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32.五区悪一行の動向(語り部:ボンクラ教師)

 学校の電話が鳴ったのは、午後1時を少し過ぎたころだった。

 対応したヅラ教頭は少しずつ表情が険しくなり、視線を私に向けてくる。


 その雰囲気だけで、うちのクラスメイトの誰かが悪さをしたのだと直感した。恐らく、人外化している五区悪あたりだろう。

 ヅラ教頭は電話応対を終えると、私のところまで来て耳元でささやいた。


「凡九等先生。五区悪が複数の不良を引き連れて通行人を襲ったようです。先ほど警察から連絡がありました」

 やはり奴だったか。恐らく不良というのも人外化したろくでなしどもなのだろう。

 そう思いながら、私は頷いた。

「わかりました。すぐに警察署に行ってきます」

「私も行きます」


 間もなく私とヅラ教頭は車に乗ると、警察署へと向かった。

 警察官に話すと一室へと我々は通され、対応した警官は近所の家に備えられていた防犯カメラの映像をはじめとした、様々な物的証拠を用意して待っていた。


「……と、まあ……このような感じなのですが、こちらの生徒さんはA組の五区悪君ですよね?」

 私はもはや言い逃れは出来ないと感じて頷いた。

「ええ、まさか……五区悪がこのようなことを……するとは……」


 自分で言っておきながら、白々しくもよく芝居ができると感心した。

 奴は教員の間でも問題児の中の問題児として知れ渡っていた。表立って非難しないのも親の耳に入ると面倒なことになるからに過ぎない。

 クラス分けを行った際も、一般的な不良生徒3人分くらいと同じ危険度ということで、私のクラスの担当となったときには、他に手足となるような不良生徒を混ぜないようにと慎重を期したほどである。


 ヅラ教頭も困り顔で聞いた。

「五区悪は……いまどこに?」

「恐らく、雑木林の中にあるダンジョンでしょうね。彼らは他にも近所のスーパーやコンビニエンスストアでの集団万引きや、通りかかった女子中学生の誘拐未遂事件も起こしています」


 隣にいる警察官も言った。

「これほど問題を起こしているのでは、もはや冒険者に依頼して捕まえるしかありません。近々大規模な人外捕縛作戦を行う予定です」


 思わず隣を見ると、ヅラ教頭と目が合った。

 これほどのことを仕出かしているのなら、もはやどうすることもできないだろう。一度、人外用の少年院にでもぶち込んだ方がいい。

 ヅラ教頭も頷いた。

「こうなってしまっては……仕方ありませんね。わかりました。両親には我々から……」


 そう言いかけたとき、警察官は厳しい表情を向けてきた。

「いいえ。この件は両親には伏せてください」

「どうして……でしょうか?」

 警察官は周囲を見渡すと、小声でささやいた。

「別の事件なので詳しくはお話できないのですが、調査の手がプロ冒険者の五区悪家に伸びています。ここで息子さんを軽犯罪で逮捕し……事情聴取を行いたいのです」


 なるほど。いろいろと黒いうわさは聞いていたが、あの面倒でやかましいモンスターペアレントがいなくなるのなら、こちらとしても助かるものだ。

 ヅラ教頭は渋い顔をしていたが、私は頷いた。

「わかりました。五区悪をよろしくお願いします」


 ヅラ教頭は本気か!? と言わんばかりの顔をしていたが、私は涼しい表情を返した。

 あくまで不正を許さない厳しい教師だと思ってもらわないとな。本心では、あの忌々しい一家が破滅していく姿を眺めたいだけなのだが……


 外で何かが飛び立った気がしたが、夕やみ空を見ても何もいなかった。

 気のせいだろう。

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