私の人生はつまらなかった。
朝、人を殺した。殺した人は見る限り中年サラリーマンだ。自分がこんな朝を迎えるなんて想像もしてこなかった。
私の名前は四宮のり、年齢は17で現在は双葉高校の2年生だ。成績は普通で友達も普通にいる。特技もなく趣味もドラマを見るだけで、性格も自分で言うのもなんだけど普通で面白みもない。こんな私が人を殺すとは思ってもみなかった。
遡ること1時間前、私は普通に朝起きて身支度をし、母が作った朝ごはんを食べ、家から出た。私の家は他の子より辺鄙な場所にあるので、毎朝電車を乗って学校に行かなければいけない。家から最寄りの駅まで徒歩で15分だ。遠くもないし近くもない。私は自転車が漕げないので毎朝徒歩で最寄りの駅まで向かう。
今日もいつも通り、音楽を聴きながら歩いていたらいきなり知らないおじさんに抱きつかれてしまった。
私は咄嗟に声を出そうとしたが、人間は本当に怖い時、声すら出ないらしいと言うことをその時習った。そのおじさんの力はとても強く到底私の力では抵抗できなかった。私は恐怖に震えながら自分に何ができるか周りを見渡した。私はその時、目に入った瓶ビールの瓶を咄嗟に持ちそのおじさんの顔面めがけて後ろ向きに瓶ビールを投げた。
パッシャーンと言う音と共に抱きしめる力が弱くなった。
私はその隙を狙い、おじさんから離れた。
おじさんの顔は血まみれで意識はないようだった。私は人間は弱いなと思った。
その後、何秒か呆然とし、今自分がいる状況に対しやっと恐怖感を感じた。
私は人を殺したのだ。
いや、まだ決まってない、ただ気を失っているのかもしれないと思った。私はすぐさま駆け寄りとりあえず息をしているか確認した。
息はしてなかった。
私は絶望した。私の中ではすでにいろいろな考えが巡り、私の妄想の中では私は既に無期懲役を言い渡されていた。私は辺りを見渡した。私はいつも最寄りの駅に向かうとき、誰もいない裏路地をよく通ることがある。私が襲われたのはまさにその裏路地だった。
誰もいなかった。本当に誰もいなかった。まるで私とこのおじさんだけが存在してる世界みたいだ。
それぐらい静かだった。私は周囲に防犯カメラがないか、まるでドラマの犯人みたいな行動をし始めた。でもその行動はすぐにやめた。私は直で瓶ビールをもち、相手に投げ付けた。その時点で犯人は私確定だ。私の行動は正当防衛の範囲を超えてしまったので懲役は避けられないだろう。私はそのおじさんの横にしゃが見込み考えた。
思えば私の人生はつまらなかった。
普通の小中学校に通い、高校も受かる範囲の学校を受けたので達成感も無く、高校デビューとは程遠い人生を送っていた。かといっていじめられもせず、友達も数人いるので悲劇のヒロインという感じでもなかった。家族にも愛されており毎日お弁当を作ってくれる母親も誕生日にはちゃんとプレゼントを送ってくれる父親もいる。だけど私は自分の人生がつまらなかった。したいこともなく、将来の夢もない私にとって学校の勉強は嫌いだった。
私は自分が生きている意味がよく分からなかった。
一回、自殺対策の広告で 「あなたがいなくても世界は変わらないが誰かにとってはとても変わるだろう。」というのを見たことがある。私はその時この言葉をこう捉えた。
あなたが生きてても死んでいても世界は変わりません。なので私たちはそういうことに一切立ち入りませんので知っているもの同士でどうにかしてください。
随分薄情な広告だなと勝手に思ってしまった。第一自殺を考えたことない人が自殺対策の言葉を考えても意味がないと思う。死にたい時に死んだ後にそういうことを聞いたほうがいいと思う。まあ、死人に口なしだけど。
そんなことを考えていたら、急に大丈夫ですかという声が聞こえた。私は一瞬体がちぢこまり、全てを諦めた。逃げ出したかったがそんな事をしたら、もっと怪しいので動かないことにした。歩いてくる音とともに私の汗が吹き始めた。
私は怖いのだ、全てを諦めたと思っても心のどこかでは普通に生きたいのだ。
その人の足音が止み、私はなぜか祈りながら立ち、その人の方を向いた。その人は性別不詳で年齢は20代後半ぐらいの人だった。私はその人に対し信じられないほどの寒気を感じた。その人は何も言わずただ微笑んでいた。
不気味だった。逃げ出したかった。でも足がなぜか動かない。私は半泣き状態だった。
そしたらその人がこう発した。
私は神です。あなたを救いにきました。
第一章 〜完〜




