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悪の組織は大変だね

頭空っぽにして書くの楽しぃです

 オスクロ団アジト。

ごくごく普通に見えるこの一軒家は、実は宇宙征服を企むオスクロ団のアジトなのだ!!

そして、今日もオスクロ団は宇宙征服を達成目的のため、魔神を復活させるために必要なイヤーナパワーを集めるために恐ろしい作戦会議をしている最中である!


 「コツコツ貯めた貯金が何故引き落とされているんだ!!」

銀行の通帳を持って叫んでいるちょび髭のおじさんが恐ろしいオスクロ団のボスの通称「ボス」である。

 「オレ様とオイドン、それにリヒト君が汗水たらして働いて稼いだ金がない!」

「あっ、ごっめーん。それ、あたしがバッグ買うのに使っちゃった」

「なぁーーーーにぃ!?」

「だって、可愛かったからさ。見てみて、ブランドものの限定品だよ。買うしかないっショ」

そう言って悪びれもせずに、高級バッグを見せてきたのは、猫耳に猫のしっぽが生えた宇宙人でオスクロ団の幹部リンリンだ。

 「今すぐ元の場所に帰してきなさい!」

「はぁ!?何言ってんの?あり得ないし!絶対無理。猫じゃあるまいし」

リンリンは、不服そうにボスを睨みつけてぎゅっとバッグを抱きしめた。

 「この間は財布!その前は旅行!いい加減その浪費癖を何とかしてくれ!みろ‥‥この悲しくなった口座の残高を‥‥もう、オレ様泣きたい。というか、もう泣いてるぞ‥‥」

ボスは、顔を覆ってめそめそと泣き崩れる。

しかし、リンリンはそんなボスにかまうことなくネイルの手入れをし始めた。

 「嘘じゃん‥‥この状況で無視‥‥ちょっとどころか、かなり心が痛むんですけど‥‥娘が反抗期の時の父親ってこんな気分?」

「いーじゃない?だってぇ、あたしはちゃーんとイヤーナパワー集めてんのよ!しかも、ボスよりもオイドンよりも。さらに、働いてるのに文句言われたくないしぃ」

リンリンがふぅーっと息で爪を乾かす。

 「リンリンは、自分の稼いだ分は自分で使っちゃうでしょ!お前があまりにも浪費するもんだから、その分オレ様とオイドンが働かなきゃいけないの!それで時間が宇宙征服に時間裂けなくなっちゃったの!まだ、この家のローンもあるし、常に四人分の生活費はかかるし、食費だって馬鹿にならないし、怪人だって作るのに材料費にお金がかかるし‥‥ただでさえ大変なのにリンリンがさらに難易度上げてんの!!」

 「だからぁ、ボスはお金を稼いであたしはイヤーナパワーを集める。それでいいじゃん?」

「もぅ、やだぁこの子‥‥なんの解決にもなってない‥‥」

 ボスとリンリンが言い争っていると台所から大柄の男性がいい匂いが漂う料理をもってきた。

彼は、オスクロ団の幹部オイドン、その人である!

