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2.孤立無援の一角獣

 デモ隊を通り抜けると、彼らは次々と看板を下ろして家へと帰りはじめていた。

 要求通りに僕が出て行ったのだから、もう抗議する意味もないということなのだろう。今まで何度も見てきた故郷ともこれでお別れだ。


 人外がいなくなったことで落ち着いた自宅付近とは違い、今度は道行く人たちが僕に敵意を向けてきた。

 カーテンの隙間から、僕が悪さをしないか見張る人がいたり、僕とすれ違うのが嫌みたいで慌てて道を変える人、僕のことを指さして「あくま!」と叫ぶ子供、慌てて走って来て「見ちゃいけません」と言いながら家へと連れ帰る母親。


 そういえば思い出したことがある。

 15歳の目覚めの日に人外になってしまったから、そのまま命を絶つ人が毎年必ずいるという。そこまでする必要ないじゃないかと当時は思っていたけど、こうしてみると彼らの気持ちがよくわかる。

 この形になってしまうと、進学も、就職も、結婚も、家を借りることも、買い物をすることも、外を自由に歩くことさえ許されなくなる。理由は人外はダンジョンの魔物と同じだからだ。凶暴化して人を襲いはじめるのだという。

 人としての戸籍を持った悪魔……か。


 そんなことを考えながら歩いていると、僕に後ろ指をさす女子中学生たちがいた。

「あ、見て……人外がいる!」

「あれって、目覚めの日の前にダンジョンに入ったからバチが当たったんでしょ?」

「入ってないよ! 生まれて一度もね」

 否定すると、女子中学生たちは怯えた様子で僕を見てきた。


 何もしないで立ち去ったが、女子中学生たちは抱き合って震えながら言った。

「ど、どうしよう……人外と話しちゃった。人外と話すと人外になるんでしょ」

「お、お祓いに行こう! いい神社さん知ってるよ!!」

「そうだよね。神社に行けば人外にならずに済むっていうし!」



 隣町まで、歩みを進めていくと雑木林を見つけた。

 ここなら食べられそうな草も、身を隠せる場所もありそうだ。僕は子供の頃に探検したことを思い出しながら、中へと踏み込んだ。

「とりあえず、ここにいれば安全かな……?」


 そう言いながら、その辺の葉っぱをかじってみると……えぐみと臭みがあって、あまりおいしいものではなかった。

 そうか。普段食べている野菜というのは、たくさん生えている草の中で、特に美味しかったものを昔の人が集めて改良してくれたからか。僕たちって……そういうご先祖様のご厚意で良い暮らしができていたんだな。


 そんなことを考えていたら、角が光って意識の中に文字が流れ込んできた。


【アメリカセンダングサ】

 どうやら食べることはできる草のようだ。ただゆでる必要はあるが……


 こんなことまでわかるなんておもしろい。そう思いながら様々な草をかじってみると、次々と草の名前が頭の中に浮かんだ。多くのモノが食べられるようだが、中には毒草と呼ばれるモノも口に含んでいた。

 そして毒草とわかると、角が青色に光を放ち、僕の身体の体調を整えてくれる。これは、キュアコンディションと呼ばれるユニコーンの特殊能力のようだ。


 では試しにと思いながら、近くに生えていたキノコをかじってかみ砕いて呑み込むと、さっそく角は光を放ってキュアコンディションが自動発動していた。


【ツキヨタケ(猛毒)】

 おう吐、腹痛、下痢などの症状を引き起こす毒キノコ。食用のキノコと似ているため、頻繁に誤食してしまう事例が報告されている。

 説明文を読んだ直後に、更にスキルが発動した。


――治療系スキル獲得、窒息防止、おう吐発動


 僕は直後に、毒キノコを吐き出していた。スキル扱いだったということは、普通のウマでは誤飲したモノを吐き出すことは出来ないということなのだろう。

 とにかく、危ないモノを食べるのは止めよう。胃液が口の中に入って来て気分が悪いし、角の力でどんな毒も中和……という訳にはいかなそうだ。



 雑木林の中で、様々な野草を口にしていると、何やら入り口付近から人の臭いを感じた。

 一体何だろう。そう思いながら耳をその方角に向けてみると、近所の人間たちと思われる人々が、何やら小声でささやき合っていた。

「この森にさっき……人外が入り込んでいたんです」

「本当だ……ウマの足跡がある!」


 その声が聞こえてくると、今度は別の野太い男の声が聞こえてきた。

「すぐに警察に連絡してくれ。冒険者として人外を捕まえる……この際、生死は問わないぜ!」

「お、俺たちも行きます! 人外どもを倒すために冒険者を目指しているんですから!」

「おお、その心意気……気に入ったぜ、是非協力してくれ!!」


 冗談じゃないと思いながら、僕は辺りを見渡した。

 この雑木林の周りには、いつの間にか大勢の人が集まっており完全に包囲されている。この世界は……僕に食事をとる時間すら与えてくれないのか!?

府中翔馬 男/牡 15歳/2歳馬

固有ギフト:

ウォーターホーン  A  ★★★★★★★

水の加護を得ることによって知力や精神年齢を上昇させ、穏やかな性格にする。

また、ユニコーンの基本能力と言えるヒーリングとキュアコンディションの効果量を増やし、消費MPを半減させる効果もある。


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情報不足により仔細は不明。



近距離戦      C  ★★★★

魔法戦       B  ★★★★★

飛び道具戦     E  

マジックシールド  B  ★★★★★★

防御力       C  ★★★ 

作戦・技量     C  ★★★

索敵能力      A  ★★★★★★★

行動速度      B  ★★★★★

勝利への執念    D  ★

経験        D  ★


好きなモノ:甘いモノ、子供

嫌いなモノ:ピーマン、セロリ

体重:450キログラム 肩までの高さ:160センチメートル

使用可能スキル:ヒーリング、キュアコンディション、350度監視、嗅覚1000倍、ナイトビジョン


一言:

黒毛の一角獣となった中学3年生。治癒術など便利な能力を持っている存在だが、この世界の人間は残念ながら人外としか見なしてくれない。

15歳になるまではごく普通の学生で友達もいたが、この姿になったことで全てを失った。今は善悪を越えた環境で生きている。


近接戦闘と魔法戦の才能を持っているため、蹴りながら魔法を放つという行動が可能である。経験が低い状態から、高い能力を持っているため、どのような成長を遂げるのか注目だ。



S=★10個以上 生物の限界を超えた能力。

A=★7~9個  その分野でのスペシャリスト。素養を持つ者が昼夜を惜しまず努力してなれる

B=★5~6個  冒険者の中で及第点と言える数値。一般人でこの数値があれば天才肌の持ち主

C=★2~4個  新人冒険者や学生なら武器といえる数値。弱い敵ならこれでも十分

D=★1個    素人レベル。他に十分な強みがあれば弱点を補うことも可能

E=★0     明らかな弱点。その分野で勝負されると敗北は必至

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