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嫉妬の王妃の改訂記

王妃になりました。


何言ってるかわからないって? 私もだよ!


最初から説明しよう。

私は日本の普通の大学生、鈴木すずき 姫奈ひめなだ。読書が趣味の、どこにでもいる女子大生……だったんだ。

ある日、私は寝坊した。近くにある大学を選んだので、まだ間に合うだろうと急いで十字路を曲がった瞬間……ドン! だ。正確に言うとドンドン! かな。


男子大学生なんていうかわいいものじゃない。トラックだよ。truck!

ドン! の次の瞬間には私は空を飛んでいた。比喩じゃない。景色が自動車に乗っているとき並みに前に流れていった。

次のドン! で私は地面に打ち付けられた。そこから先は覚えていない。


その後、目が覚めたら……王妃になっていました。

何がなんだかわからないよ、本当に!


でも、おつきの人はいるわ日本じゃない宮殿っぽいところに住んでいるわ……

認めざるを得なかった。私は転生したのだと。

悪役令嬢なんていう子供じゃない。王妃だ。王の妃だ。立派に成人している大人だ。

とてつもなく面倒臭い付き合いをし、ニッコリと笑いつつも裏の顔は黒く……


やってられるか! って感じだよ。本当に。


さらに、重大なことを発表しよう。

私は普通の王妃に転生したのではない。それこそ悪役令嬢のような、死亡フラグが立っている王妃に転生してしまった。

……後はわかるな? そう私は。


──「白雪姫」のお妃に転生してしまったのだ。



……どうしよう。


まず。継母の情報を整理しよう。

曖昧な記憶だが、継母は世界一美しいことが自慢。なんでも答えてくれる魔法の鏡を持っていて、人に負けることが嫌い。

そして、自分よりも美しくなった白雪姫を三回も殺し、最後は死ぬ。……っていう人だったはず。


そしてこの場合ライバル(?)になる白雪姫。彼女はまだ幼い。一桁後半の歳で、継母よりも美しい美貌を持っていたがために継母に狙われ、殺されてしまう。しかし、小人たちや隣の国の王子のキスによって生き返り、継母に復讐する……であってるはず。


このままだと私は死んでしまう。さあシナリオを変え、私を破滅から救おう!

……って、悪役令嬢転生みたいなことになってるけど。


悪役令嬢転生で未来を変えられるのはまだ子供で自由な時間が残っているからだ。その時間で対策を考え、実行に移す。そして未来を変える。

しかしだな、私の場合は立派な大人だ。自由な時間も少ない。さらに世界一の美しさを死守するためにお手入れに何時間もかけるような継母だ。


……あれ、無理では?

現在の白雪姫は七歳。そろそろ地位が危なくなってくる。そう時間もない。

……とりあえず、確認の儀式だ。

お妃の鏡は嘘を言わない。それはどんなIFでもお約束だ。

確か問文は……


「鏡よ鏡。世界で一番美しいのは誰?」

『それは、白雪姫です』


私が鏡に問いかけると、鏡が答える。鏡に映し出されたのは、真っ白な肌に漆黒の髪、紅い頬や唇を持つ少女だった。

すでに手遅れ。私はこれから破滅の未来を選ばないように立ち回らないといけない。



まず私は、白雪姫に好意的になろうとした。

廊下ですれ違った時に、挨拶をしようとしてみる。


「おはようございます、義母様かあさま

「ああ……」


ああ、白雪姫。……憎い。憎い憎い憎い憎い。

私を差し置いて世界一美しいなんて。

努力も何もしていない単なる小娘が。

世界一美しいなんて──あってはならない!


……っは。

いや、無理。

あんなのを抑えられる気がしない。

第一案、ボツ。あんまり時間がない、どうしようか……



次に、白雪姫にかかわらないようにしてみた。

挨拶を無視。心が痛い。

お茶会のお誘いを肌のお手入れがあるからと断る、心が痛い。

貴族のお茶会の話のタネに白雪姫が出てきたら話題を変える。

……問題の先送りにしかならない。第二案、ボツ。


白雪姫は、継母の言いつけによって猟師に狙われたところから逆転劇が始まる。つまり、猟師を話に出さなければ勝ちだ。

けど、そう話がうまくいくはずもなく。

おつきの人が、私に報告をしに来た。


「お妃様。猟師が狩った物の納品に参りました」


そうか、これであやつを──って違う! 私は死にたくない!