 「きゃー!オイドン、今日はなになに?」

「今日は、鶏肉が安かったから、鶏肉のソテーにミネストローネスープ。それに豆腐とわかめののサラダだ」

「おいしそー。写真、写真っと」

 リンリンはいい感じに写真を撮るためあらゆる角度で料理を撮りだした。

 「いつもありがとうオイドン。お前とリヒト君だけだよ、真面目なのは‥‥」

「おれは、ボスの役に立つならどんなことでもやるだけ」

「いーい部下をもった‥‥」

ボスは、じんと胸と目頭が熱くなって、目頭をぎゅっとつまんだ。

 「ちょっと!ボス、そこに座られると写真の邪魔なんだけど!」

ボスは、とぼとぼと歩いて部屋の隅にしょんぼりとしながら小山座りした。

 「‥‥ほんと、いい部下だよ‥‥」

先ほどとは違う理由で目の奥がじんと痛くなった。


 「ただいまー」

家に帰ってきたのは、オスクロ団の幹部リヒト・デルビルトだ。

怪人を引き連れていた時とは違い、今は地球人の姿である。

 「おかえり、リヒト君!今日の撮影はどうだったんだ」

「え?あぁ、無事に終わりましたよ‥‥はい」

ボスが、しゃきっとした表情でリヒトに話しかけたが、リヒトは心ここにあらずな様子で、ぽーっとしている。

 「リヒト、ご飯は食べるか?」

「ありがとうございますオイドンさん。でも、少し今は食欲がないので、明日の朝ご飯にさせてもらいますね」

リヒトは、二階の自分の部屋にあがっていった。

三人は、そんな上の空なリヒトを見送ると即座に集まった。

 「あやしい!あやしすぎるぞ!いつもなら、人の三倍は食べるリヒト君がこのごろ食事を抜いている!」

「ボス‥‥おれの食事が美味しくなくなったでしょうか?」

「それはない!オイドンの料理はどこにお嫁に出しても恥ずかしくないレベルだ!」

「どんな例えだし‥‥ってか、普通に考えて、悩み事じゃね?」

「悩み事?もしかして、オレ様がリヒト君の普段生活している時の写真をこっそりスクラップしているのがバレたとか!」

「きも‥‥」

「いっ、いいだろう!出来のいい息子を見ているような気分に浸りたかったんだい!」

「それだったら、ボスのことを避けると思います」

「だったらなんだというのだ?」

「恋、じゃね?」

「恋ぃぃ!?」

 ボスが大げさに雷うたれたのかというほどのけぞって、驚いた。

 「まさか、あのリヒト君が恋に悩んでいるというのか?モデルで顔もいいし頑張り屋だし、んーごいいい子のリヒト君が!?告白したら、一発OKだろ?」

「知らんし、本人に聞くのが一番じゃね?」

 ちょうど風呂にはいろうと降りてきたリヒトをリンリンが呼び止めた。

 「リヒト、あんた悩んでるみたいだけど、なんかあったん?もしかして、恋とか?」

ボスは、ド直球できくことができるリンリンに敬意を表した。

リヒトの反応はというと、わかりやすいくらい耳まで真っ赤にして恥ずかしそうに頭をかいた。

 「そ、そうだけど‥‥」

「ふーん‥‥で、どんな子?」

実に普通に質問を重ねられるリンリンが頼もしくてしょうがない。

 「可愛い‥‥」

「見かけじゃなくて、どんなことが好きとか、どこに住んでるとか、彼氏いんのかとか、ないの?」

女性の質問するどんな子?にはそんな意味まで上乗せされるのかと、ボスは驚愕した。

 「それが、わからないんだ。会話したのは少しだけで、名前くらいしかきけなかったから。あと、変わった犬を連れてる」

リンリンはクソでかため息をついた。

 「そんなもん、友達でもなければ、知り合いでもない赤の他人じゃん‥‥連絡交換しなかったの?」

「してない」

「んじゃ、いつ会えるかわかんないし、諦めたら?」

リンリンは、容赦なくズバァっと切り捨てた。

 「無理だ!諦められそうにない。あの子と出会った時、運命を感じたんだ!」

「うわっ、あんたってメンヘラ気質あったんだね。ひくわー」

リンリンの物言いには遠慮という気持ちはひとかけらもない。

 「でも、結局手がかりはないんでしょ?」

「名前が司って言うことぐらいしか」

「司‥‥あたしの会社の人とおんなじ名前じゃん」

「その人って、ふんわりした髪の毛が肩から少し上くらいの可愛い女の人か?」

「残念、干物みたいなくたびれたおっさんよ」

リンリンは、スマホを取り出すと操作しだした。

 「しょうがないから、目撃情報探してあげる。でも、そんな情報しかないのなら、無理だと思った方がいいよ」

リンリンが協力してくれるのが嬉しかったのか、リヒトはぱぁっと表情が明るくなって、屈託のない笑顔をみせた。

 「ありがとうリンリン!」

「ま、あんたは弟みたいなもんだからね‥‥」

 そんな二人のやり取りをボスとオイドンは温かい眼差しで見て、心の中で応援した。


 一方、野村 司は魔法少女になって敵を消滅させた報酬を確認するべく、通帳記入をし終えて、家に戻ったところだった。

 (びっくりするくらいお金が振り込まれてた。俺、なんかの詐欺に巻き込まれたりしてない?ほんとにあの報酬?)

