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12.ダンジョンにトレジャーを設置

 僕の分身であるミニユニコーンは、ゴブリンを2匹ほど倒されはしたが、着実に敵冒険者を1人ずつ倒し、遂に最後の1人を気絶させたようだ。

【オリジナルへ連絡……敵冒険者パーティーを撃破】


 僕とハルカは笑いあうと、手と前ヒザを重ね合わせてハイタッチをした。

「おつかれさま!」

「すぐに追加分のゴブリンをそっちに送るね!」


 ハルカは、追加分のゴブリン型ガーディアンを制作した。

 弓装備1匹に、こん棒装備2匹は、ハルカの前で敬礼をすると、すぐに入口へと向かっていく。


 一方で僕は、入り口を守っているミニユニコーンとテレパシーを通じて会話していた。

「なるほど……今回の敵は無免許の高校生冒険者ばかりだったんだね」

【うん。雰囲気からどこかの高校の不良たちだった。訓練も受けてない様子だったよ】


 僕は思わずうなずいていた。

 学生冒険者と言っても2種類あり、片方は冒険者科できちんとプロの指導を受け、さらに冒険者の仮免許を取った見習い冒険者と、無免許のまま訓練も受けずに乗り込んでいく不良学生がいると聞く。

 前者と後者では、実力差もあるだけでなく、ダンジョン内で迷ったときや、毒蛇や野生の生き物と遭遇した時の対処方法も大きく変わるのだとか……


 ハルカも頷いていた。

「その話、私も聞いたことがあります。冒険者科の生徒は基本的に仮冒険者の資格を取るまでは、ダンジョンに踏み込まないように教え込まれるようです」

【確かにその方が合理的だね……だとすると、仮免許を持っている学生冒険者は、これと比較にならないくらい強い……ということかな?】

「……そうだろうね」


 少し彼と世間話をしていると、どうやらゴブリン一団が到着したようだ。

【今、ゴブリン3匹が到着したよ】

「わかった。僕はこれから、ダンジョンを拡張できないか調べてみるから、何かあったら連絡して」

「了解!」


 ミニユニコーンとの連絡を終えると、僕はハルカを見た。

「じゃあ、ダンジョンを見て回ろうか」

「ご一緒させていただきます」

 今の僕のダンジョンは、入り口からボスの間まで一本道という、とても単純な構造をしている。

 しかし、何度か人外から攻撃を受けたように、他の場所から通路を作ったりすることもできそうなのである。


 僕は一般道をじっと睨みながら進んでいくと、途中にマナの揺らぎのようなものがあることに気が付いた。

「ん……ここは?」

 試しに角を近づけてみると、草が退くように森の中に道が現れ、その先に意味がありそうな小さな空間が出現していく。

 ここって……ダンジョンで言えば、アレを置くのに最適なスペースな感じがした。


「ねえ……」

 そう言いながら視線を向けると、ハルカもクスッと笑いながら頷いた。

 彼女がその小部屋のような森の空間へと入り、その奥に手をかざすと大きな大きなツボミを持つ植物が姿を見せた。

 ダンジョンに金属製の宝箱……なんていうのはあからさまに不自然だが、このような植物風のトレジャーボックスなら雰囲気にも合っている。


「中に何を入れたの?」

「傷薬です。すでにペーストしてあるものなので、お店で買うと3000円くらいはするでしょう」

「ダンジョンに相応しいアイテムだね!」

 そう言った直後、雑木林全体から流れ出るオーラが少し強くなった。どうやら宝箱を1つ置いたことで、ダンジョンが更に力を得たようだ。


 そして、雑木林が力を得た関係で、僕もまた少しだけオーラが強くなったように思える。

「……何だか、今ならもう1頭……分身を作れそうな気がする」

「作ってみますか?」

 ハルカが言うと、僕は「もちろん!」と言いながら頷いた。


 先ほどと同じ要領で、ミニユニコーンをもう1頭作ってみると、分身にもわかったらしくテレパシーで連絡が来た。

【今、僕の同僚を作ったみたいだね】

「わかったのかい?」

【うん。オリジナルがトレジャー部屋を作ったこともね】


 どうやら分身同士もテレパシーで連絡を取り合えるらしく、ミニユニコーンは入り口の方角を見てひとりごとを呟いていた。

 その間にハルカは、ミニユニコーン2号機のためのゴブリン小隊を作り出していく。


 彼女が作業を終えると、僕も満足しながら言った。

「ミニユニコーン1。弓ゴブリン2。こん棒ゴブリン3……これだけいれば、備えは十分だね」

「はい。せっかく新しいトレジャー部屋を作ったのです。そう簡単には冒険者に渡したりしません」



 トレジャー部屋も作り、少しだけダンジョンの構造も複雑になったところで戻ってみると、エリアボスの場所には、置き手紙が石に固定された状態で置かれていた。

