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5.妖精族の少女

 彼女は夜中の雑木林の中で、息を切らせていた。

 髪の毛はボサボサで、着の身着のまま逃げてきたという様子である。一体彼女の身に何があったのだろう。

 なぜ、この少女を人外と表現したのかと言えば、背中にチョウチョのような形状の透き通った翼があり、耳も尖っていて、髪の毛の色は緑色、瞳の色はライム色という日本人離れした姿をしている。


 彼女は、暗闇の中にも関わらず、僕の姿を見るとまっすぐに駆け寄ってきた。

 角は光らせていないのによくわかったな。そう思っていたら、少女は僕の前で止まって、少し不安そうに上目遣いになった。

「貴方も……異形スキル持ちの方ですか?」

「そうだよ」

 正直に答えると、その少女は安心した様子で表情を和らげた。


「僕の名は翔馬。今はダンジョンで煽りウマをしている……何か用かい?」

「実は、さっき……実家から追い出されたんです。アンタみたいな子は娘じゃないって……」

 だから着の身着のままという様子で、ここまで走ってきたのか。

 自分の角に意識を向けても、特に警告をしてこないので多分だけど大丈夫だろう。


「僕も訳アリだよ。この先にダンジョンを見つけたんだ。とりあえずそこで身を隠そう」

 そう提案すると、彼女は嬉しそうに微笑んだ。

「助かります……私のことはハルカと呼んでください」


 僕はハルカの隣を歩きながら、ダンジョンゲートへと案内した。

 彼女の身長は160センチほどなのだが、背中に透明なチョウチョの翼があるせいか、かなり大きく見える。

「ここを通るんだよ」

「は、はい……」

 彼女はオドオドした様子で、僕の胴にしがみついたままダンジョンへと入った。


 そのまま、ボスエリアと呼ばれるところへと向かっていくと、ハルカは不思議そうにあたりを見回していた。

「ここ……他の場所とはマナの密度が違いますね」

「うん、さっき追っ手と戦ったとき、プロの冒険者がボスエリアと言っていたよ」


 ハルカは「ボスエリア……」と呟くと辺りを見回しはじめた。

「……ショウマさん。私なら……このダンジョンにガーディアンを置くことができるかもしれません」

「ガーディアンって、人間から見たら魔物?」

 そう聞き返すと、彼女は少し困った顔をしながら頷いた。

「そうなるかもしれませんが……私は無暗に人を傷つける気はありません。ガーディアンはダンジョンから出ないように、また……入ったばかりの時には警告の立札も作る……そうすれば……」


 なるほどと思った。

 確かにそうすれば、迷い込んだ人はすぐに引き返すだろうし、最初の敵を弱めにしてもらえば、いたずら盛りの子供が乗り込んできてもつまみ出すことができるから、復讐の連鎖という厄介なモノに巻き込まれずに済む。


「とりあえず、何か作ってみてよ」

「それなら……まずは、ゴブリン型のガーディアンはどうでしょう?」

 ゴブリンと聞いて、僕はうんうんと頷いた。

 ダンジョンと言えばやっぱり脇役モンスターのゴブリン選手だ。彼を外すことはできないだろう。


 彼女は深呼吸すると、両手を地面に当てて気を体中に纏いはじめた。

「いでよ……ゴブリンガーディアン!」

 そう言い終えると、彼女の目の前には子供くらいの大きさの小鬼。ファンタジーアニメなどでお馴染みのゴブリンが現れた。

 全身が緑色で、耳は尖っているが、あまり強そうには見えない。


「それで、コイツに命令を出すわけか」

「そうです。まずは……持ち場から絶対に離れないこと。それから、人を見たら捕まえる。殺してはいけない。仲間を攻撃してはいけない」

 そう言いながら、彼女はゴブリンの背中に書き込んでいくと、ゴブリンは頷いた。


 ハルカは次々とゴブリンを作ると、そのたびに書き込んでいたが、僕は少し考えてから言った。

「ゴブリンに同じ指示を書いているよね……一括命令はできないのかい?」

「ええと……どうやればいいんでしょうか?」


 僕は少し考えると、ハルカにタテガミの毛と、尻尾の毛を抜かせてから、それを地面に置かせて馬の形に再錬成させた。

 すると、体重50キログラムくらいの仔馬ユニコーンが現れ、ハルカにお辞儀をしている。


「この僕の分身を隊長としてゴブリン隊を指揮させる。一括命令はまとめて分身に書き込めばいい」

「なるほど……そうすれば、命令文を書くのは1回で済みますね」


 ハルカは突っ込んでこなかったが、この方法にも問題はある。もし隊長のユニコーンガーディアンが倒れればどうなるかという話だ。

 恐らく、ゴブリンは勝手気ままに動き回って暴れるだろう。僕はその問題が起こることを見越していたが、あえてそのままにすることにした。

 そもそも子供では、僕の分身を倒すことはほぼ不可能だから安心だし、うかつに分身を倒した冒険者に対しても、僕がいなくなったときに、モンスターの制御ができなくなるという警告を与えることができる。

ミニユニコーン

固有ギフト:なし

翔馬が作り出した自分の分身。自動的に戦況を判断して手下のモンスターに指示を出す。



近距離戦      C  ★★

魔法戦       E  

飛び道具戦     E  

マジックシールド  C  ★★

防御力       D  ★ 

作戦・技量     D  ★

索敵能力      D  ★

行動速度      C  ★★

勝利への執念    E  

経験        E  


体重:50キログラム 肩までの高さ:85センチメートル

使用可能スキル:命令


一言:

命令と偉そうに書いてあるが、実際のところはガーディアンが勝手に暴れ出さないように監視、命令をしている存在。

戦いでは常に最後尾にいるため、倒すには飛び道具を使うしかないが、プロ冒険者か、学生冒険者が飛び道具で正確に狙い打たないと、簡易マジックシールドなどで防がれる。

なお、ガーディアンが全滅する前には逃げ出す判断もするため、意外と壊れていない状態で捕まえるのは難しい。


逃げ足の速度。時速30~40キロメートル。

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