もう一度確認しようと通帳を取り出し、見てみる。

 あの労働に見合うかどうかわからないほどの金額と振込人の名義が宇宙パトロール本部とくっきりと書かれていた。

 (どうして宇宙人がこんな金額を支払えたんだろう‥‥深く考えるのはやめとこう)

通帳をしまって、現実逃避のためスマホに手をかけた。

 ベッドに寝転がって、てきとうにSNSを見て回る。

 (そうだ。鈴木さんのSNSチェックしよう)

 鈴木さんは写真投稿がメインのSNSでこまめに投稿している。

内容は、素敵なお料理やお菓子、可愛いネイルや旅行先の写真など実に女の子って感じがする。

フォロワーも多くて、司はその中の一人にすぎないのだが、いいねを押すと次の日に鈴木さんが必ずいいねありがとうございますと言ってお礼を言ってくれる。何百ものいいねの中から見つけてくれるなんて、なんていい子なんだ。

 直接鈴木さんに会えてしまう司の立場は他のフォロワーとは違うんだぜ!と少し優越感がある。

 「あれ?なんだこの投稿?」

 鈴木さんにしては珍しく写真の代わりに文字の投稿があった。

 「人、探し中‥‥実は、わたしの弟がある人になんと一目ぼれしちゃったんです!でも、その人とはお話しが全然できずに別れちゃったんです(>_<)だから、できるお姉ちゃんとしては恋のお手伝いをしてあげたい(なーんてね)」

「その子のお名前はツカサちゃん。髪の長さはミディアムくらいで、変わった犬を飼ってるそうです。あとは、とっても可愛いんだって!○○公園で見たらしいのですが、どなたかご存知でしょうか?情報求む!」

 スマホを持っている手が震えて、スマホを落として顔に直撃した。

 「いてっ!」

起き上がって、頭を抱え込む。

 (鈴木さんの探してる女の子って‥‥‥俺かぁ‥‥‥)

(鈴木さん、弟さんがいたのか?その子が俺に一目ぼれぇ!?まさか、あの幹部の奴以外にもあの可愛さにやられた被害者がいたとは‥‥!)

「ど、どうしよう?ちゃんとお断りするべきだよな?その方が哀れな弟くんのためだ!いや、しかしそれはそれで弟を振った奴だって思われるんじゃ‥‥いや、あの状態と今の俺は違うんだからバレるわけないじゃないか!」

「つまり、作戦はこうだ。鈴木さんにあの女の子は‥‥俺の妹だということにして‥‥丁重にお断りを入れる!そして、あわよくばもっと鈴木さんとお話しするチャンスとなる!それだ!」

 「なにが、それだ!なのですか?お風呂沸きましたよ」

寝室にひょこっとテテスが現われた。

 テテスは、あれから魔法少女になることを断っても居座り続けており、今は完全な居候と化して家事全般をやってくれている。

しかし、テテスの家事能力は完璧なので、正直大助かりだ。

 こんなイケオジかつ青い犬と同居することになるとは夢にも思わなかった。

 「なっ、なんでもないです。そうだ、あのコンパクトって俺が持ってていいんですか?」

「はい、あれは使える人がもっているべきですから、それにいつ何時オスクロ団が現われるかわかりませんからね」

「わかりました!じゃ、お風呂入ってきます!」

司はそそくさと着替えとあるものを持って風呂場にむかった。


 「ふふふ、ふふふふふ‥‥女の子になれるからには、やらないわけにはいかないだろう」

 司は着替えに紛れ込ませたコンパクトを取り出した。

 「えーと‥‥バッテリーオン」

司の呼びかけに答えてコンパクトの鏡から光線が放たれ、司は女の子になった。

 「へ‥‥へへ‥‥い、いいよな、自分のからだだし‥‥うん、いい!誰にも迷惑かけない!」

司は、手をのばし、男性の姿の時にはなかった豊かな胸のふくらみを服越しに掴んだ。

 (お、おわーーーーー、すげ、やわけーーーー!!いつかの日にクラスの女子が巨乳の子の胸を触って、マシュマロみたーいって言ってたけど、まじだぁ‥‥‥なんか、感動してきた)

 しばらく感動しながら胸をひとしきり揉んだ後、次なる行動にでるべきか悩んだ。

生唾を飲み込む。

 (風呂‥‥この姿で入っていいのか?)

