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7.次の挑戦者の気配

 先ほどの冒険者が立ち去ると、僕は再びハルカの側に座っていた。

 彼女は先ほどと同じようにゴブリンを作っているのだが、真剣な表情で指先を動かしたり、視線を変えたりしているのを見ると、何だか微笑ましく思える。


 今まで彼女を作ったことすらなかった僕からすれば、女の子の側に寄り添って同じことをしているということが奇跡に近い。人外として人々から差別されている現実はつらいものだが、同じ境遇の彼女がいるのだから、頑張ろうという気分にもなる。


 彼女は慣れた様子でゴブリンを作っていたが、途中で不思議そうな顔をした。

「なんででしょうか。先ほどよりも早く作れたのは慣れでしょうけど……少ない負担で作れた感じがします」

「それだけじゃなくて、動きも少し滑らかになってないかい?」

「確かに……」


 ゴブリン型ガーディアンが5体完成すると、僕はミニユニコーンに統率の命令を出した。

 するとミニユニコーンは、ゴブリン5体を引き連れて入り口付近に向かっていく。これでとりあえず、ちびっ子が探検しに来ても追い返してくれるだろう。


 さすがのハルカも、立て続けにゴブリンを10体も作ったためか疲れた表情をしていた。

「何だか、少し眠くなってしまいました……」

 僕は横になると、彼女が寝やすいように体を寄せた。

「ありがとう……ございます」

 彼女は僕の腹部で横になると、そのままスヤスヤと寝息をたてはじめた。本当に疲れていたんだなと思う。

 それにしても、元々顔立ちが整っているせいか、寝顔がかわいいものだ。



 僕もまた首を下げてウトウトとしていたら、いつの間にか周囲は夕方になっていた。

 ああ、これから長い夜が始まるのか……と思うと、今夜は生き延びることができるのか不安に思えてきた。

 昨日実家を出てから、この時間まで生き延びることができたのも、強い冒険者……特に勇者と呼ばれる者たちと当たらずに済んでいるだけである。


 自分では到底勝てないような相手と遭遇したら終わる。

 そう考えるだけで身体が震えたが、僕の肩にはまだ無防備に眠っているハルカがいた。もし、僕がやられたら……勇者という連中は彼女を見逃すだろうか。

 否。ダンジョンに人外がいるのだから、モンスターと同じ扱いを受ける。


 今までは、人殺しをしないで済んできたけれど、いつまでこういう戦いができるかわからない。もし、そうする必要が出てきたとき、僕に冒険者たちの命を奪うことができるだろうか。僕はもう……人間ではないんだ。冒険者たちはためらうことなく、僕をきっと殺しに来る。


 そう考えた直後に、僕の分身であるミニユニコーンの気配が消えた。

 ほぼ同時にハルカも目を開けていた。恐らく、ゴブリンにも異変があったのだろう。彼女はすぐに起き上がって僕を見た。

「ショーマさん……」

「わかっている。かなり手強い冒険者が乗り込んできた」


 僕もまた身を起こすとハルカは言った。

「ゴブリン2匹の気配がいっぺんに……また1匹消えました」

「高威力の攻撃かな? それとも……スピードタイプ?」

「わかりませんが……ゴブリンが全滅するまでに10秒しか持ちませんでした」

「僕を盾にして。直接きみを狙ってくるかもしれない」


 ハルカを後方に下げると、僕はしっかりと周囲ににらみを利かせた。敵が必ず正面から来るとは限らないからだ。

 神経を研ぎ澄ましながら周囲を監視していると、その姿を嘲笑うように冒険者はゆっくりと最短ルートを通って僕の前に姿を見せた。


 侵入者は長剣を持つ剣士だったが、顔立ちが整っているだけでなく毛皮を上手く着こなしており、ファッションセンスを感じる人物だった。

 その剣士は、僕をどこか見下した様子で睨んできた。

「へぇ……どんなのがボスエリアにいるかと思ったら……」


「期待外れだったのなら嬉しいな」

「ああ、ただ角の生えただけのウマなんて興覚めだね……もっと凄い奴かと思ったよ」

「それなら、何もしないで帰って欲しいものだね」

「頼み方次第かな……俺様の靴を舐めるのなら、考えてやってもいいぜ?」

 剣士は不敵に笑った。

 この余裕と威圧感。恐らく、この剣士はプロ冒険者だろう。それに仲間をひとりも連れていないことから、自分の実力には相当な自信を持っていると見える。

 どこか人……特に人外と言われる僕たちを小馬鹿にしている様子から、止めを刺す際にも全く葛藤のないタイプではないかと思えた。


「冒険者は自分の立場が有利な時は、約束を守らない」

 言葉を返すと、剣士はこいつ……おもしれえと言いたそうに笑っていた。

「わかってるじゃねえか魔獣……この東の刃のブラックジンさまがテメーの角を奪い取ってやるよ!」

 そう言いながら、剣士は抜刀した。

ハルカ

固有ギフト:

サモンガーディアン B  ★★★★★

土と自分のオーラを合わせることで、ガーディアンを作ることができる。その性能や強さは作り手のレベルに比例して上がっていき、より強いオーラを込めることで強力で頭のいいガーディアンを作れる


分身製作サポート  A  ★★★★★★★★

側にいるだけで、仲間が分身を作り出すことを可能とする。主人公ショーマがミニユニコーンを作れたのは、彼女のサポートがあったおかげである。



近距離戦      C  ★★

魔法戦       C  ★★★★

飛び道具戦     D  ★  

マジックシールド  B  ★★★★★

防御力       C  ★★

作戦・技量     C  ★★★

索敵能力      B  ★★★★★

行動速度      C  ★★

勝利への執念    C  ★★  

経験        D  ★  


好きなモノ:フィギュア作り、編み物、あやとり、デッサン、料理(指先を使う作業全般)

嫌いなモノ:遊びグセの強い男子、うるさくて知性のない男子、パーソナルスペースを侵害する男子(イケメンも不可 ※ただし恋人は除く)



一言:

複数のギフトを持っている人物。人外系なら10人に1人くらいの割合でこういう人物はいる。

元々、争いごとを好まない性格なので、ショーマのようなバトルタイプを味方につけられるかが生き残りのポイントとなる。


人外となってしまったことで不登校になり、家に置いておけないと家族から追い出され、路頭に迷っているところでショーマの噂を聞きつけたようだ。


ちなみに性格は内向的で、勉強はできて運動は苦手というタイプ。引きこもっていたときは、本当に家事手伝いをしていた模様。妖精族の姿となってからは、よく幽霊の類を見るようになったとか……

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