猟師を話に出してやるものか。さっさと帰らせるんだ。


「そうか、傷物や劣化している品などがないか確認してから持ってきておくれ」


私はそう言って、私を猟師から遠ざけることに成功した。

おつきの人はちゃんと確認してから持ってきてくれた。


……それでも、世界は白雪姫を殺したいようで。


「お妃様。猟師様が──」


猟師は何回もやって来る。そのたびに理由を付けて追い返しているものの、レパートリーが少なくなってきた。完全に無くなる前に、何か手を打たないといけない。

猟師が私の目の届くところにいると、私は暴走(?)して白雪姫の暗殺を頼んでしまう。だから、猟師を私の視界に入れてはいけない。


それになにも対策をしていないわけじゃない。いや、なにもしない(できない)日もあるんだけど。

私は少しづつ質問を変え、鏡に質問しているのだ。


「鏡よ鏡。あの猟師はなぜ私に近づく?」

『それは、お妃様が自分を必要だと考えていると思っているからです』


いわゆる“世界の矯正”というやつだそうで、世界が運命を強制するのだとか。

お妃の妬みの心を何とかしないとね……



食事の時間。

お妃の記憶を頼りに食べる。私にテーブルマナーを聞くな。カップラーメンが主食だった女だぞ! ……威張れる事じゃないね。

デザートはアップルパイだった。職人が作ったもので、美味しかった。


自室に戻る。そして考える。制限時間は湯あみの時まで。

猟師がやって来るのは私、というか継母が猟師に白雪姫暗殺を依頼したいと思っているから。

しかし、白雪姫殺しを猟師に頼むと、巡り巡って仕返しされる。この間はほとんど干渉することが出来ないから、必然的に猟師に白雪姫の殺しを依頼すると私が死ぬ。


あーあー、何で転生なんてしたんだろ……

家に帰ってカップラーメン食べたい……

ここの料理はなんというか……中世だなあって感じの料理だし……

日本の技術って素晴らしかったんだなぁ、と常々感じるよ。

ここじゃ風呂だって贅沢なものだし、カップラーメンなんてもってのほか。

いっそ作る? 内政チートやる?

カップラーメンは……逆転の発想がなんたらだったかな……


……逆転?

そうか、それだ。


私は大急ぎで鏡に問う。早くしないと人が来る。


「鏡よ鏡! この世で一番醜いものはなに?」


継母は美しいことが自慢。毎日数時間のお手入れを欠かさないほどにだ。

だから、醜いものも嫌い。でも、自分より美しいものも嫌い……


お願いだから、応えて鏡! 私を破滅から救って!

私の考えが正しければ、この問いでお妃(わたし)の死亡フラグを折れる!


『それは、お妃様の嫉妬の感情でございます』


来たあああぁぁぁぁぁ!!!


お妃の心が、変わる。醜いものは自分にふさわしくない。自分は世界で一番美しくありたい。

白雪姫アレより外見と心が美しければ、私は一番になれる。

さあ、もう一度答えて鏡。私の心はもう醜くない。アレを殺そうとする心もない。


「鏡よ鏡。この世で一番美しい物は何?」

『それは、お妃様の努力するお心です』



──これで、私は救われた。


猟師も来なくなり、お妃(わたし)も白雪姫とすれ違っても普通に挨拶が出来る。

白雪姫は、大きくなって、隣の国の王子と結婚した。

私は結婚式の披露宴に参加して、本で覚えたマジックを披露した。このために何回も練習した。

私も白雪姫も、幸せに暮らしましたとさ。


めでたしめでたし。

如何でしたでしょうか。

この手のものを書いたのは初めてなので、感想など頂けると嬉しいです。

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