怯える凡九等(語り部:ボンクラ教師)
私は3年A組を担当している教師の凡九等だ。
実は今日、寝不足に悩まされている。理由は人外化した府中と五区悪のことについての対応に追われたからだ。
くそ、あの頭の悪そうな府中翔馬はともかく、どうして血統サラブレッドの五区悪まで人外となってしまったのだ。アイツは成績優秀。運動神経抜群。家柄もよしと、一流の冒険者になる素養を持った選ばれた人間だったのだ。
くそ、くそっ、くそっっ!
まあ、こうなってしまったものは仕方ない。きちんとしたギフトに目覚めなかったということは、五区悪もしょせんはその程度の生徒だったということだ。
あの程度の生徒なら、何年か教師をしていると1度くらいは受け持つことがある。今回がダメでも何度かチャンスは来る。
そう、私は全ての人外を倒すような英雄の恩師になるのだ。勇者の先生……それこそが教師となった私の望む、なりたい私の姿である!
そのことを思い出すと私はいつも通りの厳しい先生の表情をできた。
教室に入ってホームルームを始めよう。
「さて、クラスメイトの数も28人になってしまったが……人外になった奴など放っておいて出席を取るぞ」
そう言いながら出席簿を取ると、モブ女子生徒の1人が手を上げた。
「先生……その前に、普通子が来てません」
普通子とは、うちのクラスにいるモブ女子生徒の1人だ。
こういうヤツは3流の高校に行って、3流企業に就職して3流の生き方しかできないのだが、特に問題も起こさないから教師側としてはありがたい存在でもある。
「具合でも悪くなって寝込んでいるのだろう。後で電話でもかけてみる」
そう言って欠席と書いたが、モブ所持生徒Bが言った。
「確か……普通子って……昨日誕生日だったよね?」
「う、うん……」
私はその私語を無視すると、出席を取り終えてクラスを出た。
まあどうせ風邪だろう。と思いながら普通子の自宅に連絡をすると、母親が出た。
「……もしもし」
会話をしていると、何か普通子の母親の気が動転していた。
盲腸にでもなったのかと思いながら話を聞いていると、犬歯がとても長くなっただの、尻尾がどうのとか訳の分からない話をしている。
「そういうことなら、医者に話をしてみてはいかがでしょう?」
私は適当に話を切り上げて電話を切ったが、心の中では動揺していた。
府中と五区悪に続いて、普通子までもが……もし、人外に代わっていたとしたら、3人連続でうちのクラスの生徒がおかしくなったことになる。
冷や汗が体中から流れ出ると、私の足は貧乏ゆすりをしていた。
1人2人の生徒が人外になることは、どこの学級でもよくあることだ。しかし、立て続けに生徒が人外になったとしたら、担任である私はどんなことを教えているんだと、校長や教頭……それにクソ親、モンスターペアレントどもにどやされる。
増しては、人外化した生徒の中には五区悪が含まれているんだ。
世間的には人外化には最も遠いと思われているのが五区悪一家だ。こういう家の息子が人外化して、更に他の生徒まで人外化するとなれば……私の、私の築き上げてきた、教師としての信頼が根底から覆されてしまう!
おのれ。こんなことで教師を辞めさせられてたまるか!
こうなったら、責任を全て人外化した生徒に押し付けて、私には何の非もないことを証明してやる。なんとしても自分の身だけを守ってみせる。
【ショーマの学校の教員たちの思想】
校長 反人外 ーーーーー☆ーー 自由主義
教頭 反人外 ーーー☆ーーーー 自由主義
1学年主任 反人外 ーー☆ーーーーー 自由主義
1B教師 反人外 ーーーーー☆ーー 自由主義
1C教師 反人外 ー☆ーーーーーー 自由主義
2学年主任 反人外 ーーーーーー☆ー 自由主義
2A教師 反人外 ーー☆ーーーーー 自由主義
2B教師 反人外 ーーーー☆ーーー 自由主義
3学年主任 反人外 ーー☆ーーーーー 自由主義
凡九等 反人外 ☆ーーーーーーー 自由主義
3B田中 反人外 ーーーーーー☆ー 自由主義
養護教諭 反人外 ーーーーーーー☆ 自由主義
ちなみに……去年の彼ら
2年翔馬 反人外 ーーーーー☆ーー 自由主義
2年ハルカ 反人外 ーーーーーーー☆ 自由主義
2年五区悪 反人外 ー☆ーーーーーー 自由主義