドレスに着替えるという事で母と新居から呼んできたパステルクリーム色の髪色の侍女、エイラと一緒に案内シスターに連れられて控室に辿り着けば部屋の中にヒロインという住民がソファに踏ん反り返っていた。



「ねぇ、お茶とお菓子!」

部屋に入るなり、シスターに向けて睨みつけて一言。

ヒロインが王子の婚約者だと理解していたのか、シスターが即座に動き部屋を後にした。

実母と私はその光景を唖然として眺めていて空気の様に壁に立っていた。

侍女であるエイラもちゃっかり私の隣に立ってソファを無言で見つめていて。

シスターを待つ時間が長く感じた。



多分数分経ってないと思う。

シスターがトレーに乗せて小さな焼き菓子と紅茶を三つ持って机に置くと、待ちくたびれた様にヒロインは焼き菓子を食べ始めた。


「ねぇ、私とこの子以外出ていって」

紅茶を一つ飲み干し、私を指差すと「妖精の愛し子でライル様の婚約者の私のいう事聞けない?」ヒロインさながらのぶりっ子スタイルで物申した。両手をグーにして顎下に置いて首傾げてる奴ね。


「サクラ様、不躾ではありますが…私は伯爵様から奥様のドレスの着替えの命を受けております。コルセットを普段よりキツく縛っているため、奥様は現在お辛い状況でして…せめて着替える時間を頂けないでしょうか?」

せめてさっきの無言の時間に話してくれたら良かったのにな!?と助け舟を出してくれたエイラに実母も頷き、なんなら後日でも良い、むしろ関わりたくないとこちらも必死の抵抗で潤んだ顔してヒロインを見た。



「はぁ!?たかがメイド風情が私に命令するの!?あんた何様よ?奥様って所詮お飾りのモブでしょ!?コルセットが辛いとか貴族向いてないんじゃないの?何?数分も立てないくらい辛いわけ?今まであんた何して生きてきたのよ!?」

「サ、サクラ様、落ち着いて下さい…」

「うるさいわね、シスターのくせに!精霊の愛し子でライル様の婚約者の私のいうことが聞けないってわけ?私がライル様に言えば子爵家なんかすぐ没落出来るんだからね!オバさんも黙ってないで早く出ていきなさいよ!」


なんでこんなにヒロインがキレてるんだ?あれ?私この子に何かしたっけ?とぽやっと考えていると、隣の実母が「オバさん…オバさん…」と小声で呪文を唱え出した。

侍女のエイラも舌打ち聞こえて振り向くと笑顔だった。

シスターの顔は見えないけど俯いて空になったカップを回収すると、すぐに部屋を出ていった。


私と二人にならないと会話が始まらない。

実母とエイラにひとまず退室してもらって(二人は最後まで渋っていたが)、私はヒロインと対面のソファに座ろうと目の前までやってきた。



「あんた子爵令嬢でしょ?私より偉いの?なんで座ろうとしてるの?立ってなさいよ、さっきみたいに壁にさ」


この女、ヒロインで大丈夫か?


思わず脳内ツッコミをしながら、とりあえず愛想笑いをし、先ほどいた壁に寄り添う。


そんな私に口角を上げて微笑むヒロイン。





「あんたがなんで選ばれたか知ってる?」


「あんたがローゼの取り巻きじゃないからよ。あんたが同級だってこと知らないくらい影が薄くて害のない、地味な存在感のない女だったからよ」


「あんたがレイの愛情を受けてるって思ったら大間違いなんだからね!私は毎日レイとあってるのよ?レイはね、私のことを愛してるの。でも、ライルもアンもセリーもあの人も私を愛してるの。この国は王族でも相手は一人しか選べないでしょ?だからアンもセリーもレイも私をお嫁さんにすることを諦めたの。でも、私は愛されてる!!」


「あんたはレイにとってお飾りの愛されない妻なのよ。私に認知されなかった害のない存在だったから、たまたま候補に上がっただけ。あんたはこれからも一生、レイに愛されることなく、私たちに迷惑をかけることなく生きなさい。変なことしたらライルにすぐ言うし、私は王妃になる人間なのよ!」



レイシャダル、あの男、このヒロインで良いのか?性格破綻してねーか!?

そうか、お飾りの愛されない妻かぁ〜。



「返事はぁ〜?」


「承知しました」


私は咄嗟に反応して。




全てを理解した。



真実の愛を貫くための体のいい防波堤なのだと。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