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凡九等の私的なつぶやき(語り部:ボンクラ教師)

 23時を過ぎたころ、私はやっと自宅へと帰った。

 なぜこんな時間になったのかと言えば、モンスターペアレントの五区悪ファミリーと、心配性の親バカペアレント普通子の親どもの家を、続けて訪問したためだ。


 五区悪ファミリーは、自分たちの子供の育て方には何ら非はない。どう見てもこれは学校側の対応に問題があったからだと捲し立ててくるので、ベテラン教師である私も対応に苦慮した。

 世間的には勇者に近い男とか言われているが、五区悪一家どもは人外と変わらない……いや、変に権力を持っているだけあって、下手な人外よりも厄介だろう。


 それに普通子の親、特に母親も泣きながら訳の分からないことを言ってくるから、翻訳が大変だった。人外化した張本人も部屋から一歩も外に出てこないから、こちらも対応に困ったし勘弁してほしい。


 結局、共通して言えていることは、府中の奴を教室に入れた学校側の責任。ということになりそうなのが一番の問題だ。

 モンスターペアレントどもは教師は暇だと思っているのだろうが、こっちだっていろいろと仕事があるのだ。府中は比較的早く登校するような奴なのだから、校内に入れるなという方に無理がある。


 まあ、とりあえずこの件は、私の指導責任ではなく、体がウマ化するような化け物の府中翔馬が元凶ということで、モンスターペアレントどもを黙らせるしかない。

 特に、五区悪一家は冒険者なのだ。連中が十分に、雑木林や河川に巣食った人外どもを討伐できないから、府中のような生徒が現れるのだ。今度連中が騒ぎ立てたら、絶対に言い返してやる。



 私は日常のゴチャゴチャしたことを忘れ、缶ビールを片手にテレビを付けた。

 ちょうど映ったチャンネルではドキュメンタリー番組がやっており、ニュースキャスターとコメンテーターが少子化問題についての話をしている。


 ギフト能力が現れてから、出生率が右肩下がりか……。教師になる前から何度も耳にした話だ。

 チャンネルを変えようかとも思ったが、他はこれ以上に下らない番組ばかりなので我慢することにした。それにしてもコメンテーターもニュースキャスターもずれたことばかり言ってやがる。


 缶ビールをゆっくりと飲むと、私はつぶやいた。

「そりゃ……人外が生まれる危険性があるからだろ」


 去年の出生率が、0.5を割り込んだという話を聞いても、私はそんなに驚かなかった。

 そもそも今の世の中は、ギフトに恵まれた者同士でしか結婚はできない。その当たりくじを引いた奴らだって、子供を増やせば増やすほど人外とぶつかる確率が高まっていく。

 もし自分の子供が人外になったなんて職場に知られれば、間違いなく出世はできないし、下手をすればクビになる。


 ちなみに私が結婚しない理由も、自分の子供が人外にでもなったら、職員室で他の教師から嫌がらせを受けそうだからだ。だいたい子供なんて、リスクばかり高い生き物など仕事以外で関わりたくない。


 そういえば、隣のクラスの担任も結婚はしていたが、子供は作らないと言っていたな。

 そんな考えを持っているのは我々だけではない。警察官や個人飲食店の経営者のような、不祥事が許されないような職に就いている連中も、子作りを控えているという話を聞いている。理由はもちろん自分の子供に人外が生まれることを恐れているからだ。



 私はビールを飲み干すと、空き缶をゴミ袋に放り込んだ。

 ん、コメンテーターの奴はどうやら、最近になって人外化する子供の率が増えていると言っているな。それは私も教育現場にいてはっきりと肌で感じていることだ。

 まだ教員免許を取りたてだった頃は、100人単位の学年に1人か2人という様子で、連中を隔離するのも楽だったが、今は各クラスに2人から3人……だいたい10人から15人に1人の割合で現れ始めている。


 リモコンに手を伸ばすと、テレビを消して歯でも磨くことにした。

 こんな国がどうなろうが知ったことではない。私が生きている間だけ持ちこたえれば、後はどうなろうが関係ないのだ。


 寝床に入って照明を消すと、夜の闇に包まれてほっとした。これでやっと余計なモノは見ずにゆっくりと眠ることができる。

 普通の人間はこの暗闇を恐れるものらしいが、私は小さな頃から暗いところにいると落ち着くのだ。特に暗くて暖かいところがいい。


 間もなく、私は熟睡していたが……

 この時に実は、海外でゾンビウイルスという恐ろしい病気によって都市閉鎖が行われたらしい。これによって府中翔馬のようなユニコーンの存在価値が跳ね上がるのだが……私が知る由はなかった。

【作者より挨拶】

 多数の【ブックマーク】の登録ありがとうございます。


 また、広告バーナー下の【☆☆☆☆☆】への評価や、いいね、感想等を頂けるととても励みになります。

 この調子で執筆活動を続けて参りますので、引き続き本作をよろしくお願いいたします。

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