「‥‥‥入る?」

 「司さん!」

「おわ!?テテスさんなんですか?」

驚いた拍子にテテスに答えてしまい、これじゃ女の子の状態で何をしていたかなんて一瞬でバレてしまうと後で気付いて後悔した。

 「ちっ違うんです‥‥これは、えと、その‥‥」

「‥‥‥ご興味がわいてくるのは必然かと思いますが、沸かしたお風呂が冷めてしまう前に入っておしまいなさい」

「は、はぃ‥‥」

「責めているのではないですよ。よほどその姿が気に入られたのなら一生そのままでも‥‥」

「戻ります!戻りますからっ!バッテリーオフ!」

 司は、テテスの責めに耐えられず、男性の姿に戻り、大人しく風呂に入った。


 司の作戦とも言えない作戦決行の日。

 「あっ、あの、鈴木さん‥‥探してる女の子について少しお話ししたいことが‥‥」

鈴木さんは、まさか司がこんなことを言ってくるとは考えていなかったようで、目を丸くして驚いていた。

 「野村さん最近お昼はお弁当ですよね?わたしもお弁当なので、一緒に食べながらお話ししましょう」

「もっ、もちろんです!よろしくお願いします!」

 天使のような笑顔で言ってくれた鈴木さんに鼻息荒らげながら司は答えてしまったので、後できもくなかったかなと気が気でならなかった。


 「わぁ!野村さんのお弁当可愛いですね?彼女さんが作ってくれてるんですか?」

「違います!断じて違います!!そう!妹が作ってくれているんです!」

鈴木さんが絶対してほしくない勘違いをしそうだったので、全力で首を横に振って否定した。

さらっと彼女発言をした鈴木さんは、司に彼女がいても構わないと思っているのかもしれないと思うと、かなり悲しくなった。

 「あ、妹さんと一緒に住んでいるんですね。初めて知りました」

「おぉ、俺も鈴木さんに弟がいるなんて初めて知りました」

すると、鈴木さんは少し悲しそうに俯いた。

 「うち、少し複雑で‥‥あまり周りの人に自分の家族のこと話せなくて」

悲しそうに俯く鈴木さんに司はあわあわしだした。

 「無理に聞き出そうなんて思いませんから!話せる範囲でお願いします!」

あまりに慌てすぎて、空中で手があちらこちらに浮いてしまう。

それを見て、鈴木さんはくすりと笑った。笑われてしまったけど、鈴木さんが笑顔になるならいっか。

 「野村さんなら大丈夫ですよ。それに、今日はわたしの弟と野村さんの妹さんのお話しなんですから、話さないわけにはいかないですよ」

「そうですよね‥‥」

「妹さんってどんな方なんですか?歳は‥‥近いですか?」

 妹(司)について色々聞かれるだろうとわかっていたので、あらかじめ設定を作っておいて、それを暗記してきた。

 「22歳の大学生で、家の近くの大学の国際科に通っています!好きなことは映画鑑賞。好きなものはチョコレートケーキで、好きな動物は猫です!」

緊張している司は、きかれてもいないのに、暗記したとおりにそのまま言ってしまった。

べらべらまるで面接のように話しだした司に若干引いているのか初めて苦笑いされた。

今度の笑われ方は胸にちくりと刺さった。

 「い、妹さんと仲がいいんですね。22なら私の弟とそんなにかわらないです。大学には通ってないですが、実はここだけの話し、モデルをやってるんですよ」

「えぇ!?そ、そうなんですか」

 (モデルなんて、顔面偏差値高そう‥‥そんな人を一目ぼれさせてしまったとは、罪深い‥‥)

 「弟は‥‥なんというか真面目で、どうにも色恋はまだまだなんですよ。弟にはお世話になってるし、少しくらいお手伝いしたいなって‥‥ちょっとブラコンですかね?」

鈴木さんは髪の毛を耳にかけて困ったように笑った。

 (鈴木さんそのしぐさ最高!‥‥でも、ここから断らないといけないのか‥‥心苦しい)

「あのっ!野村さん、妹さんに弟に会ってもらえるように約束を取り付けてもらえないでしょうか!?一度だけでいいんです!」

そういうと、鈴木さんは司の両手をぎゅっと握って、うるうるした大きい瞳で見つめた。

 「野村さんにしかお願いできないんです‥‥」

こんな風にお願いされて断れる男がいるだろうか?

 「わかりました!話をつけてきます!」

「本当ですか?ありがとうございます」

鈴木さんは花が咲いたような笑顔でお礼を言った。もう、それだけで心が満たされるのだから、自分は単純だと思いつつも、今は浸ることにした。

 (まぁ、結局断るなら直接断った方がいい。一回会うだけだから、何か起こるわけもないだろう)

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