 僕はそっと手紙のにおいを嗅いでみると、中からは母の匂いと金属の臭いがした。間違いなく……差出人はヒーロースレイヤーと名乗る者だろう。


「……中を開きましょうか?」

 僕は角で紙に何か細工をされてないか調べた。とりあえず角から危険を知らせるような返事はない。

「ああ、お願い!」

 ハルカに手紙を広げてもらうと、中はこないだと同じように、母が書いているのだけど筆先が違うという奇妙な手紙となっていた。


 そして、奴はこう僕に問いかけてきた。

――なぜ君は、ダンジョンがこの世に存在するようになったと思う?



 僕の答えはもちろんわからないである。そして始末が悪いことに、この問いに関してヒーロースレイヤーは明確な答えを用意していなかった。


 奴はまず、僕たちが3日目まで生き延びていることを褒めていた。スレイヤーの話によれば、人外は3日の朝を迎えるまでに半分が命を奪われるのだそうだ。

 確かに序盤の冒険者や人外の執拗な攻撃は試練だった。僕は才能に恵まれていたから全て追い返すことができたけれど、普通は逃げたり、強い人外の傘下に入って実力を付けるのだろう。


 それだけでなくスレイヤーは、僕がハルカを仲間にしたことにも満足しているようだ。

 一流のダンジョンマスターというものは、様々な仲間を作り、そして複雑なダンジョンを作って冒険者の心を揺さぶり、戦わずに勝つものなのだという。


 どういう訳かスレイヤーは、僕の幸先良いスタートを心から喜んでおり、金貨3枚を贈るという。その金貨には、鳳凰が舞っている僕が初めて見るモノだった。しかも片方にはパウチに製造番号まで書かれている。


「これが噂の10万円金貨か」

「10万円金貨が1まいずつ。最後のは5万円金貨ですね」

 相手は母を誘拐した憎き敵だが、今の僕に手段を選ぶだけの力はない。ならば……使えるモノは何だって使っていかなければならない。


「ハルカ。このトレジャーは……僕たちボスの間の真後ろに置こう」

「それがいいと思います」

 彼女は1つの金貨に1つずつ、植物の宝箱を用意した。

 中へと金貨を入れていくと宝物が高価だったからか、包み込んでいく植物の色が緑色から金色へと変わっていく。同時に金色になった宝箱は、彼女の前にカギを吐き出した。


「これは……ショーマさんが持っていてください」

「いや、全部僕では防犯上よくないな。僕は1つ……君は2つカギを持とう!」


 こうして僕は、製造番号入りパウチ付きの10万円金貨のカギを持ち、彼女はもう片方のパウチだけの10万円金貨と、5万円金貨のカギを持った。

 すると、僕たちの纏っているオーラは、先ほどよりも強くたくましいものへと変化した。

【侵入者の種類】

タンケンキッズ

 近所に住む小学生から中学1・2年生くらいの子供たち。未武装のゴブリンでも撃退は可能だが、殺めてしまうと親や地域から怒りを買うため、ショーマはなるべくダンジョンから遠ざけたいと思っている。


バッドボーイズ

 中学生から高校生くらいの若者たち。タンケンキッズとの違いは、凶器を所持しているかどうか。

 人数によっては、武装しているゴブリン型ガーディアンでも倒されることがある。基本的に侮れない相手だが、こちらが面倒な人外だということをわからせると、以後は来なくなることも多い。


アマチュア冒険者

 プロ資格を持たない若者たちがパーティーを組んで、ダンジョンへと踏み込んだ状態。

 野生動物や人外に襲われたときの避難方法や、怪我の応急処置を知らないため、怪我が重症化したり命を落とすこともある。

 バッドボーイズと似ているが、高校生から20代の若者が中心のため財力はあり、武装がプロ並みに充実していることもある。


冒険者学校の生徒たち

 高校や大学にある冒険者科を出ている勇者の卵たち。

 基礎体力を付ける訓練や、応急処置や野生動物への対処などを専門家から教わっている。

 冒険者仮免許を取得しない限り、ダンジョンに踏み込むことを禁止されており、試験前の学校はピリピリとしているそうだ。


プロ冒険者

 本職のプロ冒険者。

 特に腕の立つ実力者は勇者と言われており、テレビに出たり、一流の人外を討伐したりしている。

 地域の雄になるだけでも血の滲む努力が必要で、ネット上で悪口を書かれる人物は、いずれも一角の者ばかりである。

 ちなみに、彼らは向こう見ずなアマチュアに、無資格のダンジョン探索は法律違反と再三に渡って警告しているが、一向にアマチュアたちは無謀な行動を止めない。

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